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第6章〜わたし以外との恋愛喜劇はゆるさないんだからね!〜②
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「でも、パスタだけじゃなくて、オードブル的なモノまで作れるなんて……黒田クン、腕をあげたね!!」
あらためて料理に目を向けた四葉が声を掛けると、
「あ~、その前菜二品は、テイクアウトしてきたモノだ……ウチのマンションの向かいにあるケーキショップは、オレの母親の行きつけのフレンチレストランの系列店なんだ! で、そのショップでも、レストランのオードブルやメインディッシュが買えるんだぜ。珍しいだろ?」
と、竜司は楽しげに説明する。
「そうなんだ……けど、このパスタは、黒田クンが作ったんだよね? とっても、美味しいよ! うん、やっぱり『お婿さん検定』合格だね」
「おう! 隠し味に白ワインとコンソメでベーコンとナスを炒めてるからな! ……って、だから、その『お婿さん検定』って、なんなんだよ!」
自分の発言にノリ良くツッコミを入れる竜司のようすに、クスクスと楽しそうに笑った。
「まぁ、白草の意図はともかく、ほめ言葉として受け取ることにしとくよ」
自嘲めいた口調で応じる竜司。
「これからの時代、胃袋を掴んで異性を虜にするのは、男子にも求められるスキルかもよ~。もっとも、黒田クンのご飯を食べてくれるくらい親しくなれる女子がいれば、だけどね~」
からかうような口調で煽る四葉に、竜司は余裕の表情で返答する。
「そのための白草センセイのアドバイスじゃないのか? 今回の御礼に、昼食だけでなく、惣菜と同じ店のケーキをティータイム用に買っておいたんだが……白草センセイには必要なかったか……」
ここで、ため息を一つついて、殊勝なようすで、こう付け加えた。
「ここの本店のスイーツは、料理と同じくらい評判が良いんだけどな……やっぱり、女子はカロリーが気になったりするもんな。今後は、もっと、気を使えるように注意するよ」
「ちょっと! 誰も食べないなんて、言ってないでしょ!?」
反対に、恋愛アドバイザーは、断固抗議の声を上げる。
(二人とも、知り合ったばかりなのに、仲が良いね~)
茶化すような言葉を口にすることで、目の前の男女の口数が余計に増えるであろうと予測した壮馬は、やぶ蛇を突かないように注意し、無言のまま、あっという間にパスタを平らげて、サラダとマリネを交互に口に運んだ。
和やかな雰囲気の昼食が終わったあと、食事などの後片付けをする竜司を残し、壮馬と四葉は、《編集スタジオ》に戻り、二人は、四葉からの提案について、軽く協議することにした。
「当日は、講堂に大型スクリーンが用意されるから、この動画を背景に使うのはどう? 音源もコッチで用意しておくよ」
「イイ映像ね! ありがとう! じゃ、あとの連絡はLANEでしよっか? 黄瀬クン、アカウント交換しない?」
「いいよ」
そう言って、二人は共通のOSを使っているスマホを取り出して、アプリの《友だち追加》の項目にある「ふるふる」ボタンをタップして端末をシェイクし、IDの交換を行う。
二人がアプリのID交換を終えて、メッセージを送り合うと、食器の洗浄など昼食の後片付けを終えた竜司が《編集スタジオ》に戻って来た。
四葉は、竜司にもLANEのID交換を持ち掛けて、了承を得る。
二人のメッセージ交換が終わると、白草四葉の『恋愛予備校』午後の部が開始された。
「さて、午前中は、ロールプレイングを含んだ実践例までを講義してきたワケだけど……午後は、いよいよ仕上げの作業と具体的な告白の仕方を解説させてもらおうかな?」
カリスマ講師が、午後の講義の方針説明を行うと、向学心旺盛な学生のように前のめりになった竜司が、質問する。
「仕上げの作業と告白の仕方の説明に入るってことは……午前中の内容を実行できたら、紅野との仲は、ある程度のトコロまで来ている、と考えてイイのか?」
「そう考えてもらって問題ないかな? もともと、黒田クンは紅野サンと、それなりに仲が良かった、ってコトが一番の大きな理由だけど……最初に言ったとおり、告白に失敗して、ギクシャクしてしまいそうな関係を元のカタチに戻しさえすれば、二人の関係を進展させるのに、そんなに大きな問題は無いと思うな」
これまでになく、竜司を肯定する四葉の回答に、「そ、そうか……」と、彼は照れながら返答した。
そして、講師役の彼女は、そんな生徒の顔色を表情ひとつ変えずに眺めながら、こう断言する。
「だから、ここまでの段階で準備が整ったら、最後のひと押しとして、恋愛にとって、重要なスパイスを用意しよう!」
「重要なスパイス?」
「そう! 黒田クンの得意な料理にだって、隠し味が必要でしょ? 恋愛において、重要なスパイスは、なんだかわかる?」
講師の質問に、
「う~ん……恋愛に必要なスパイス???」
と、頭をひねる竜司。
そんな友人のようすをよそに、例のごとく、四葉の講義が始まると同時にクロームブックを取り出し、講義録を作成していた壮馬が、手をあげた。
「ちょっとイイかな? それって、ジェラシー=『嫉妬』のこと?」
外部聴講生と言って良い生徒の回答に、
「さっすが、黄瀬クン! 大正解!」
と、講師は「はなまるをあげましょう!」とばかりに、ほめ称える。
「そんな……色恋沙汰で、壮馬に、先を越された、だと……」
オレンジ色に髪を染めた死神代行のようなセリフ回しでショックを表現する竜司に、壮馬は、ややムスッとした表情で答えた。
「ナニ、失礼なコト言ってくれてんの? まぁ、今のは、《恋愛 スパイス》って、キーワードを入れて、ググった結果から、それっぽい単語を答えただけなんだけどね。検索結果には、『背徳感』って言葉も出てきたけど、今までの会話の流れからして、コッチの方が相応しいかな、って……」
「会話の流れや空気を読めるトコロからも、誰かさんより外部聴講生の黄瀬クンの方が優秀そうね」
カリスマ講師は、ニッコリと笑って、生徒に感想を伝える。
「壮馬のは、半分カンニングみたいなモンじゃね~かよ!?」
抗議の声をあげる竜司に、壮馬は
「情報を制する者は世界を制する――――――だよ」
と言って、ニヤリと笑った。
あらためて料理に目を向けた四葉が声を掛けると、
「あ~、その前菜二品は、テイクアウトしてきたモノだ……ウチのマンションの向かいにあるケーキショップは、オレの母親の行きつけのフレンチレストランの系列店なんだ! で、そのショップでも、レストランのオードブルやメインディッシュが買えるんだぜ。珍しいだろ?」
と、竜司は楽しげに説明する。
「そうなんだ……けど、このパスタは、黒田クンが作ったんだよね? とっても、美味しいよ! うん、やっぱり『お婿さん検定』合格だね」
「おう! 隠し味に白ワインとコンソメでベーコンとナスを炒めてるからな! ……って、だから、その『お婿さん検定』って、なんなんだよ!」
自分の発言にノリ良くツッコミを入れる竜司のようすに、クスクスと楽しそうに笑った。
「まぁ、白草の意図はともかく、ほめ言葉として受け取ることにしとくよ」
自嘲めいた口調で応じる竜司。
「これからの時代、胃袋を掴んで異性を虜にするのは、男子にも求められるスキルかもよ~。もっとも、黒田クンのご飯を食べてくれるくらい親しくなれる女子がいれば、だけどね~」
からかうような口調で煽る四葉に、竜司は余裕の表情で返答する。
「そのための白草センセイのアドバイスじゃないのか? 今回の御礼に、昼食だけでなく、惣菜と同じ店のケーキをティータイム用に買っておいたんだが……白草センセイには必要なかったか……」
ここで、ため息を一つついて、殊勝なようすで、こう付け加えた。
「ここの本店のスイーツは、料理と同じくらい評判が良いんだけどな……やっぱり、女子はカロリーが気になったりするもんな。今後は、もっと、気を使えるように注意するよ」
「ちょっと! 誰も食べないなんて、言ってないでしょ!?」
反対に、恋愛アドバイザーは、断固抗議の声を上げる。
(二人とも、知り合ったばかりなのに、仲が良いね~)
茶化すような言葉を口にすることで、目の前の男女の口数が余計に増えるであろうと予測した壮馬は、やぶ蛇を突かないように注意し、無言のまま、あっという間にパスタを平らげて、サラダとマリネを交互に口に運んだ。
和やかな雰囲気の昼食が終わったあと、食事などの後片付けをする竜司を残し、壮馬と四葉は、《編集スタジオ》に戻り、二人は、四葉からの提案について、軽く協議することにした。
「当日は、講堂に大型スクリーンが用意されるから、この動画を背景に使うのはどう? 音源もコッチで用意しておくよ」
「イイ映像ね! ありがとう! じゃ、あとの連絡はLANEでしよっか? 黄瀬クン、アカウント交換しない?」
「いいよ」
そう言って、二人は共通のOSを使っているスマホを取り出して、アプリの《友だち追加》の項目にある「ふるふる」ボタンをタップして端末をシェイクし、IDの交換を行う。
二人がアプリのID交換を終えて、メッセージを送り合うと、食器の洗浄など昼食の後片付けを終えた竜司が《編集スタジオ》に戻って来た。
四葉は、竜司にもLANEのID交換を持ち掛けて、了承を得る。
二人のメッセージ交換が終わると、白草四葉の『恋愛予備校』午後の部が開始された。
「さて、午前中は、ロールプレイングを含んだ実践例までを講義してきたワケだけど……午後は、いよいよ仕上げの作業と具体的な告白の仕方を解説させてもらおうかな?」
カリスマ講師が、午後の講義の方針説明を行うと、向学心旺盛な学生のように前のめりになった竜司が、質問する。
「仕上げの作業と告白の仕方の説明に入るってことは……午前中の内容を実行できたら、紅野との仲は、ある程度のトコロまで来ている、と考えてイイのか?」
「そう考えてもらって問題ないかな? もともと、黒田クンは紅野サンと、それなりに仲が良かった、ってコトが一番の大きな理由だけど……最初に言ったとおり、告白に失敗して、ギクシャクしてしまいそうな関係を元のカタチに戻しさえすれば、二人の関係を進展させるのに、そんなに大きな問題は無いと思うな」
これまでになく、竜司を肯定する四葉の回答に、「そ、そうか……」と、彼は照れながら返答した。
そして、講師役の彼女は、そんな生徒の顔色を表情ひとつ変えずに眺めながら、こう断言する。
「だから、ここまでの段階で準備が整ったら、最後のひと押しとして、恋愛にとって、重要なスパイスを用意しよう!」
「重要なスパイス?」
「そう! 黒田クンの得意な料理にだって、隠し味が必要でしょ? 恋愛において、重要なスパイスは、なんだかわかる?」
講師の質問に、
「う~ん……恋愛に必要なスパイス???」
と、頭をひねる竜司。
そんな友人のようすをよそに、例のごとく、四葉の講義が始まると同時にクロームブックを取り出し、講義録を作成していた壮馬が、手をあげた。
「ちょっとイイかな? それって、ジェラシー=『嫉妬』のこと?」
外部聴講生と言って良い生徒の回答に、
「さっすが、黄瀬クン! 大正解!」
と、講師は「はなまるをあげましょう!」とばかりに、ほめ称える。
「そんな……色恋沙汰で、壮馬に、先を越された、だと……」
オレンジ色に髪を染めた死神代行のようなセリフ回しでショックを表現する竜司に、壮馬は、ややムスッとした表情で答えた。
「ナニ、失礼なコト言ってくれてんの? まぁ、今のは、《恋愛 スパイス》って、キーワードを入れて、ググった結果から、それっぽい単語を答えただけなんだけどね。検索結果には、『背徳感』って言葉も出てきたけど、今までの会話の流れからして、コッチの方が相応しいかな、って……」
「会話の流れや空気を読めるトコロからも、誰かさんより外部聴講生の黄瀬クンの方が優秀そうね」
カリスマ講師は、ニッコリと笑って、生徒に感想を伝える。
「壮馬のは、半分カンニングみたいなモンじゃね~かよ!?」
抗議の声をあげる竜司に、壮馬は
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