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第3章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・基礎〜④
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4月11日(月)
週明けの月曜日――――――。
土曜日の午前中から、白草四葉のレクチャーをみっちりと受けたオレは、彼女が語った『最初に取るべき行動』に関する内容を頭のなかで整理しながら、一日を過ごしていた。
教職員の離任式や対面式、春休みの課題考査など新学期らしい重要イベントがあったような気がするのだが……。
いずれも上の空に近い状態の中で時間が過ぎて行ってしまったため、まともに記憶に残っていない(課題考査の結果については、考えないことにした)。
こんな風に、午前中の時間を過ごしてしまったのは、自称・恋愛アドバイザーが、週明けに達成するべきタスクを課してきたからだ。
白草四葉は、今回の企画の最初のミッションとして、こんな課題を提示してきた。
「今回みたいなケースの場合、黒田クンが、最初にするべきことは、紅野サンとの関係を再構築すること」
「まずは、春休み前に、彼女の気持ちを考えずに、急に告白したこと、それから、出来れば動画の件について、キッチリと謝罪しておいてね」
「そして、最後に『これからも、クラスメートとして、委員の仕事を一緒に行う共同作業者として、変わらずに接してもらいたい』と告げること」
先週末の始業式当日は、よりによって、紅野アザミと同じクラスで同じ委員を任されるという最悪の事態に遭遇しながらも、なんとか平穏に過ごすことができたが……。
二年のクラスになって、教室の座席が離れたとは言え、クラス委員として、ともに仕事をしていく上で、会話を交わさないということはあり得ない。
白草の助言の有無に関わらず、少しでも早く紅野との関係を以前と同じように、気さくに語り合える仲に戻すのが必要であることくらい、頭では理解できている。
しかし――――――。
いざとなると、二週間前、彼女に告白をした時以上の緊張感を覚えている自分に気付いた。
(このままじゃダメなことは、わかっているが……)
(なにせ、一度、告白に失敗しているからなぁ……)
白草から与えられたミッションと春休み前の失態による煩悶の板挟みに合いながら、進路希望調査と、前年度の成績および課題考査の結果を元にした進路相談に関するアンケートを収集するというクラス委員の仕事をユリちゃん先生に任されたオレと紅野アザミは、今日も放課後に二人して教室に居残りをしている。
(さて、どうやって、この問題を切り出すべきか……)
そんなことを延々と考えていると、紅野の方から話しかけてきた。
「ねぇ、黒田くん……金曜日にも言ったかもだけど、また、同じ委員の仕事になったね」
不意を突かれたようなカタチになり、「あ、あぁ、そうだな……」と、上ずった声で相槌を返すことになってしまったが、
(せっかく、紅野から話しかけて来てくれたんだ……この機会に、伝えておくか)
そう思い直し、思い切って、「そのこと、なんだけどさ……」と、懸案の問題を切り出す。紅野アザミは、少し小首をかしげたような仕草で、こちらの言葉を待ってくれているようだ。
「春休みの直前に、紅野と二人になった時にオレが言ったことなんだけど……紅野の気持ちを考えずに、一方的に自分の気持ちを押し付けるカタチになって、本当に申し訳なかった……あのあと、紅野が残してくれたメモを見て考え直したんだ」
慎重に言葉を選びながら、紅野に対する今の自分の気持を伝える。
「随分、自分勝手なコトをしてしまったなって……あんな情けないトコロを見せてしまったうえで、言えるコトじゃないかも知れないが……これからも、クラスメートとして、クラス委員の仕事を一緒にするペアとして、一年の時と変わらずに接してもらえると嬉しい」
なるべく、早口にならないように気をつけながらも、一気にそこまで話し終えた。
こちらの言葉に、彼女はどんな反応を示すのだろう――――――。
緊張で、脇から汗が伝うのが感じられる。
すると、紅野は、少し目線を下げ、かわいく作った拳を口元に当てながら、「フッ」と、柔らかな笑みを見せ、つぶやくように語った。
「あっ、ゴメンね! 黒田くんが、あまりに真剣な表情だったから……だって、春休みの前の時よりも、緊張してるみたいなんだもの……でも、ありがとう」
彼女の口からこぼれた感謝を意味する言葉に、不思議そうな表情をしたためだろうか、紅野アザミは、言葉を付け足す。
「あ、『ありがとう』っていうのは、ちゃんと、私のコトを考えてくれていたんだな、ってわかったから……私の方も、キッチリと返事ができた訳じゃなかったから、どうしようかな、って悩んでたんだ……」
紅野は、そう言って、少しだけ顔を伏せた後、もう一度、こちらに視線を向ける。
「でも、黒田くんからそんな風に言ってもらえて、気持ちがスゴく楽になった。だから、『ありがとう』って、伝えたいなって……」
微かに、はにかみながら語るクラスメートの表情は、クラス委員として、教師とクラスの連中から信頼されている紅野アザミとしてのものとは、少しだけ違って見えた。
その仕草と表情には、オレの鼓動を早める効果があったが、そのことは、なるべく顔色に出さないように努めて、
「オレの方こそ、そう言ってもらえると助かる。ありがとう」
と、感謝の気持だけは素直に伝えたあと、もう一つ、謝罪しておかなければならない点について、再び切り出す。
「あと、もしかしたら、紅野もすでに知っているかもしれないが……オレは、春休み中に、自分たちのアカウントで、自分が失恋したことを語る動画をアゲてしまった。本当に申し訳ない」
目の前の彼女に対して、深々と頭を下げる。
「動画は、削除しているけど、校内でも視聴している人間がいると思う。もちろん、動画の中で、紅野の名前を出したりはしていないが……もし、このことで、紅野が、なにか言われるようなことがあったら、すべてオレの責任だ! だから、問題が起こったら、すぐに言ってくれないか? 自分が出来る限りのことをさせてもらうから……」
最初の問題は自分と紅野の二人で解決すべき内容だが、こちらは、第三者が絡んで来る可能性のある問題だ。さらに、この件で、彼女を巻き込んでしまったことは、完全に自分たちの落ち度だ。そのためか、さきほどまでとは変わって、紅野は伏し目がちになり、表情も曇ったものになる。
週明けの月曜日――――――。
土曜日の午前中から、白草四葉のレクチャーをみっちりと受けたオレは、彼女が語った『最初に取るべき行動』に関する内容を頭のなかで整理しながら、一日を過ごしていた。
教職員の離任式や対面式、春休みの課題考査など新学期らしい重要イベントがあったような気がするのだが……。
いずれも上の空に近い状態の中で時間が過ぎて行ってしまったため、まともに記憶に残っていない(課題考査の結果については、考えないことにした)。
こんな風に、午前中の時間を過ごしてしまったのは、自称・恋愛アドバイザーが、週明けに達成するべきタスクを課してきたからだ。
白草四葉は、今回の企画の最初のミッションとして、こんな課題を提示してきた。
「今回みたいなケースの場合、黒田クンが、最初にするべきことは、紅野サンとの関係を再構築すること」
「まずは、春休み前に、彼女の気持ちを考えずに、急に告白したこと、それから、出来れば動画の件について、キッチリと謝罪しておいてね」
「そして、最後に『これからも、クラスメートとして、委員の仕事を一緒に行う共同作業者として、変わらずに接してもらいたい』と告げること」
先週末の始業式当日は、よりによって、紅野アザミと同じクラスで同じ委員を任されるという最悪の事態に遭遇しながらも、なんとか平穏に過ごすことができたが……。
二年のクラスになって、教室の座席が離れたとは言え、クラス委員として、ともに仕事をしていく上で、会話を交わさないということはあり得ない。
白草の助言の有無に関わらず、少しでも早く紅野との関係を以前と同じように、気さくに語り合える仲に戻すのが必要であることくらい、頭では理解できている。
しかし――――――。
いざとなると、二週間前、彼女に告白をした時以上の緊張感を覚えている自分に気付いた。
(このままじゃダメなことは、わかっているが……)
(なにせ、一度、告白に失敗しているからなぁ……)
白草から与えられたミッションと春休み前の失態による煩悶の板挟みに合いながら、進路希望調査と、前年度の成績および課題考査の結果を元にした進路相談に関するアンケートを収集するというクラス委員の仕事をユリちゃん先生に任されたオレと紅野アザミは、今日も放課後に二人して教室に居残りをしている。
(さて、どうやって、この問題を切り出すべきか……)
そんなことを延々と考えていると、紅野の方から話しかけてきた。
「ねぇ、黒田くん……金曜日にも言ったかもだけど、また、同じ委員の仕事になったね」
不意を突かれたようなカタチになり、「あ、あぁ、そうだな……」と、上ずった声で相槌を返すことになってしまったが、
(せっかく、紅野から話しかけて来てくれたんだ……この機会に、伝えておくか)
そう思い直し、思い切って、「そのこと、なんだけどさ……」と、懸案の問題を切り出す。紅野アザミは、少し小首をかしげたような仕草で、こちらの言葉を待ってくれているようだ。
「春休みの直前に、紅野と二人になった時にオレが言ったことなんだけど……紅野の気持ちを考えずに、一方的に自分の気持ちを押し付けるカタチになって、本当に申し訳なかった……あのあと、紅野が残してくれたメモを見て考え直したんだ」
慎重に言葉を選びながら、紅野に対する今の自分の気持を伝える。
「随分、自分勝手なコトをしてしまったなって……あんな情けないトコロを見せてしまったうえで、言えるコトじゃないかも知れないが……これからも、クラスメートとして、クラス委員の仕事を一緒にするペアとして、一年の時と変わらずに接してもらえると嬉しい」
なるべく、早口にならないように気をつけながらも、一気にそこまで話し終えた。
こちらの言葉に、彼女はどんな反応を示すのだろう――――――。
緊張で、脇から汗が伝うのが感じられる。
すると、紅野は、少し目線を下げ、かわいく作った拳を口元に当てながら、「フッ」と、柔らかな笑みを見せ、つぶやくように語った。
「あっ、ゴメンね! 黒田くんが、あまりに真剣な表情だったから……だって、春休みの前の時よりも、緊張してるみたいなんだもの……でも、ありがとう」
彼女の口からこぼれた感謝を意味する言葉に、不思議そうな表情をしたためだろうか、紅野アザミは、言葉を付け足す。
「あ、『ありがとう』っていうのは、ちゃんと、私のコトを考えてくれていたんだな、ってわかったから……私の方も、キッチリと返事ができた訳じゃなかったから、どうしようかな、って悩んでたんだ……」
紅野は、そう言って、少しだけ顔を伏せた後、もう一度、こちらに視線を向ける。
「でも、黒田くんからそんな風に言ってもらえて、気持ちがスゴく楽になった。だから、『ありがとう』って、伝えたいなって……」
微かに、はにかみながら語るクラスメートの表情は、クラス委員として、教師とクラスの連中から信頼されている紅野アザミとしてのものとは、少しだけ違って見えた。
その仕草と表情には、オレの鼓動を早める効果があったが、そのことは、なるべく顔色に出さないように努めて、
「オレの方こそ、そう言ってもらえると助かる。ありがとう」
と、感謝の気持だけは素直に伝えたあと、もう一つ、謝罪しておかなければならない点について、再び切り出す。
「あと、もしかしたら、紅野もすでに知っているかもしれないが……オレは、春休み中に、自分たちのアカウントで、自分が失恋したことを語る動画をアゲてしまった。本当に申し訳ない」
目の前の彼女に対して、深々と頭を下げる。
「動画は、削除しているけど、校内でも視聴している人間がいると思う。もちろん、動画の中で、紅野の名前を出したりはしていないが……もし、このことで、紅野が、なにか言われるようなことがあったら、すべてオレの責任だ! だから、問題が起こったら、すぐに言ってくれないか? 自分が出来る限りのことをさせてもらうから……」
最初の問題は自分と紅野の二人で解決すべき内容だが、こちらは、第三者が絡んで来る可能性のある問題だ。さらに、この件で、彼女を巻き込んでしまったことは、完全に自分たちの落ち度だ。そのためか、さきほどまでとは変わって、紅野は伏し目がちになり、表情も曇ったものになる。
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