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第二部
第1章〜幼なじみは絶対に勝てないラブコメ〜④
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「鳳花~、お邪魔するよ~! 放送室でなんだか面白そうなことが起こりそうだと聞いて、ウチのかわいい後輩と、その親友を連れて来たよ~」
出迎えの言葉すら待たず、そう言いながら入室してきたのは、寿美奈子。竜司たちのクラスメート、紅野アザミの所属する吹奏楽部の副部長を務めながら、市立芦宮高校の生徒会長を兼務する、全校生徒の誰もが認める才媛だ。
彼女の背後には、、無理やり同行させられたことが容易に想像できるアザミと、彼女に連れ立って来た天竹葵が申し訳なさそうに立っていた。
「ごめんね、黒田くん、黄瀬くん……練習前に、白草さんと佐倉さんが、放送室に行くらしい、副部長に話したら……」
「すいません……私も、ノアが寿会長に手を引かれているのを見つけて、止めようとしたんですが……」
アザミと葵は、それぞれ謝罪の言葉を口にしようとするが、おおよそ、ナニが起こったのかを察した竜司と壮馬は、
「あ~、だいたい理由はわかったから、気にしないで……」
と、彼女たちをフォローしたあと、
((また、厄介事が増えそうだ……))
と、同時に嘆息する。
「白草さんと一年生の女の子が広報部に入部するって聞いたから、これは、ウチのかわいい後輩も出遅れちゃいけない、と思って馳せ参じたんだけど……で、なんの話しをしてたの?」
二年生たちの会話には、いっさい構うことなく話し続ける三年生に、生徒会の同僚でもあり、彼女と同じ最上級生の鳳花が、軽くため息をつきながら、返答する。
「美奈子……『邪魔するなら帰って』と、お約束の返答をしておきたいところだけど……白草さんも、わざわざ私たちのところに足を運んでくれたことだし、用があるなら、まとめて聞かせてもらうわ」
「さすが、我らが生徒会の副会長にして、広報部の部長サンね! 話しがわかる!!」
美奈子が弾む声で応答すると、上級生たちのとつぜんの来訪によって、話しを遮られた下級生が声をあげた。
「あの~、話しの続きをさせてもらって良いですか?」
「そういえば、佐倉さんが、なにか話そうとしている最中だったわね? このヒトのことは、気にしなくて良いから……さっきの話しができるなら、お好きなように」
部長の鳳花は、生徒会長の女生徒を指さしながら、後輩に会話の続きをうながす。
「ちょっと~、私はおじゃま虫あつかいなの~?」
抗議の声をあげる美奈子を遠慮なくスルーして、桃華は、先ほどより、さらに破壊力の増した、竜司には迎撃不可能な極超音速ミサイルによる一撃を繰り出す。
「そうそう! 年下好みのくろセンパイは、『お兄ちゃん』呼びの方が良かったんですね!? センパイが熱心にプレイしているウ◯娘でも、ホーム画面のキャラを、ダ◯ワスカーレットから、カ◯ンチャンに変更したばかりですもんね? ご要望とあれば、ア◯ゾンプライムと同じく月額五◯◯円の定額制で受け付けますよ? お兄ちゃん?」
彼女の一言に、女子一同は、一瞬にして表情をなくし、一方の竜司は、表情が固まる。
「な……、なんで、それを知ってるんだ……!?」
青ざめる上級生に対して、下級生の新入部員は、平然と答えた。
「あなたのことなら、な~んだって、理解ります! くろセンパイ…………いえ……お兄ちゃん!」
中学校在籍時、《放送部のカナリア》の愛称で全校生徒を虜にした彼女は、語尾にハートマークが付きそうな甘ったるい声で返答する。
二人の会話を氷点下10℃の視線で見つめる女子五名のうち、美奈子が、真っ先に口を開いた。
「わたしたち上級生の女子には、なんだか面白くない会話が続いているんだけど……そのカ◯ンチャンって、どんなキャラクターなの?」
生徒会長兼吹奏楽部副部長の問いかけに、あらかじめ回答を準備していたのだろうか、壮馬は自身のスマホの待ち受け画面を解除し、『ウ◯娘』のアプリを起動して、ホーム画面のキャラクターをオ◯リキャップから、カ◯ンチャンに変更する。
ロード画面が終了すると、白・黒・赤のカラーを基調とした衣装のキャラクターがホーム画面に登場し、画面越しに語りかけてきた。
「お兄ちゃんは、カ◯ンが大人になっても、カ◯ンをカ◯ンとして見てくれる?……ふふっ♪」
「世界中……ううん宇宙中から愛されて、1番カワイくなるの。お兄ちゃんも愛してね♪」
「あ、今カ◯ンのこと見てたでしょ?あはっ、お兄ちゃんなら~ もっと近くで……いいのに♪」
「カ◯ン、今度のランチはお兄ちゃんと食べたいなぁ~。カ◯ンが『あ~ん』、してあげる♪」
壮馬が画面をタップするたびにセリフが入れ替わり、そのたびに温度が下降していく女子の視線は、
「そ、壮馬……もうイイだろう……」
気まずそうに言葉を発する竜司が声をあげる頃、絶対零度に達していた。
「黒田くんにこういう趣味があったなんてね……知らなかったわ」
「気持ち悪い……」
「………………」
後輩の意外な趣味に眉をひそめる鳳花、素直に感想を口にする葵、唐突な展開についていけず言葉を失うアザミ、それぞれが反応を示したあと、ボソリとつぶやく低い声が聞こえた。
「なにが、『あ~ん、してあげる』よ……この娘、性格悪そう……」
吐き捨てるように言った四葉の言葉に、
(いやいや! 始業式の日、竜司に同じようなこと言ってたよね、白草さん!?)
というツッコミの言葉を飲み込み、壮馬は、
「たしかに、カ◯ンチャンはダスカのシナリオだと、腹黒キャラに見えるよね、竜司」
と、親友に同意を求める。
悪友の問いかけに、竜司は
(いや、カ◯ンチャンは実際に育成をすると性格の一途さがうかがえる、とってもイイ娘なんだぞ!)
と、反論したいところを我慢し、
「壮馬……もう、イイじゃないか、この話しは……あと、桃華! オレは、後輩に『お兄ちゃん』と呼ばせる趣味は持っていない!!」
そう断言して、会話を打ち切る。
「え~、そうなんですかぁ~。遠慮しなくてイイですよ、くろセンパイ! 今なら、初月無料のキャンペーンも実施中なのに……」
不満そうに言葉を続ける桃華に対して、花金鳳花が、部長らしい威厳を示し、
「同年代の男子の趣味について、興味深い話しは聞けたけど……今日は、黒田くんの性癖について、是非を語り合う場は設けていないから……白草さん、私たちの活動に興味を持ってもらうことは嬉しいんだけど……」
と、本来の話題にうつることを示唆した。
出迎えの言葉すら待たず、そう言いながら入室してきたのは、寿美奈子。竜司たちのクラスメート、紅野アザミの所属する吹奏楽部の副部長を務めながら、市立芦宮高校の生徒会長を兼務する、全校生徒の誰もが認める才媛だ。
彼女の背後には、、無理やり同行させられたことが容易に想像できるアザミと、彼女に連れ立って来た天竹葵が申し訳なさそうに立っていた。
「ごめんね、黒田くん、黄瀬くん……練習前に、白草さんと佐倉さんが、放送室に行くらしい、副部長に話したら……」
「すいません……私も、ノアが寿会長に手を引かれているのを見つけて、止めようとしたんですが……」
アザミと葵は、それぞれ謝罪の言葉を口にしようとするが、おおよそ、ナニが起こったのかを察した竜司と壮馬は、
「あ~、だいたい理由はわかったから、気にしないで……」
と、彼女たちをフォローしたあと、
((また、厄介事が増えそうだ……))
と、同時に嘆息する。
「白草さんと一年生の女の子が広報部に入部するって聞いたから、これは、ウチのかわいい後輩も出遅れちゃいけない、と思って馳せ参じたんだけど……で、なんの話しをしてたの?」
二年生たちの会話には、いっさい構うことなく話し続ける三年生に、生徒会の同僚でもあり、彼女と同じ最上級生の鳳花が、軽くため息をつきながら、返答する。
「美奈子……『邪魔するなら帰って』と、お約束の返答をしておきたいところだけど……白草さんも、わざわざ私たちのところに足を運んでくれたことだし、用があるなら、まとめて聞かせてもらうわ」
「さすが、我らが生徒会の副会長にして、広報部の部長サンね! 話しがわかる!!」
美奈子が弾む声で応答すると、上級生たちのとつぜんの来訪によって、話しを遮られた下級生が声をあげた。
「あの~、話しの続きをさせてもらって良いですか?」
「そういえば、佐倉さんが、なにか話そうとしている最中だったわね? このヒトのことは、気にしなくて良いから……さっきの話しができるなら、お好きなように」
部長の鳳花は、生徒会長の女生徒を指さしながら、後輩に会話の続きをうながす。
「ちょっと~、私はおじゃま虫あつかいなの~?」
抗議の声をあげる美奈子を遠慮なくスルーして、桃華は、先ほどより、さらに破壊力の増した、竜司には迎撃不可能な極超音速ミサイルによる一撃を繰り出す。
「そうそう! 年下好みのくろセンパイは、『お兄ちゃん』呼びの方が良かったんですね!? センパイが熱心にプレイしているウ◯娘でも、ホーム画面のキャラを、ダ◯ワスカーレットから、カ◯ンチャンに変更したばかりですもんね? ご要望とあれば、ア◯ゾンプライムと同じく月額五◯◯円の定額制で受け付けますよ? お兄ちゃん?」
彼女の一言に、女子一同は、一瞬にして表情をなくし、一方の竜司は、表情が固まる。
「な……、なんで、それを知ってるんだ……!?」
青ざめる上級生に対して、下級生の新入部員は、平然と答えた。
「あなたのことなら、な~んだって、理解ります! くろセンパイ…………いえ……お兄ちゃん!」
中学校在籍時、《放送部のカナリア》の愛称で全校生徒を虜にした彼女は、語尾にハートマークが付きそうな甘ったるい声で返答する。
二人の会話を氷点下10℃の視線で見つめる女子五名のうち、美奈子が、真っ先に口を開いた。
「わたしたち上級生の女子には、なんだか面白くない会話が続いているんだけど……そのカ◯ンチャンって、どんなキャラクターなの?」
生徒会長兼吹奏楽部副部長の問いかけに、あらかじめ回答を準備していたのだろうか、壮馬は自身のスマホの待ち受け画面を解除し、『ウ◯娘』のアプリを起動して、ホーム画面のキャラクターをオ◯リキャップから、カ◯ンチャンに変更する。
ロード画面が終了すると、白・黒・赤のカラーを基調とした衣装のキャラクターがホーム画面に登場し、画面越しに語りかけてきた。
「お兄ちゃんは、カ◯ンが大人になっても、カ◯ンをカ◯ンとして見てくれる?……ふふっ♪」
「世界中……ううん宇宙中から愛されて、1番カワイくなるの。お兄ちゃんも愛してね♪」
「あ、今カ◯ンのこと見てたでしょ?あはっ、お兄ちゃんなら~ もっと近くで……いいのに♪」
「カ◯ン、今度のランチはお兄ちゃんと食べたいなぁ~。カ◯ンが『あ~ん』、してあげる♪」
壮馬が画面をタップするたびにセリフが入れ替わり、そのたびに温度が下降していく女子の視線は、
「そ、壮馬……もうイイだろう……」
気まずそうに言葉を発する竜司が声をあげる頃、絶対零度に達していた。
「黒田くんにこういう趣味があったなんてね……知らなかったわ」
「気持ち悪い……」
「………………」
後輩の意外な趣味に眉をひそめる鳳花、素直に感想を口にする葵、唐突な展開についていけず言葉を失うアザミ、それぞれが反応を示したあと、ボソリとつぶやく低い声が聞こえた。
「なにが、『あ~ん、してあげる』よ……この娘、性格悪そう……」
吐き捨てるように言った四葉の言葉に、
(いやいや! 始業式の日、竜司に同じようなこと言ってたよね、白草さん!?)
というツッコミの言葉を飲み込み、壮馬は、
「たしかに、カ◯ンチャンはダスカのシナリオだと、腹黒キャラに見えるよね、竜司」
と、親友に同意を求める。
悪友の問いかけに、竜司は
(いや、カ◯ンチャンは実際に育成をすると性格の一途さがうかがえる、とってもイイ娘なんだぞ!)
と、反論したいところを我慢し、
「壮馬……もう、イイじゃないか、この話しは……あと、桃華! オレは、後輩に『お兄ちゃん』と呼ばせる趣味は持っていない!!」
そう断言して、会話を打ち切る。
「え~、そうなんですかぁ~。遠慮しなくてイイですよ、くろセンパイ! 今なら、初月無料のキャンペーンも実施中なのに……」
不満そうに言葉を続ける桃華に対して、花金鳳花が、部長らしい威厳を示し、
「同年代の男子の趣味について、興味深い話しは聞けたけど……今日は、黒田くんの性癖について、是非を語り合う場は設けていないから……白草さん、私たちの活動に興味を持ってもらうことは嬉しいんだけど……」
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