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第4章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・発展〜④
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「あと、月曜日だっけ? 白草さんに校内を案内してくれたのも、黒田くんだよね? 私もそうだけど、クラス委員としての黒田くんは、頼り甲斐があるなって、谷崎先生も思ってるんじゃないかな」
紅野の発言に心臓の高鳴りを感じたのは、言うまでもなく、彼女の発言には、我らが恋愛アドバイザーから、週末にレクチャーされた言葉が含まれていたからだ。
「そ、そんなに頼りになるかな、オレ……?」
思わず頬がゆるんでしまいそうになるのを必死でこらえながら、クラス委員のパートナーにたずねる。すると、彼女は
「うん! 私が部活の練習に専念したい、ってことを相談した時も、すぐに、委員の仕事を引き受けてくれるって言ってくれたし……本当なら、白草さんの校内案内も、女子の私がするべきだったよね……ほんと、色々と黒田くんに頼りきりになってしまってゴメン」
そう言って、両手の手のひらを顔の前でパチンと合わせ、可愛らしく片目を閉じた。
普段は見せないような愛嬌のあるその仕草に、魅入られてしまうように、言葉を発っすることができないでいると、責任感の強い優等生は、
「部活の方が一段落したら、これまでクラス委員の仕事を色々としてもらっている分の埋め合わせはさせてもらうから……」
と、申し出る。彼女から示されたその提案に、不意にこんな言葉が口をついた。
「い、いや……いいよ! 埋め合わせなんて、考えてくれなくても……こっちが言い出したことだし……それに、去年からクラス委員を務めさせてもらって、オレは、こうして紅野と一緒に仕事をするのが楽しいなって思ってるから……」
「楽しい? 私とクラス委員の仕事をすることが……?」
思いもよらず口にしてしまった言葉に、今度は彼女がたずね返してきた。
「あっ、その……なんて言うか、紅野とクラス委員の仕事をしてる時って、時間が経つのが早く感じるって言うか……いや、単純にオレの仕事の手際が良くないからかも知れないケド……って、ナニ言ってんだろ、オレ……」
意図せずに口走ってしまった発言を取り繕うように、最後は、シドロモドロになりながら……。なんとか理由をつけて説明すると、クラス委員のパートナーは、うつむき加減で、
「そう、なんだ……」
と、少し照れたように、つぶやいた。
そして、
「でも、黒田くんにそう言ってもらえると、嬉しいな」
と、付け加える。
(いやいや! 嬉しいのは、こっちの方だよ‼)
思わず、率直な感想が口を付きそうになるが、紅野を驚かせてはいけない、と自重する。
「そ、そうか……それなら、良かった……」
と、無難ながら、意味のあるような無いようなあいまいな言葉を述べて、自分の気持ちの高ぶりを悟られないように、気をつかう。
「…………」
「…………」
気まずい、といったネガティブなモノではなく、なんとなく面映いような、あるいは背中がくすぐったくなるような、静かな沈黙が二人の間に流れたあと、ハタと気付く。
彼女には、放課後にクラリネットのソロ・パート練習という日課があったということに――――――。
「そ、そうだ、紅野! 楽器……楽器の練習は良いのか!?」
声が上ずってしまったことに、赤面しそうになりながらも、吹奏楽部のソリストに確認を行う。
「あっ……! そ、そうだね‼そろそろ、練習に行かないと……」
そう言って、彼女は通学カバンなどを整理し、アタフタと教室を出る準備を始めた。
「ごめんね! 今日も、黒田くんに仕事を任せっきりで……」
筆記用具などをカバンに詰めながら、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした紅野に、オレは、なるべく、さわやかに聞こえるように応じる。
「いや、気にするな! 部活の方の負担が減ったら、また、一緒に委員の仕事をしてくれたらイイから……」
「ありがとう! じゃ、また明日ね‼」
ニッコリと微笑んだあと、彼女は教室を飛び出し、音楽室のある芸術棟に向かって駆けて行った。
紅野アザミが去ったあと、教室に残り、先ほどまでの彼女との会話を思い出すと、ひとりでに笑みがこぼれてきた。
(あれ!? もしかして、紅野とイイ雰囲気になんじゃね~の、コレ……)
口にこそ出さないものの、内心でそんなことを考えながら、あらためて、白草四葉のアドバイスの的確さに驚かされる。
彼女から出された課題は、まだ、第二段階であり、この先もいくつかクリアしなければならないミッションがあるはずだ。だが、今の時点でも、紅野との関係性について、かなりの手応えを感じることができる。
三週間ほど前、(いま思えば)無謀にも紅野アザミに告白を敢行し、玉砕してしまった自分が、短期間で、これほど彼女との心理的距離を近づけることが出来るようになるとは思ってもみなかった。
もちろん、春休み中に演じた失態から学んだように、あせらず、調子に乗ることなく、慎重にコトを進めなければならないことは理解しているが――――――。
恋愛アドバイザー、および『超恋愛学』のカリスマ講師を自称した彼女の助言によって、紅野との仲が進展しつつあることだけは間違いない、と感じるのだ。
SNS上で見せる、万人に愛想を振りまく様子とは違い、自分と壮馬の前では、口の悪さを隠さない白草四葉(特にオレに対しては……)だが、彼女の恋愛全般に対する見解には、全面的に信頼を置いて良い、と思う。
教え子として、信頼に足る講師役に巡り会えたことに感謝しつつ、数週間前に、自らの想いを告げた相手との気持ちが通じ合っているのではないか――――――。
そう実感できることに、オレは、この時、間違いなく喜びを感じていた。
紅野の発言に心臓の高鳴りを感じたのは、言うまでもなく、彼女の発言には、我らが恋愛アドバイザーから、週末にレクチャーされた言葉が含まれていたからだ。
「そ、そんなに頼りになるかな、オレ……?」
思わず頬がゆるんでしまいそうになるのを必死でこらえながら、クラス委員のパートナーにたずねる。すると、彼女は
「うん! 私が部活の練習に専念したい、ってことを相談した時も、すぐに、委員の仕事を引き受けてくれるって言ってくれたし……本当なら、白草さんの校内案内も、女子の私がするべきだったよね……ほんと、色々と黒田くんに頼りきりになってしまってゴメン」
そう言って、両手の手のひらを顔の前でパチンと合わせ、可愛らしく片目を閉じた。
普段は見せないような愛嬌のあるその仕草に、魅入られてしまうように、言葉を発っすることができないでいると、責任感の強い優等生は、
「部活の方が一段落したら、これまでクラス委員の仕事を色々としてもらっている分の埋め合わせはさせてもらうから……」
と、申し出る。彼女から示されたその提案に、不意にこんな言葉が口をついた。
「い、いや……いいよ! 埋め合わせなんて、考えてくれなくても……こっちが言い出したことだし……それに、去年からクラス委員を務めさせてもらって、オレは、こうして紅野と一緒に仕事をするのが楽しいなって思ってるから……」
「楽しい? 私とクラス委員の仕事をすることが……?」
思いもよらず口にしてしまった言葉に、今度は彼女がたずね返してきた。
「あっ、その……なんて言うか、紅野とクラス委員の仕事をしてる時って、時間が経つのが早く感じるって言うか……いや、単純にオレの仕事の手際が良くないからかも知れないケド……って、ナニ言ってんだろ、オレ……」
意図せずに口走ってしまった発言を取り繕うように、最後は、シドロモドロになりながら……。なんとか理由をつけて説明すると、クラス委員のパートナーは、うつむき加減で、
「そう、なんだ……」
と、少し照れたように、つぶやいた。
そして、
「でも、黒田くんにそう言ってもらえると、嬉しいな」
と、付け加える。
(いやいや! 嬉しいのは、こっちの方だよ‼)
思わず、率直な感想が口を付きそうになるが、紅野を驚かせてはいけない、と自重する。
「そ、そうか……それなら、良かった……」
と、無難ながら、意味のあるような無いようなあいまいな言葉を述べて、自分の気持ちの高ぶりを悟られないように、気をつかう。
「…………」
「…………」
気まずい、といったネガティブなモノではなく、なんとなく面映いような、あるいは背中がくすぐったくなるような、静かな沈黙が二人の間に流れたあと、ハタと気付く。
彼女には、放課後にクラリネットのソロ・パート練習という日課があったということに――――――。
「そ、そうだ、紅野! 楽器……楽器の練習は良いのか!?」
声が上ずってしまったことに、赤面しそうになりながらも、吹奏楽部のソリストに確認を行う。
「あっ……! そ、そうだね‼そろそろ、練習に行かないと……」
そう言って、彼女は通学カバンなどを整理し、アタフタと教室を出る準備を始めた。
「ごめんね! 今日も、黒田くんに仕事を任せっきりで……」
筆記用具などをカバンに詰めながら、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした紅野に、オレは、なるべく、さわやかに聞こえるように応じる。
「いや、気にするな! 部活の方の負担が減ったら、また、一緒に委員の仕事をしてくれたらイイから……」
「ありがとう! じゃ、また明日ね‼」
ニッコリと微笑んだあと、彼女は教室を飛び出し、音楽室のある芸術棟に向かって駆けて行った。
紅野アザミが去ったあと、教室に残り、先ほどまでの彼女との会話を思い出すと、ひとりでに笑みがこぼれてきた。
(あれ!? もしかして、紅野とイイ雰囲気になんじゃね~の、コレ……)
口にこそ出さないものの、内心でそんなことを考えながら、あらためて、白草四葉のアドバイスの的確さに驚かされる。
彼女から出された課題は、まだ、第二段階であり、この先もいくつかクリアしなければならないミッションがあるはずだ。だが、今の時点でも、紅野との関係性について、かなりの手応えを感じることができる。
三週間ほど前、(いま思えば)無謀にも紅野アザミに告白を敢行し、玉砕してしまった自分が、短期間で、これほど彼女との心理的距離を近づけることが出来るようになるとは思ってもみなかった。
もちろん、春休み中に演じた失態から学んだように、あせらず、調子に乗ることなく、慎重にコトを進めなければならないことは理解しているが――――――。
恋愛アドバイザー、および『超恋愛学』のカリスマ講師を自称した彼女の助言によって、紅野との仲が進展しつつあることだけは間違いない、と感じるのだ。
SNS上で見せる、万人に愛想を振りまく様子とは違い、自分と壮馬の前では、口の悪さを隠さない白草四葉(特にオレに対しては……)だが、彼女の恋愛全般に対する見解には、全面的に信頼を置いて良い、と思う。
教え子として、信頼に足る講師役に巡り会えたことに感謝しつつ、数週間前に、自らの想いを告げた相手との気持ちが通じ合っているのではないか――――――。
そう実感できることに、オレは、この時、間違いなく喜びを感じていた。
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