81 / 307
回想③〜白草四葉の場合その2〜参
しおりを挟む
「時間は気にせず、ゆっくりしていってね、って言いたいところだけど、シロちゃんを遅くまで引き留めるのも良くないしね……このお菓子を食べて、紅茶を飲み終わったら、今日は解散にしましょうか?シロちゃんのお家は、ここから近いの?」
司サンの質問に、
「はい! 自転車で五分~十分くらいです!」
と答えると、彼女は、
「そっか! それなら……竜司、あとでシロちゃんをお家まで送ってあげなさい」
と、息子に伝えた。
すると、クロも「わかった~!」と返事をする。
てっきり、母親の言葉に反発して、わたしを伯父夫婦宅まで送ることを渋ると思っていたのに、彼が、あっさりと、その提案を快諾したことを意外に感じつつ、焼き菓子と紅茶をいただく。
その後、司サンに薦められたマカロンを食べ終え、お家にお邪魔したことと、お菓子や紅茶をいただいたことに、お礼を言って席を立ったわたしに、クロも、
「じゃあ、送って行くよ」
と、言って立ち上がる。
「明日も待ってるからね!」
と言って、玄関先で見送ってくれた司さんに再度お礼を述べて、黒田家をあとにした。
伯父夫婦宅に向けて、自転車を漕ぎながら、すぐそばのクロに話しかける。
「クロ、送ってくれてありがとう」
自分の予想に反して、親切にしてくれたことに感謝すると、彼は、
「いや、もう少し、シロと二人で話しがしたかったからな……」
などと、一瞬ドキリとするようなことを言う。
こうして、伯父の家まで送ってくれていることと言い、立て続けに予想外の行動を取るクロに動揺しつつ、わたしは、自分の気持ちを悟られないようにしつつ、
「へ、へぇ~……クロは、わたしとどんな話しがしたかったの?」
と、たずねてみた。
すると、彼はほおをかきながら、その理由を語る。
「あぁ、母ちゃんが急に帰って来て、中途半端になってしまったけど……シロと、もう少し映画の話しがしたかった、って思ってさ……」
(なんだ、そういう話しか……)
二人で話しをしたい、などと意味深長なフレーズがでただけに、その理由に、ガッカリした。
それでも――――――。
先ほど、司サンがアップルパイの話しをした時と同じように、クロの好みを知っておきたい、という想いが同時に湧いてきたので、
「そっか~。クロは、どんな映画の話しがしたかったの?」
と、たずねてみた。
すると、彼はその質問を待っていたのか即答する。
「先月観た『クローバー・フィールド』って映画が、スゲ~面白くてさ~! シロに話したかったんだ」
「そうなの? 『クローバー・フィールド』……なんだか面白そうなタイトルの映画だね」
「あぁ! 面白いぜ! オープニングのアイデアがスゴくてさ~」
「そうなんだ! 今度、観てみようかな……」
そう返答すると、クロは、なおも熱く映画について語り続ける。
「あぁ、オススメするぜ! あと、さっき観てもらった『フェリスはある朝突然に』だけどさ……今度、日本でも公開される『デッドプール』って映画が、すごく影響を受けてるらしいんだ! エンドロールが終わってからも、お楽しみが残されてるらしくてさ……」
「クロは、映画を見終わってからも、エンドロールが終わるまで席を立たないタイプ?」
わたしは、気になることを聞いてみた。
「そうだな~。家で映画を観るときも、最後まで見ることが多いかな? シロは、どうなんだ?」
「わたしも! 最後まで見終わってから、一緒に観たヒトと『楽しかったね!』って、感想を言うのが好き!」
「そうそう! 全部、見終わってから、感想を言い合うのが楽しいんだよな!」
そんな会話をしていると、春休みの間、お世話になっている伯父夫婦の家が見えてきた。
「あ、もうすぐ伯父さんの家だ。ゴメンね、クロ……もう少し、お話しを聞きたかったけど……」
自転車を停めて、わたしが、そう言うと、彼は右手をブンブンと振りつつ、
「いや、イイって! こっちこそ、今日は、母ちゃんと色々話してくれて、ありがとう。ああ見えて、オレのこと、心配してるみたいだからさ……母ちゃんもシロと話せて楽しかったと思うんだ……」
司サンのことを考えながら話していることが伝わる口ぶりで、自身の想いを伝えてくれた。
わたし自身も、クロの想いが十分に伝わったことを伝えたくて、
「わたしも、クロのお母さんと話せて楽しかったよ! もちろん、クロと色んなお話しが出来たこともね! 『今日は、お家にお邪魔させてもらって、ありがとうございました! 明日もよろしくお願いします』って、お母さんに伝えておいてくれない?」
と、伝言を託した。
すると、彼は、さわやかな笑顔で、
「あぁ、わかった! じゃ、また明日な! 良かったら、昼過ぎに来てくれ!」
そう言ったあと、自転車を方向転換し、手を振って、もと来た道を帰って行った。
司サンの質問に、
「はい! 自転車で五分~十分くらいです!」
と答えると、彼女は、
「そっか! それなら……竜司、あとでシロちゃんをお家まで送ってあげなさい」
と、息子に伝えた。
すると、クロも「わかった~!」と返事をする。
てっきり、母親の言葉に反発して、わたしを伯父夫婦宅まで送ることを渋ると思っていたのに、彼が、あっさりと、その提案を快諾したことを意外に感じつつ、焼き菓子と紅茶をいただく。
その後、司サンに薦められたマカロンを食べ終え、お家にお邪魔したことと、お菓子や紅茶をいただいたことに、お礼を言って席を立ったわたしに、クロも、
「じゃあ、送って行くよ」
と、言って立ち上がる。
「明日も待ってるからね!」
と言って、玄関先で見送ってくれた司さんに再度お礼を述べて、黒田家をあとにした。
伯父夫婦宅に向けて、自転車を漕ぎながら、すぐそばのクロに話しかける。
「クロ、送ってくれてありがとう」
自分の予想に反して、親切にしてくれたことに感謝すると、彼は、
「いや、もう少し、シロと二人で話しがしたかったからな……」
などと、一瞬ドキリとするようなことを言う。
こうして、伯父の家まで送ってくれていることと言い、立て続けに予想外の行動を取るクロに動揺しつつ、わたしは、自分の気持ちを悟られないようにしつつ、
「へ、へぇ~……クロは、わたしとどんな話しがしたかったの?」
と、たずねてみた。
すると、彼はほおをかきながら、その理由を語る。
「あぁ、母ちゃんが急に帰って来て、中途半端になってしまったけど……シロと、もう少し映画の話しがしたかった、って思ってさ……」
(なんだ、そういう話しか……)
二人で話しをしたい、などと意味深長なフレーズがでただけに、その理由に、ガッカリした。
それでも――――――。
先ほど、司サンがアップルパイの話しをした時と同じように、クロの好みを知っておきたい、という想いが同時に湧いてきたので、
「そっか~。クロは、どんな映画の話しがしたかったの?」
と、たずねてみた。
すると、彼はその質問を待っていたのか即答する。
「先月観た『クローバー・フィールド』って映画が、スゲ~面白くてさ~! シロに話したかったんだ」
「そうなの? 『クローバー・フィールド』……なんだか面白そうなタイトルの映画だね」
「あぁ! 面白いぜ! オープニングのアイデアがスゴくてさ~」
「そうなんだ! 今度、観てみようかな……」
そう返答すると、クロは、なおも熱く映画について語り続ける。
「あぁ、オススメするぜ! あと、さっき観てもらった『フェリスはある朝突然に』だけどさ……今度、日本でも公開される『デッドプール』って映画が、すごく影響を受けてるらしいんだ! エンドロールが終わってからも、お楽しみが残されてるらしくてさ……」
「クロは、映画を見終わってからも、エンドロールが終わるまで席を立たないタイプ?」
わたしは、気になることを聞いてみた。
「そうだな~。家で映画を観るときも、最後まで見ることが多いかな? シロは、どうなんだ?」
「わたしも! 最後まで見終わってから、一緒に観たヒトと『楽しかったね!』って、感想を言うのが好き!」
「そうそう! 全部、見終わってから、感想を言い合うのが楽しいんだよな!」
そんな会話をしていると、春休みの間、お世話になっている伯父夫婦の家が見えてきた。
「あ、もうすぐ伯父さんの家だ。ゴメンね、クロ……もう少し、お話しを聞きたかったけど……」
自転車を停めて、わたしが、そう言うと、彼は右手をブンブンと振りつつ、
「いや、イイって! こっちこそ、今日は、母ちゃんと色々話してくれて、ありがとう。ああ見えて、オレのこと、心配してるみたいだからさ……母ちゃんもシロと話せて楽しかったと思うんだ……」
司サンのことを考えながら話していることが伝わる口ぶりで、自身の想いを伝えてくれた。
わたし自身も、クロの想いが十分に伝わったことを伝えたくて、
「わたしも、クロのお母さんと話せて楽しかったよ! もちろん、クロと色んなお話しが出来たこともね! 『今日は、お家にお邪魔させてもらって、ありがとうございました! 明日もよろしくお願いします』って、お母さんに伝えておいてくれない?」
と、伝言を託した。
すると、彼は、さわやかな笑顔で、
「あぁ、わかった! じゃ、また明日な! 良かったら、昼過ぎに来てくれ!」
そう言ったあと、自転車を方向転換し、手を振って、もと来た道を帰って行った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる