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第二部
第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑰
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壮馬とシロと一緒に放送室に入ると、すでに、鳳花部長や桃華をはじめ、三年の荒木先輩や大宮先輩など、広報部の全員が揃っていた。
「お待たせしました! 遅くなって申し訳ありません」
謝りながら、クラスメートの二人とともに、部員たちが集まる輪の中に加わると、鳳花部長が、
「黒田くんには、白草さんに声をかけてもらうようにお願いしていたし、二年A組の教室は、ここから、いちばん離れているしね。気にしないで」
と、フォローを入れてくれる。そして、オレの隣に立つシロに向かって、語りかける。
「白草さん、私たちのために時間を取ってくれてありがとう。今日は、あなたにお願いしたいことがあって、放送室に来てもらったの」
「はい! 広報部なら、楽しそうなアイデアが出てきそうなので……わたしにできることなら、なんでも協力してさせてください」
今日は朝から機嫌の良いシロも、笑顔で部長の言葉に応じた。
そして、鳳花先輩は、「そう言ってもらえると、心強いわ」と、軽く微笑んだあと、高らかに宣言した。
「その前に、今日の本題その一に入らせてもらうわ。私たちの活動に興味を持って、体験入部を申し込んでくれた新入生を紹介します!」
その一言で、緊張気味な面持ちで、部長の隣に立っている女子生徒の存在に気づいた。
その姿を目にした瞬間に湧いてきた
(ん? この子とは、どこかで会ったことがあるような……)
という疑問は、彼女が独特のイントネーションで話し始めた瞬間、解決する。
「わ、わたすの名前は、宮野雪乃と言いまス。高校入学と同時に、両親と一緒に、こっちの方に引っ越してきまスた」
まちがいない! 先週、広報部への体験入部を断られたシロが放送室を飛び出したあと、廊下でぶつかりそうになった、あの一年生だ。
そのことに気づいたオレが、隣のシロのようすをうかがうと、彼女も、宮野雪乃と名乗った下級生に視線を向けて、なにかを思い出そうとしているようだった。
そんなオレたちの行動をよそに、鳳花部長が、体験入部希望者の自己紹介に対して、フォローを入れる。
「いまの自己紹介にもあったように、宮野さんは、とおくの地方から、こちらに引っ越してきたそうだから、困ってそうなことがあったら、広報部の活動に限らず、手助けをしてあげてちょうだい。あと、彼女は、広報活動について、興味を持っている分野があるみたいなの。宮野さん、自分で話してもらえる?」
部長の言葉を受けた宮野は、硬い表情のままでうなずいたものの、自分の言葉で語ろうと口を開いた。
「わ、わたす、ヨツバちゃん、いえ……白草四葉先輩の大ファンなんです。小さい頃からテレビで活躍しているヨツバちゃんのファンで、いまは、《YourTube》やSNSの投稿を毎日楽しみにしていまス。広報部では、ヨツバちゃんの投稿を参考に、SNSでの投稿のお役に立ちたいな、と考えていまス」
オレを含めた広報部全員が、ペコリと頭を下げる宮野に拍手を送る。
そして、彼女の言葉を聞いた途端、「まぁ!」という感じで目を見開いたシロは、
「宮野さん! わたしのフォロワーさんなの? アカウント名を教えてくれる?」
と、嬉しそうにたずねる。
「はい、ヨツバちゃん! わたすは、snow_fieldという名前、《ミンスタ》と《トゥイッター》に登録してるべ!」
「あっ! あなた、snow_fieldサンなの? わたし、何度かリプを送り合ってない?」
「はい! 《トゥイッター》に投稿された『アニメごはん』の時に、ヨツバちゃんから、良くリプをもらってまス」
体験入部希望者が、そう答えると、同世代のカリスマにして、インフルエンサーである彼女は、
「キャ~~~~!」
と黄色い声をあげたあと、
「こんな近くに、こんなに可愛いらしいフォロワーさんがいてくれて嬉しい~」
と言って、下級生の元まで移動し、思い切りハグをした。
一方の宮野は、明らかに困惑したようすで、
「あわわ……本物のヨツバちゃんが、わたすなんかに可愛いらしいなんて……夢じゃねぇべか?」
と言いながら、色白な顔を赤らめている。
最初に廊下で出会ったときにも感じたことだが、セミロングの長さに切り揃えられた栗色の髪と雪のように白い顔立ちの宮野雪乃からは、素朴な印象を受ける。
彼女が、控えめに言っても、人目を引くタイプであるシロに憧れるのは、意外な気もしたが、人間、自分にない面を持っている相手に惹かれるモノなのかも知れない。
そんなシロと宮野のようすを穏やかに見守っていた鳳花部長は、ほほえみながら、
「ふたりが、仲良くできそうで良かったわ」
そう一言つぶやいて、
「白草さん、あらためて、二つ目の本題の話しをさせてもらって良い?」
と、シロに確認を取った。
鳳花部長から声をかけられたシロは、「はい!?」と、上級生の言葉に反応して、宮野から身体を離す。
そして、
「わたしを放送室に呼んでくれた件ですね? どんなことでしょう?」
と、彼女は居住まいを正して、広報部の責任者の言葉に耳を傾ける準備をする。
そんななか、
「鳳花センパイは、白草さんに、どんな用事があるんですかね?」
シロや宮野、鳳花部長の言動を観察していた桃華が、こちらに寄って、話しかけてきた。
「さぁ、なんだろうな? オレには想像もつかねぇ……」
オレが、桃華の言葉に返答したあと、鳳花部長は、すぐにシロに向かって話し始める。
壮馬とシロと一緒に放送室に入ると、すでに、鳳花部長や桃華をはじめ、三年の荒木先輩や大宮先輩など、広報部の全員が揃っていた。
「お待たせしました! 遅くなって申し訳ありません」
謝りながら、クラスメートの二人とともに、部員たちが集まる輪の中に加わると、鳳花部長が、
「黒田くんには、白草さんに声をかけてもらうようにお願いしていたし、二年A組の教室は、ここから、いちばん離れているしね。気にしないで」
と、フォローを入れてくれる。そして、オレの隣に立つシロに向かって、語りかける。
「白草さん、私たちのために時間を取ってくれてありがとう。今日は、あなたにお願いしたいことがあって、放送室に来てもらったの」
「はい! 広報部なら、楽しそうなアイデアが出てきそうなので……わたしにできることなら、なんでも協力してさせてください」
今日は朝から機嫌の良いシロも、笑顔で部長の言葉に応じた。
そして、鳳花先輩は、「そう言ってもらえると、心強いわ」と、軽く微笑んだあと、高らかに宣言した。
「その前に、今日の本題その一に入らせてもらうわ。私たちの活動に興味を持って、体験入部を申し込んでくれた新入生を紹介します!」
その一言で、緊張気味な面持ちで、部長の隣に立っている女子生徒の存在に気づいた。
その姿を目にした瞬間に湧いてきた
(ん? この子とは、どこかで会ったことがあるような……)
という疑問は、彼女が独特のイントネーションで話し始めた瞬間、解決する。
「わ、わたすの名前は、宮野雪乃と言いまス。高校入学と同時に、両親と一緒に、こっちの方に引っ越してきまスた」
まちがいない! 先週、広報部への体験入部を断られたシロが放送室を飛び出したあと、廊下でぶつかりそうになった、あの一年生だ。
そのことに気づいたオレが、隣のシロのようすをうかがうと、彼女も、宮野雪乃と名乗った下級生に視線を向けて、なにかを思い出そうとしているようだった。
そんなオレたちの行動をよそに、鳳花部長が、体験入部希望者の自己紹介に対して、フォローを入れる。
「いまの自己紹介にもあったように、宮野さんは、とおくの地方から、こちらに引っ越してきたそうだから、困ってそうなことがあったら、広報部の活動に限らず、手助けをしてあげてちょうだい。あと、彼女は、広報活動について、興味を持っている分野があるみたいなの。宮野さん、自分で話してもらえる?」
部長の言葉を受けた宮野は、硬い表情のままでうなずいたものの、自分の言葉で語ろうと口を開いた。
「わ、わたす、ヨツバちゃん、いえ……白草四葉先輩の大ファンなんです。小さい頃からテレビで活躍しているヨツバちゃんのファンで、いまは、《YourTube》やSNSの投稿を毎日楽しみにしていまス。広報部では、ヨツバちゃんの投稿を参考に、SNSでの投稿のお役に立ちたいな、と考えていまス」
オレを含めた広報部全員が、ペコリと頭を下げる宮野に拍手を送る。
そして、彼女の言葉を聞いた途端、「まぁ!」という感じで目を見開いたシロは、
「宮野さん! わたしのフォロワーさんなの? アカウント名を教えてくれる?」
と、嬉しそうにたずねる。
「はい、ヨツバちゃん! わたすは、snow_fieldという名前、《ミンスタ》と《トゥイッター》に登録してるべ!」
「あっ! あなた、snow_fieldサンなの? わたし、何度かリプを送り合ってない?」
「はい! 《トゥイッター》に投稿された『アニメごはん』の時に、ヨツバちゃんから、良くリプをもらってまス」
体験入部希望者が、そう答えると、同世代のカリスマにして、インフルエンサーである彼女は、
「キャ~~~~!」
と黄色い声をあげたあと、
「こんな近くに、こんなに可愛いらしいフォロワーさんがいてくれて嬉しい~」
と言って、下級生の元まで移動し、思い切りハグをした。
一方の宮野は、明らかに困惑したようすで、
「あわわ……本物のヨツバちゃんが、わたすなんかに可愛いらしいなんて……夢じゃねぇべか?」
と言いながら、色白な顔を赤らめている。
最初に廊下で出会ったときにも感じたことだが、セミロングの長さに切り揃えられた栗色の髪と雪のように白い顔立ちの宮野雪乃からは、素朴な印象を受ける。
彼女が、控えめに言っても、人目を引くタイプであるシロに憧れるのは、意外な気もしたが、人間、自分にない面を持っている相手に惹かれるモノなのかも知れない。
そんなシロと宮野のようすを穏やかに見守っていた鳳花部長は、ほほえみながら、
「ふたりが、仲良くできそうで良かったわ」
そう一言つぶやいて、
「白草さん、あらためて、二つ目の本題の話しをさせてもらって良い?」
と、シロに確認を取った。
鳳花部長から声をかけられたシロは、「はい!?」と、上級生の言葉に反応して、宮野から身体を離す。
そして、
「わたしを放送室に呼んでくれた件ですね? どんなことでしょう?」
と、彼女は居住まいを正して、広報部の責任者の言葉に耳を傾ける準備をする。
そんななか、
「鳳花センパイは、白草さんに、どんな用事があるんですかね?」
シロや宮野、鳳花部長の言動を観察していた桃華が、こちらに寄って、話しかけてきた。
「さぁ、なんだろうな? オレには想像もつかねぇ……」
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