133 / 297
第二部
第1章〜幼なじみは絶対に勝てないラブコメ〜②
しおりを挟む
天竹葵が、竜司を中心にした桃華と四葉による不毛な争いから、紅野アザミを救い出したことで、壮馬は、親友を含めた三人とともに、広報部が活動拠点としている放送室に向かうことになった。
「見学に来ていただくのも、広報部に興味を持っていただくのも結構ですけど、白草センパイに手伝ってもらうようなことはないと思いますよ?」
「それは、アナタが決めることではないと思うけど?」
男子二名の前を歩く女子二名は、相変わらず教室で始められたバトルの延長戦を続けている。
「竜司……白草さんが、広報部に来ようとしてるけど、どうすんのさ? 佐倉さんの入部は、歓迎すべきだけど……ボクは、放課後や部活の時間まで、あのコと白草さんの下らない争いに巻き込まれるはゴメンだよ……」
桃華と四葉の二人に聞こえないように、小声で語りかける壮馬に対し、竜司が返答する。
「そんなこと言われても……『どうする?』と聞かれたって、オレには、どうしようもねぇよ……」
先週末に全校生徒どころか、学校見学者の中学生やライブ中継を視聴していた一般人の見守る前で、盛大に告白に失敗した彼は、三日以上が経過したいまも、そのショックを引きずっているようだ。
しかも、その出来事は、校内では《広報部のデモンストレーション》として、フェイク告白としてとらえられているため、彼の心情をくみ取り、なぐさめてくれる生徒もいない。
その点については、友人として同情しないわけではないが、そもそもの発端が、自分にも無断で行われた竜司の行動にあるため、
(因果応報、自業自得だよ……)
と、壮馬は感じていた。
(だいたい、最初は紅野さんに告白する計画だったじゃないか……)
日頃、他人に関心を寄せることの少ない黄瀬壮馬だが、オープン・スクールのサプライズ企画の一部始終を見てきた彼にとって、竜司と四葉の計画のダシに使われた感のある紅野アザミを気の毒に思う気持ちの方が強かった。
友人には、しばらく頭を冷やしてもらうとして、安易に彼らの計画に乗ってしまった自分自身への反省もこめて、アザミに対するフォローを心がけようと考える壮馬だった。
そんな男子二名の想いをよそに、女子たちの舌戦は続く。
「くろセンパイが振られたのは、フェイクってことになってるみたいですけど……わざわざ、ワタシたちの部活にまでついて来て……白草センパイ、くろセンパイのことが、そんなに気になるんですか?」
「わたしは、小学生の頃から彼と知り合いだもの……幼なじみが、どんな高校生活を送ってるのか、興味がわいただけ」
前方から漏れ聞こえてくる、不毛なマウンティングの取り合いにしか感じられない会話に対し、壮馬は、
「ハァ~~~」
と、深い溜め息をつく。
(佐倉さん、まだ正式に入部を認められてないのに、もう自分たちの部活あつかいか……)
(白草さん、子供の頃の竜司との付き合いは二週間くらいだろ? 短期間の思い出に執着して幼なじみヅラで相手につきまとうとか、有名RPGのキャラじゃないんだから……平成初期までならともかく、いまの時代じゃ、絶対にウザがられるパターンだよ……)
年齢の割に、古いゲームやアニメに造詣の深い彼は、内心でツッコミを入れながら、
「ハァ……バカばっか……」
と、今度は浅いため息をついた。
「見学に来ていただくのも、広報部に興味を持っていただくのも結構ですけど、白草センパイに手伝ってもらうようなことはないと思いますよ?」
「それは、アナタが決めることではないと思うけど?」
男子二名の前を歩く女子二名は、相変わらず教室で始められたバトルの延長戦を続けている。
「竜司……白草さんが、広報部に来ようとしてるけど、どうすんのさ? 佐倉さんの入部は、歓迎すべきだけど……ボクは、放課後や部活の時間まで、あのコと白草さんの下らない争いに巻き込まれるはゴメンだよ……」
桃華と四葉の二人に聞こえないように、小声で語りかける壮馬に対し、竜司が返答する。
「そんなこと言われても……『どうする?』と聞かれたって、オレには、どうしようもねぇよ……」
先週末に全校生徒どころか、学校見学者の中学生やライブ中継を視聴していた一般人の見守る前で、盛大に告白に失敗した彼は、三日以上が経過したいまも、そのショックを引きずっているようだ。
しかも、その出来事は、校内では《広報部のデモンストレーション》として、フェイク告白としてとらえられているため、彼の心情をくみ取り、なぐさめてくれる生徒もいない。
その点については、友人として同情しないわけではないが、そもそもの発端が、自分にも無断で行われた竜司の行動にあるため、
(因果応報、自業自得だよ……)
と、壮馬は感じていた。
(だいたい、最初は紅野さんに告白する計画だったじゃないか……)
日頃、他人に関心を寄せることの少ない黄瀬壮馬だが、オープン・スクールのサプライズ企画の一部始終を見てきた彼にとって、竜司と四葉の計画のダシに使われた感のある紅野アザミを気の毒に思う気持ちの方が強かった。
友人には、しばらく頭を冷やしてもらうとして、安易に彼らの計画に乗ってしまった自分自身への反省もこめて、アザミに対するフォローを心がけようと考える壮馬だった。
そんな男子二名の想いをよそに、女子たちの舌戦は続く。
「くろセンパイが振られたのは、フェイクってことになってるみたいですけど……わざわざ、ワタシたちの部活にまでついて来て……白草センパイ、くろセンパイのことが、そんなに気になるんですか?」
「わたしは、小学生の頃から彼と知り合いだもの……幼なじみが、どんな高校生活を送ってるのか、興味がわいただけ」
前方から漏れ聞こえてくる、不毛なマウンティングの取り合いにしか感じられない会話に対し、壮馬は、
「ハァ~~~」
と、深い溜め息をつく。
(佐倉さん、まだ正式に入部を認められてないのに、もう自分たちの部活あつかいか……)
(白草さん、子供の頃の竜司との付き合いは二週間くらいだろ? 短期間の思い出に執着して幼なじみヅラで相手につきまとうとか、有名RPGのキャラじゃないんだから……平成初期までならともかく、いまの時代じゃ、絶対にウザがられるパターンだよ……)
年齢の割に、古いゲームやアニメに造詣の深い彼は、内心でツッコミを入れながら、
「ハァ……バカばっか……」
と、今度は浅いため息をついた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる