47 / 331
第6章〜わたし以外との恋愛喜劇はゆるさないんだからね!〜⑧
しおりを挟む
そんな壮馬の苛立ちと、友人の手前、居心地の悪さを感じずにはいられないオレの心境に構うことなく、白草四葉は、
「あっ、そう言えば……」
と、軽く握った右手の拳を左手のひらに、小さく「ポンッ」と叩きつけ、なにかを思い出したかのように、たずねてきた。
「二人に聞きたいことがあったんだけど……この辺りで、まだ、桜が満開になっている場所を知らない?お花見の写真を《ミンスタ》にアップしようと思ってたんだけど、引っ越しとかで忙しくて、なかなか写真が撮れなかったんだ……」
この気まずい空気をかえられる――――――と感じ、オレはすぐに質問に反応した。
「ん? 花見の場所か……壮馬、確か祝川沿いの桜は、もう散ってたよな?」
「そうだね……市内で、まだ桜が残っている場所と言えば、このマンションの近所の茶屋さくら通りか、ヨットハーバーのあるマリナパークじゃないかな?」
こちらからの問いかけに壮馬も反応し、すぐに自身のスマホで検索を始める。
そして、「うん!」と確認するようにうなずいて、最新の情報が確認できるSNSの検索結果をオレたちに報告してくれた。
「ソメイヨシノの樹は、花が散り始めているみたいだけど、浜辺のオオシマザクラって品種はまだ満開で、桜のトンネルが見頃になってるみたいだよ!」
「ホントに!? じゃ、このあと、行ってみようかな?」
手を叩いて、喜びをあらわす白草の表情を見ながら、壮馬が提案する。
「竜司も、白草さんと一緒に行って来なよ? 芦宮駅からバスも出てるし、今からなら、少し寄り道しても、暗くなるまでに帰って来られるよ?」
親友の言葉に、
「ん? おまえは行かなくてイイのか?」
と、たずねると、
「ボクは、白草四葉センセイの講義録をまとめておくよ。あと、明日の桜花賞に備えて、今日のレースで馬場傾向を確認しておこうと思うから……」
壮馬はそう答えて、オレたちと一緒に出掛けることを、やんわりと断った。
何事も効率を優先する壮馬は、この時間を使って、白草が今日これまでに語ったことと、今後の計画について、文書にまとめておこうと考えているのだろう。
あるいは、春休み中に再生回数を伸ばしたゲーム解説動画が、作品ユーザーの動向から見て、そろそろ頭打ちになるだろう、と言っていたので、(未成年のため、馬券を購入するわけではないが)動画の主要コンテンツを競馬予想に切り替えるための準備を始めようと計画している、という可能性もある。
しかし、それ以上に――――――。
つい先ほども目撃したように、いまのような白草との会話(じゃれ合いと見られても仕方ない)を、これ以上見せつけられては、たまらない――――――というのが、この親友の本音かも知れない。
(少なくとも、オレなら、最後の理由で目の前の男女を追い払おうとするだろう)
本心を悟られないようにしているのか、張り付いたような笑顔で外出を薦めてくる壮馬に対して、白草四葉は、この日、一番うれしそうな表情と大きなリアクションで応じた。
「ホントに!? ありがとう!!」
さらに、オレが気を遣いながら、
「イイのか、壮馬……? もし、これから先、オレに出来る仕事がなんでも振ってくれ」
と、友人の申し出に応えると、
「気遣いのできる男子はモテるよ、黄瀬クン! 誰かサンと違ってね……」
白草は、壮馬とオレの顔を交互に眺めながら、クスクスと笑う。
その仕草に、「なんだよ……」と、顔をしかめると、いよいよ、親友の表情は、
(だから、『そういうトコロだ!』って言ってるだろ!? 二人とも!!)
と、口には出さないが、こめかみに青筋があらわれるまでになっている。
そして、微苦笑を称えたままの親友は、
「いや……白草さん、ボクは竜司と違って、そういうの求めてないから……それじゃ、二人で桜を楽しんできてね! 邪魔者は、《編集スタジオ》で作業に戻るよ」
そう言い残して、腰をあげた。
「スマンな、壮馬……帰る時には、連絡するから」
オレが、返答すると、白草が気味の悪いことを口にした。
「ふ~ん、二人とも、やっぱり仲が良いんだね……なんだか、夫婦みたい」
そのつぶやきには、
「「冗談じゃない!!」」
と、中学生時代に、黒と黄の《警戒色コンビ》と呼ばれたオレたちの声が重なった。
「あっ、そう言えば……」
と、軽く握った右手の拳を左手のひらに、小さく「ポンッ」と叩きつけ、なにかを思い出したかのように、たずねてきた。
「二人に聞きたいことがあったんだけど……この辺りで、まだ、桜が満開になっている場所を知らない?お花見の写真を《ミンスタ》にアップしようと思ってたんだけど、引っ越しとかで忙しくて、なかなか写真が撮れなかったんだ……」
この気まずい空気をかえられる――――――と感じ、オレはすぐに質問に反応した。
「ん? 花見の場所か……壮馬、確か祝川沿いの桜は、もう散ってたよな?」
「そうだね……市内で、まだ桜が残っている場所と言えば、このマンションの近所の茶屋さくら通りか、ヨットハーバーのあるマリナパークじゃないかな?」
こちらからの問いかけに壮馬も反応し、すぐに自身のスマホで検索を始める。
そして、「うん!」と確認するようにうなずいて、最新の情報が確認できるSNSの検索結果をオレたちに報告してくれた。
「ソメイヨシノの樹は、花が散り始めているみたいだけど、浜辺のオオシマザクラって品種はまだ満開で、桜のトンネルが見頃になってるみたいだよ!」
「ホントに!? じゃ、このあと、行ってみようかな?」
手を叩いて、喜びをあらわす白草の表情を見ながら、壮馬が提案する。
「竜司も、白草さんと一緒に行って来なよ? 芦宮駅からバスも出てるし、今からなら、少し寄り道しても、暗くなるまでに帰って来られるよ?」
親友の言葉に、
「ん? おまえは行かなくてイイのか?」
と、たずねると、
「ボクは、白草四葉センセイの講義録をまとめておくよ。あと、明日の桜花賞に備えて、今日のレースで馬場傾向を確認しておこうと思うから……」
壮馬はそう答えて、オレたちと一緒に出掛けることを、やんわりと断った。
何事も効率を優先する壮馬は、この時間を使って、白草が今日これまでに語ったことと、今後の計画について、文書にまとめておこうと考えているのだろう。
あるいは、春休み中に再生回数を伸ばしたゲーム解説動画が、作品ユーザーの動向から見て、そろそろ頭打ちになるだろう、と言っていたので、(未成年のため、馬券を購入するわけではないが)動画の主要コンテンツを競馬予想に切り替えるための準備を始めようと計画している、という可能性もある。
しかし、それ以上に――――――。
つい先ほども目撃したように、いまのような白草との会話(じゃれ合いと見られても仕方ない)を、これ以上見せつけられては、たまらない――――――というのが、この親友の本音かも知れない。
(少なくとも、オレなら、最後の理由で目の前の男女を追い払おうとするだろう)
本心を悟られないようにしているのか、張り付いたような笑顔で外出を薦めてくる壮馬に対して、白草四葉は、この日、一番うれしそうな表情と大きなリアクションで応じた。
「ホントに!? ありがとう!!」
さらに、オレが気を遣いながら、
「イイのか、壮馬……? もし、これから先、オレに出来る仕事がなんでも振ってくれ」
と、友人の申し出に応えると、
「気遣いのできる男子はモテるよ、黄瀬クン! 誰かサンと違ってね……」
白草は、壮馬とオレの顔を交互に眺めながら、クスクスと笑う。
その仕草に、「なんだよ……」と、顔をしかめると、いよいよ、親友の表情は、
(だから、『そういうトコロだ!』って言ってるだろ!? 二人とも!!)
と、口には出さないが、こめかみに青筋があらわれるまでになっている。
そして、微苦笑を称えたままの親友は、
「いや……白草さん、ボクは竜司と違って、そういうの求めてないから……それじゃ、二人で桜を楽しんできてね! 邪魔者は、《編集スタジオ》で作業に戻るよ」
そう言い残して、腰をあげた。
「スマンな、壮馬……帰る時には、連絡するから」
オレが、返答すると、白草が気味の悪いことを口にした。
「ふ~ん、二人とも、やっぱり仲が良いんだね……なんだか、夫婦みたい」
そのつぶやきには、
「「冗談じゃない!!」」
と、中学生時代に、黒と黄の《警戒色コンビ》と呼ばれたオレたちの声が重なった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる