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第三部
第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜①
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5月23日(月)
~黒田竜司の見解~
モモカと宮野、二人の歓迎会が終わった二日後――――――。
紅野と天竹が伝えてくれたように、放課後、壮馬や女子のクラスメートたちと広報部の部室として利用している放送室に到着すると、すでに、我が部の部長である花金鳳花先輩と生徒会長にして吹奏楽部副部長の寿美奈子先輩が、説明会の準備を整えて待ち構えていた。
放送室の壁には、広報部の備品として購入されたノートPCから無線LANで接続されたプロジェクタを通して、
『第1回芦宮高校PRコンテスト(仮)開催について』
というタイトルで、スライドショーの画面が表示されていた。
我らが部長殿の企画を進める際の相変わらずの手際の良さと用意周到さに、畏敬と若干の畏怖の念を同時にいだきながら、先輩たちに声をかける。
「先輩方お待たせしました! 土曜日に紅野さんたちから伝言を受け取りました。今日は、その二人と白草さんに来てもらいましたよ」
オレの声に続いて、紅野と天竹が、
「お邪魔します」
「よろしくお願いします」
と、鳳花部長にあいさつする。
その一方、シロ……白草四葉は、
「寿先輩、花金先輩、今回もお誘いいただいてありがとうございます! 新しい企画も、すっごく楽しみです!」
と、営業スマイル全開で先輩たちに声を掛けていた。
芸能活動に近いことを行っていたためなのか、あるいは、母親が有名女優であるためなのか、相変わらずの外面の良さに舌を巻く。
彼女の性格については、ある程度、理解することができ始めているので、いま、先輩たちに見せている笑顔をコチラにも向けてほしい、などとは微塵も思わないが、それでも、なぜ、自分はこの外見と内面に大きな隔たりがあるクラスメートに惹かれているのか、と我ながら疑問に感じる。
(紅野のときは、こんなに引きづらなかったのになぁ……)
ふた月ほど前に、クラス委員の紅野アザミに告白し、結果として玉と砕けたこともショックではあったが、いま、シロに対して感じているほどの未練はなかったように思う。
(あんまりしつこく想い続けて関係をこじらせるのは避けたいし……そろそろ、気持ちを切り替えないとな)
そう考える自分にとって、広報部の活動に集中できる今回の企画は、ありがたいものと言える。
そんな風に考えて、前向きに本来の活動に取り組もうと気持ちを固めていると、
「ねぇ、クロ! 今回は、どんな組み合わせで活動するのかな? わたしは、クロと一緒に組めたら楽しいと思うな!」
と、シロが満面の笑みで語りかけてくる。
「お、おう……そう思ってもらえて光栄だな……」
彼女に、そう答えつつ、心のなかでは、
(だから……なんで、そんなに思わせぶりな態度を取るんだよ……)
と、シロに抗議の声をあげたかった。
全校生徒+生配信の視聴者の眼の前で盛大にフラれたオレからすると、こういう気を持たせるような言動というのは遠慮してもらいたいところなのだが、天然なのか、それとも、何らかの意図があるのか、白草四葉という元幼馴染みにして、同世代のカリスマでもあるクラスメートは、あの告白以降も、こうした態度を崩さない。
告白が失敗したことをキッカケに、シロとの関係にスレ違いが生じることは一番避けたかったから、それよりは、はるかにマシな状況ではあるが、何やら生殺しのような状態が続いているようで、これはこれで、あまり居心地が良くない。
ここ何日かの言動から、
(もしかして、シロはオレに対して好意的なモノを持っているのか……?)
と、感じたりもするのだが、そんなことを友人の壮馬にでも漏らそうなものなら、呆れ返ったような表情で
「ハッ……あり得ないね……」
と、鼻で笑われるのがオチだろう。
そんな葛藤を抱えながら、
「クロも、そう思ってくれてるの? 嬉しい!」
と、腕を組もうとしてくるシロをあしらっていると、おもむろに、放送室のドアが開き、不機嫌そうな表情と、目を丸くしてオレたちの様子を見つめてくる二人の下級生が入室してきた。
「くろセンパイをフッたひとが、なんで、その相手とじゃれ合ってるんですか?」
あからさまに不愉快そうに話すのは、佐倉桃華。
オレと壮馬の中学時代からの後輩で、放送部らしい美声と(毒舌をともなった)抜群のトークスキルを持った広報部期待の新入生である。
「ハァ……周りを牽制するように男子とイチャつく四葉ちゃん……美しいべ……」
どこかにトリップしたような表情でシロを見つめるのは、先週、広報部に入部を申し込んできた宮野雪乃。
他の地方から、ウチの高校に進学してきたらしく、校内に知り合いは少ないものの、白草四葉の熱心なフォロワーで、その言動から、シロを崇拝に近い感情で慕っているということがわかる。
「おっ! モモカと宮野、来てくれたか! 待ってたぞ! 鳳花部長、メンバーも揃ったことだし、早速、説明会を始めてもらっていいですか?」
シロの謎の行動と、不快感を隠そうとしない桃華の態度を落ち着かせようと部長に提案すると、先輩たち二人はクスクスと微笑み合い、壮馬は、「やれやれ……」とため息をつき、クラスメートの紅野と天竹は、広報部のかしましい雰囲気に苦笑いを隠せないようだった。
~黒田竜司の見解~
モモカと宮野、二人の歓迎会が終わった二日後――――――。
紅野と天竹が伝えてくれたように、放課後、壮馬や女子のクラスメートたちと広報部の部室として利用している放送室に到着すると、すでに、我が部の部長である花金鳳花先輩と生徒会長にして吹奏楽部副部長の寿美奈子先輩が、説明会の準備を整えて待ち構えていた。
放送室の壁には、広報部の備品として購入されたノートPCから無線LANで接続されたプロジェクタを通して、
『第1回芦宮高校PRコンテスト(仮)開催について』
というタイトルで、スライドショーの画面が表示されていた。
我らが部長殿の企画を進める際の相変わらずの手際の良さと用意周到さに、畏敬と若干の畏怖の念を同時にいだきながら、先輩たちに声をかける。
「先輩方お待たせしました! 土曜日に紅野さんたちから伝言を受け取りました。今日は、その二人と白草さんに来てもらいましたよ」
オレの声に続いて、紅野と天竹が、
「お邪魔します」
「よろしくお願いします」
と、鳳花部長にあいさつする。
その一方、シロ……白草四葉は、
「寿先輩、花金先輩、今回もお誘いいただいてありがとうございます! 新しい企画も、すっごく楽しみです!」
と、営業スマイル全開で先輩たちに声を掛けていた。
芸能活動に近いことを行っていたためなのか、あるいは、母親が有名女優であるためなのか、相変わらずの外面の良さに舌を巻く。
彼女の性格については、ある程度、理解することができ始めているので、いま、先輩たちに見せている笑顔をコチラにも向けてほしい、などとは微塵も思わないが、それでも、なぜ、自分はこの外見と内面に大きな隔たりがあるクラスメートに惹かれているのか、と我ながら疑問に感じる。
(紅野のときは、こんなに引きづらなかったのになぁ……)
ふた月ほど前に、クラス委員の紅野アザミに告白し、結果として玉と砕けたこともショックではあったが、いま、シロに対して感じているほどの未練はなかったように思う。
(あんまりしつこく想い続けて関係をこじらせるのは避けたいし……そろそろ、気持ちを切り替えないとな)
そう考える自分にとって、広報部の活動に集中できる今回の企画は、ありがたいものと言える。
そんな風に考えて、前向きに本来の活動に取り組もうと気持ちを固めていると、
「ねぇ、クロ! 今回は、どんな組み合わせで活動するのかな? わたしは、クロと一緒に組めたら楽しいと思うな!」
と、シロが満面の笑みで語りかけてくる。
「お、おう……そう思ってもらえて光栄だな……」
彼女に、そう答えつつ、心のなかでは、
(だから……なんで、そんなに思わせぶりな態度を取るんだよ……)
と、シロに抗議の声をあげたかった。
全校生徒+生配信の視聴者の眼の前で盛大にフラれたオレからすると、こういう気を持たせるような言動というのは遠慮してもらいたいところなのだが、天然なのか、それとも、何らかの意図があるのか、白草四葉という元幼馴染みにして、同世代のカリスマでもあるクラスメートは、あの告白以降も、こうした態度を崩さない。
告白が失敗したことをキッカケに、シロとの関係にスレ違いが生じることは一番避けたかったから、それよりは、はるかにマシな状況ではあるが、何やら生殺しのような状態が続いているようで、これはこれで、あまり居心地が良くない。
ここ何日かの言動から、
(もしかして、シロはオレに対して好意的なモノを持っているのか……?)
と、感じたりもするのだが、そんなことを友人の壮馬にでも漏らそうなものなら、呆れ返ったような表情で
「ハッ……あり得ないね……」
と、鼻で笑われるのがオチだろう。
そんな葛藤を抱えながら、
「クロも、そう思ってくれてるの? 嬉しい!」
と、腕を組もうとしてくるシロをあしらっていると、おもむろに、放送室のドアが開き、不機嫌そうな表情と、目を丸くしてオレたちの様子を見つめてくる二人の下級生が入室してきた。
「くろセンパイをフッたひとが、なんで、その相手とじゃれ合ってるんですか?」
あからさまに不愉快そうに話すのは、佐倉桃華。
オレと壮馬の中学時代からの後輩で、放送部らしい美声と(毒舌をともなった)抜群のトークスキルを持った広報部期待の新入生である。
「ハァ……周りを牽制するように男子とイチャつく四葉ちゃん……美しいべ……」
どこかにトリップしたような表情でシロを見つめるのは、先週、広報部に入部を申し込んできた宮野雪乃。
他の地方から、ウチの高校に進学してきたらしく、校内に知り合いは少ないものの、白草四葉の熱心なフォロワーで、その言動から、シロを崇拝に近い感情で慕っているということがわかる。
「おっ! モモカと宮野、来てくれたか! 待ってたぞ! 鳳花部長、メンバーも揃ったことだし、早速、説明会を始めてもらっていいですか?」
シロの謎の行動と、不快感を隠そうとしない桃華の態度を落ち着かせようと部長に提案すると、先輩たち二人はクスクスと微笑み合い、壮馬は、「やれやれ……」とため息をつき、クラスメートの紅野と天竹は、広報部のかしましい雰囲気に苦笑いを隠せないようだった。
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