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第三部
第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜⑫
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6月3日(金)
~白草四葉の見解~
生徒会室での連絡会を終えた週末――――――。
今日も、わたしと雪乃は、先週からの日課になっているダンス部を訪問している。
連絡会のときに、雪乃にプレゼンしてもらったように、同じクラスの摩耶と奈々子に『動画コンクール』のことを相談したところ、わたしの予想したとおり、スムーズに話しは進んでいった。
「生徒会と広報部の活動で制作する動画をバズらせるのに、ダンス動画を撮影しようかなって考えてるんだけど……」
1週間ほど前の昼休みにランチを囲みながら、クラスメートのふたりに、そんな言葉を漏らすと、摩耶と奈々子は、わたしの思惑どおり、
「なに、それ、ヨツバちゃん! 超たのしそうなんだけど!」
と、企画に食いついてくれた。
その日のうちに、わたしの提案は、ダンス部の部長である伊原立花さんの耳に入り、放課後には部室を訪問することになった。
性別や学年を問わず、他の生徒のウワサ話しが大好きな摩耶が、以前から、
「伊原センパイって、芸能事務所にプロモの動画とか送ってるらしいよ」
と言っていたのを聞いていたわたしは、初対面の伊原部長に、
「前から、ダンス部の活動には興味があって……センターで踊ってる人たちは、芸能界でも活躍できると思ってたんですよ!」
と、切り出した。
一般のヒトが言えば、見え見えのお世辞になって、ありがたがられないだろうけど、そこは、わたしのこれまでの芸能界での活動歴と母のネームバリュー(と言っても、それが同世代に通用するかは謎だけど)が、モノを言ったのだろう、上級生は、たいそう感激したようで、
「白草さん……ううん、ヨツバちゃんにそんな風に言ってもらえるなんて……」
と、初めて対面するわたしの手を握って、瞳をうるませていた。
ダンス部の中でも発言権があるらしい伊原先輩とクラスメートのふたりがノリ気になってくれたおかげで、大きな苦労もなく、彼女たちの協力を取り付けることができた。
次は、肝心のダンスの提案だけど――――――。
こっちの方も、わたしが以前から複数人で踊ってみたいと思っていた、少し古い楽曲をライブ動画で観てもらうと、
「ダンスも歌も、良い感じだね! 楽しそう」
と、良い反応が返ってきた。
「メンバーはどうする? あんまり大人数にしちゃうと、振り付けに時間が掛かっちゃうし、締切までに間に合うかな……?」
伊原先輩が、下級生の摩耶と奈々子に意見を求めると、ふたりも部長と同じ見解だったようだ。
「そうですね~。ダンスは、このままでも十分に迫力がありますし……」
「ここは、オーディションで選抜メンバーを決めちゃいます?」
三人の意見が一致したことで、わたしたちの企画動画に出演するダンサーを決めるための選抜オーディションが開催されることになった。
使用する楽曲の『Cross Over』は、5人のユニットで踊る曲なので、今回のダンス動画に出演したい部員には、それぞれ希望するパートのダンスを撮影してもらって、動画を確認しながら部内オーディションを実施する。
出演希望者は、前日までに、各自の練習とダンス動画の録画を終えていて、今日は、いよいよ部内選考が行われる日だ。
わたし自身はもちろんのこと、
「わたすなんかが、オーディションに参加して良いべか?」
と渋る雪乃にもダンスをしてもらい、そのようすも撮影している。
まだ引っ込み思案なところがある彼女を説き伏せて踊ってもらったところ、雪乃は、わたしの予想以上にキレのあるダンスを披露して、ダンス部の部員を驚かせていた。
「宮野さんだっけ? スゴいじゃん! まだ、どこのクラブにも入ってないなら、今からでもダンス部に入んない?」
あまり面識のない相手にも、積極的にコミュニケーションを取るタイプの摩耶が、声をかけると、
「スミマセン……わたすは、広報部に仮入部をさせてもらってまスので……ほんに、申ス訳ないことでス」
と、雪乃は、照れながら、恐縮したように勧誘を断っていた。
そのようすが、なんとも愛らしく、わたしを慕ってくれるこの下級生を愛おしく感じてしまう。
そして、部員間投票でのオーディションの結果、選抜メンバーは――――――。
・野中麻耶
・石川奈々子
・伊原立花
・白草四葉
・宮野雪乃
以上の5人に決まった。
雪乃が、予想を上回るくらいダンスのセンスに恵まれていた、という嬉しい誤算もあり、ほぼ想定したとおりのメンバーで動画制作に入ることができることに、わたしは、満足を覚えていた。
「み、みんなの足を引っ張らねぇようにしまスんで、どうか、よろしくお願いしまス」
今回のダンスメンバーに加わることが決まったことで、かしこまりながら、ペコペコと頭を下げる雪乃に、ダンス部からは、暖かい拍手がわき起こった。
かわいい後輩が、このクラブのメンバーに受け入れられつつあることを感じて、わたしは、まるで自分のことのように表情がほころんでいることに気づく。
そして――――――。
(計画したとおりに動画が完成すれば、きっと、クロは、いままで以上にわたしのことを意識するよね……)
そんなことを想像しながら、わたしは、さらに頬がゆるむのを抑えられなかった。
~白草四葉の見解~
生徒会室での連絡会を終えた週末――――――。
今日も、わたしと雪乃は、先週からの日課になっているダンス部を訪問している。
連絡会のときに、雪乃にプレゼンしてもらったように、同じクラスの摩耶と奈々子に『動画コンクール』のことを相談したところ、わたしの予想したとおり、スムーズに話しは進んでいった。
「生徒会と広報部の活動で制作する動画をバズらせるのに、ダンス動画を撮影しようかなって考えてるんだけど……」
1週間ほど前の昼休みにランチを囲みながら、クラスメートのふたりに、そんな言葉を漏らすと、摩耶と奈々子は、わたしの思惑どおり、
「なに、それ、ヨツバちゃん! 超たのしそうなんだけど!」
と、企画に食いついてくれた。
その日のうちに、わたしの提案は、ダンス部の部長である伊原立花さんの耳に入り、放課後には部室を訪問することになった。
性別や学年を問わず、他の生徒のウワサ話しが大好きな摩耶が、以前から、
「伊原センパイって、芸能事務所にプロモの動画とか送ってるらしいよ」
と言っていたのを聞いていたわたしは、初対面の伊原部長に、
「前から、ダンス部の活動には興味があって……センターで踊ってる人たちは、芸能界でも活躍できると思ってたんですよ!」
と、切り出した。
一般のヒトが言えば、見え見えのお世辞になって、ありがたがられないだろうけど、そこは、わたしのこれまでの芸能界での活動歴と母のネームバリュー(と言っても、それが同世代に通用するかは謎だけど)が、モノを言ったのだろう、上級生は、たいそう感激したようで、
「白草さん……ううん、ヨツバちゃんにそんな風に言ってもらえるなんて……」
と、初めて対面するわたしの手を握って、瞳をうるませていた。
ダンス部の中でも発言権があるらしい伊原先輩とクラスメートのふたりがノリ気になってくれたおかげで、大きな苦労もなく、彼女たちの協力を取り付けることができた。
次は、肝心のダンスの提案だけど――――――。
こっちの方も、わたしが以前から複数人で踊ってみたいと思っていた、少し古い楽曲をライブ動画で観てもらうと、
「ダンスも歌も、良い感じだね! 楽しそう」
と、良い反応が返ってきた。
「メンバーはどうする? あんまり大人数にしちゃうと、振り付けに時間が掛かっちゃうし、締切までに間に合うかな……?」
伊原先輩が、下級生の摩耶と奈々子に意見を求めると、ふたりも部長と同じ見解だったようだ。
「そうですね~。ダンスは、このままでも十分に迫力がありますし……」
「ここは、オーディションで選抜メンバーを決めちゃいます?」
三人の意見が一致したことで、わたしたちの企画動画に出演するダンサーを決めるための選抜オーディションが開催されることになった。
使用する楽曲の『Cross Over』は、5人のユニットで踊る曲なので、今回のダンス動画に出演したい部員には、それぞれ希望するパートのダンスを撮影してもらって、動画を確認しながら部内オーディションを実施する。
出演希望者は、前日までに、各自の練習とダンス動画の録画を終えていて、今日は、いよいよ部内選考が行われる日だ。
わたし自身はもちろんのこと、
「わたすなんかが、オーディションに参加して良いべか?」
と渋る雪乃にもダンスをしてもらい、そのようすも撮影している。
まだ引っ込み思案なところがある彼女を説き伏せて踊ってもらったところ、雪乃は、わたしの予想以上にキレのあるダンスを披露して、ダンス部の部員を驚かせていた。
「宮野さんだっけ? スゴいじゃん! まだ、どこのクラブにも入ってないなら、今からでもダンス部に入んない?」
あまり面識のない相手にも、積極的にコミュニケーションを取るタイプの摩耶が、声をかけると、
「スミマセン……わたすは、広報部に仮入部をさせてもらってまスので……ほんに、申ス訳ないことでス」
と、雪乃は、照れながら、恐縮したように勧誘を断っていた。
そのようすが、なんとも愛らしく、わたしを慕ってくれるこの下級生を愛おしく感じてしまう。
そして、部員間投票でのオーディションの結果、選抜メンバーは――――――。
・野中麻耶
・石川奈々子
・伊原立花
・白草四葉
・宮野雪乃
以上の5人に決まった。
雪乃が、予想を上回るくらいダンスのセンスに恵まれていた、という嬉しい誤算もあり、ほぼ想定したとおりのメンバーで動画制作に入ることができることに、わたしは、満足を覚えていた。
「み、みんなの足を引っ張らねぇようにしまスんで、どうか、よろしくお願いしまス」
今回のダンスメンバーに加わることが決まったことで、かしこまりながら、ペコペコと頭を下げる雪乃に、ダンス部からは、暖かい拍手がわき起こった。
かわいい後輩が、このクラブのメンバーに受け入れられつつあることを感じて、わたしは、まるで自分のことのように表情がほころんでいることに気づく。
そして――――――。
(計画したとおりに動画が完成すれば、きっと、クロは、いままで以上にわたしのことを意識するよね……)
そんなことを想像しながら、わたしは、さらに頬がゆるむのを抑えられなかった。
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