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第三部
第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜③
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「部長、質問いいですか?」
オレを含めて、声を発した女子生徒に視線が集まる。
「えぇ、どうぞ、佐倉さん」
鳳花部長にうながされると、モモカは、彼女の美点のひとつである、ハッキリとした聞き取りやすい声で、上級生にたずねる。
「今回は、三つのグループに別れて動画を作成するということですけど、グループ分けは、どんな風に決めるんですか? あと、決まったメンバーによっては、提案したいことがあります」
そういえば、モモカは、一昨日も紅野たちから話しを聞いたときに、同じような質問をしてたっけ……。
まぁ、たしかに、動画作成という課題が与えられる以上、どのメンバーと活動するかは重要な問題ではある。
パートナーの個性や得意分野によって、自分たちの制作する動画も大きく変わってくるだろうし――――――。
友人のオレから見ても、センス抜群の映像編集技術を持っている壮馬。
中学時代、ともに校内放送をしていたモモカの美声とトークスキルも動画撮影や配信に活かせるだろう。
そして、動画サイトやSNSで100万人のフォロワーを持つシロの企画力とカリスマ性は、今さら説明するまでもない。
一方で、動画制作において、特段のスキルを持っている訳ではないオレを含めて、広報部部外者の紅野と天竹、そして、我が部に入部したばかりで、実力未知数の一年生部員である宮野は、壮馬たち三人のうちの誰かとパートナーになったほうが良いんじゃないと考える。
まあ、いつも頼りになる鳳花部長のことだ。その辺りのことは、なにか、考えているだろう、と信頼しているが――――――。
「そうね……ここは、公平にクジ引きで決めましょう! ちょうど、生徒会で使っているクジ引きマシンを持ってきてるの」
――――――どうやら、生徒会副会長にして我が部の絶対的権力者である彼女に対するオレの信頼は、買い被りだったようである。
しかも、大げさにクジ引きマシンと称されたソレは、竹筒に割り箸が六本刺さっただけのアナログ感きわまるものだった。
「本当は、PCやタブレットで、ルーレットアプリみたいなモノを使えたら良かったんだけど……そういうことには詳しくなくて……」
申し訳なさそうに謝罪する鳳花部長に対して、
(この人にも苦手なこともあるんだな……)
と、逆に親近感が湧いたりしながら、他のメンバーと一緒にクジ引きに参加するべく、チェシャー猫のように、ニマニマと笑いながら、クジの入ったカラカラと竹筒を回す寿生徒会長のもとに集まって、割り箸を選ぶ。
「クジの先には、青・赤・黃の三色が塗ってあって、それぞれ二本ずつ入ってるから、その色でペアを決めましょう」
鳳花部長の言葉にうなずきながら、壮馬、シロ、モモカ、宮野、そして、紅野も、それぞれがクジを選んで、準備は整った。
「じゃあ、私の掛け声で、いっせいにクジを引いてね! それじゃ行くよ……」
「せ~の!」
という生徒会長の声に合わせて、オレたちは、一斉にクジを引く。
それぞれのクジの先に塗られていた色は――――――。
青:オレ、モモカ
赤:シロ、宮野
黃:壮馬、紅野(天竹)
――――――という結果になった。
クジに塗られた色を確認した瞬間、
「キャ~~~~~~~~~~~~~~~~~! くろセンパイと一緒だ!」
飛び跳ねるように、喜びを表すモモカ。
その勢いのまま、コチラの腕にすがりつかんばかりに身体を寄せてくるが、なぜ、彼女が、こんなにも感激しているのか? 中学時代、この下級生から、散々、辛らつなコメントを吐かれ続けたオレには、さっぱり理解できない。
一方で、
「チッ!」
オレの耳にも聞こえるような舌打ちをし、一瞬だけ苦虫を噛み潰すような表情を見せたシロは、しかし、すぐに素の表情にもどったあと、笑顔を見せて、
「わたしのペアは、雪乃だ! ヨロシクね!」
と、営業スマイル全開で、彼女のことを心の底から慕っているようすの我が部の新入部員に語りかけている。
シロに声を掛けられた宮野は、憧れのシロと活動をともにすることができたことに感激して身体を震わせているかと思ったのだが、コチラには聞こえない小声で、なにやらブツブツとつぶやいている。
彼女の一番そばに居たオレには、
「黒田先輩と他の女子がイチャつくのを見て、表情が曇るのを抑えられないヨツバちゃん、尊いべ……推せる……」
と、聞こえたような気もするが、きっと気のせいだろう。
モモカとともに、慢性的な人手不足の広報部に入部しようという意志を示してくれたこの下級生には、感謝したいが、この後輩にも、どこか変わったところがあるようだ。
そして、もう一つの壮馬たちのグループは、
「やった、私たちは黄瀬くんのチームだ! 良かったね、ノア!」
と、文芸部の部長を務める天竹葵が、もっとも喜んでいるようだ。
彼女は、オレたち広報部メンバーや白草よりも、壮馬といちばん親しく話す仲だと思うので、この反応は当然か。
天竹の呼びかけに応じて、紅野も、
「うん、そうだね……ヨロシクね、黄瀬くん」
と、穏やかな表情で壮馬に語りかけている。
クジ引きという運に左右される決め方にしては、かなりバランスの取れた組み合わせになったのではないか、と個人的には感じる。
これなら、動画制作のグループ分けを気にしていたようすのモモカも、納得だろうと考えていると、
「動画を制作するグループが決まったことで、あらためて提案したいことがあるんですけど、良いですか?」
と、当のモモカが、ふたたび手を挙げて、鳳花部長に問いかけた。
オレを含めて、声を発した女子生徒に視線が集まる。
「えぇ、どうぞ、佐倉さん」
鳳花部長にうながされると、モモカは、彼女の美点のひとつである、ハッキリとした聞き取りやすい声で、上級生にたずねる。
「今回は、三つのグループに別れて動画を作成するということですけど、グループ分けは、どんな風に決めるんですか? あと、決まったメンバーによっては、提案したいことがあります」
そういえば、モモカは、一昨日も紅野たちから話しを聞いたときに、同じような質問をしてたっけ……。
まぁ、たしかに、動画作成という課題が与えられる以上、どのメンバーと活動するかは重要な問題ではある。
パートナーの個性や得意分野によって、自分たちの制作する動画も大きく変わってくるだろうし――――――。
友人のオレから見ても、センス抜群の映像編集技術を持っている壮馬。
中学時代、ともに校内放送をしていたモモカの美声とトークスキルも動画撮影や配信に活かせるだろう。
そして、動画サイトやSNSで100万人のフォロワーを持つシロの企画力とカリスマ性は、今さら説明するまでもない。
一方で、動画制作において、特段のスキルを持っている訳ではないオレを含めて、広報部部外者の紅野と天竹、そして、我が部に入部したばかりで、実力未知数の一年生部員である宮野は、壮馬たち三人のうちの誰かとパートナーになったほうが良いんじゃないと考える。
まあ、いつも頼りになる鳳花部長のことだ。その辺りのことは、なにか、考えているだろう、と信頼しているが――――――。
「そうね……ここは、公平にクジ引きで決めましょう! ちょうど、生徒会で使っているクジ引きマシンを持ってきてるの」
――――――どうやら、生徒会副会長にして我が部の絶対的権力者である彼女に対するオレの信頼は、買い被りだったようである。
しかも、大げさにクジ引きマシンと称されたソレは、竹筒に割り箸が六本刺さっただけのアナログ感きわまるものだった。
「本当は、PCやタブレットで、ルーレットアプリみたいなモノを使えたら良かったんだけど……そういうことには詳しくなくて……」
申し訳なさそうに謝罪する鳳花部長に対して、
(この人にも苦手なこともあるんだな……)
と、逆に親近感が湧いたりしながら、他のメンバーと一緒にクジ引きに参加するべく、チェシャー猫のように、ニマニマと笑いながら、クジの入ったカラカラと竹筒を回す寿生徒会長のもとに集まって、割り箸を選ぶ。
「クジの先には、青・赤・黃の三色が塗ってあって、それぞれ二本ずつ入ってるから、その色でペアを決めましょう」
鳳花部長の言葉にうなずきながら、壮馬、シロ、モモカ、宮野、そして、紅野も、それぞれがクジを選んで、準備は整った。
「じゃあ、私の掛け声で、いっせいにクジを引いてね! それじゃ行くよ……」
「せ~の!」
という生徒会長の声に合わせて、オレたちは、一斉にクジを引く。
それぞれのクジの先に塗られていた色は――――――。
青:オレ、モモカ
赤:シロ、宮野
黃:壮馬、紅野(天竹)
――――――という結果になった。
クジに塗られた色を確認した瞬間、
「キャ~~~~~~~~~~~~~~~~~! くろセンパイと一緒だ!」
飛び跳ねるように、喜びを表すモモカ。
その勢いのまま、コチラの腕にすがりつかんばかりに身体を寄せてくるが、なぜ、彼女が、こんなにも感激しているのか? 中学時代、この下級生から、散々、辛らつなコメントを吐かれ続けたオレには、さっぱり理解できない。
一方で、
「チッ!」
オレの耳にも聞こえるような舌打ちをし、一瞬だけ苦虫を噛み潰すような表情を見せたシロは、しかし、すぐに素の表情にもどったあと、笑顔を見せて、
「わたしのペアは、雪乃だ! ヨロシクね!」
と、営業スマイル全開で、彼女のことを心の底から慕っているようすの我が部の新入部員に語りかけている。
シロに声を掛けられた宮野は、憧れのシロと活動をともにすることができたことに感激して身体を震わせているかと思ったのだが、コチラには聞こえない小声で、なにやらブツブツとつぶやいている。
彼女の一番そばに居たオレには、
「黒田先輩と他の女子がイチャつくのを見て、表情が曇るのを抑えられないヨツバちゃん、尊いべ……推せる……」
と、聞こえたような気もするが、きっと気のせいだろう。
モモカとともに、慢性的な人手不足の広報部に入部しようという意志を示してくれたこの下級生には、感謝したいが、この後輩にも、どこか変わったところがあるようだ。
そして、もう一つの壮馬たちのグループは、
「やった、私たちは黄瀬くんのチームだ! 良かったね、ノア!」
と、文芸部の部長を務める天竹葵が、もっとも喜んでいるようだ。
彼女は、オレたち広報部メンバーや白草よりも、壮馬といちばん親しく話す仲だと思うので、この反応は当然か。
天竹の呼びかけに応じて、紅野も、
「うん、そうだね……ヨロシクね、黄瀬くん」
と、穏やかな表情で壮馬に語りかけている。
クジ引きという運に左右される決め方にしては、かなりバランスの取れた組み合わせになったのではないか、と個人的には感じる。
これなら、動画制作のグループ分けを気にしていたようすのモモカも、納得だろうと考えていると、
「動画を制作するグループが決まったことで、あらためて提案したいことがあるんですけど、良いですか?」
と、当のモモカが、ふたたび手を挙げて、鳳花部長に問いかけた。
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