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第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜⑧
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「いや、スマン……そう言えば、さっきの話しの続きがあったな? それは、わざわざ、この編集スタジオの見学に来たこととも関係があるのか?」
春休みの動画の件は、個人的にあまり触れてほしくはない話題であるが、白草の要望を聞き出さないことには、話しが進まないと判断し、そう問いかけてみた。
すると、オレの一言に、白草四葉は居住まいを正し、
「それじゃ……」
と、つぶやいてからコホン……と、可愛らしい咳払いをしたあと、慎重に、しかし、ハッキリとした口調で切り出した。
「わたしが考えていたのは、二人の《竜馬ちゃんねる》と、わたしの《クローバー・フィールド》のアカウントで、コラボができないかな? ってことなんだ」
彼女の言葉に、オレたち二人は、またも顔を見合わせる。
オレと壮馬の反応をどう受け取ったのかはわからないが、彼女は続けて、
「その内容、なんだけど……」
今度は、ややもったいぶった様子で、オレたち二人を交互に見ながら、慎重に語る。
「今まで、わたしのフォロワーは圧倒的に女の子が多かったから、これからは、男子にも、わたしの《ミンスタ》や《チックタック》を見に来てもらいたい、と思ってるんだ……」
そして、カリスマ的人気を誇るミンスタグラマーは、こんな提案をしてきた。
「そこで、《クローバー・フィールド》のヨツバとしては、男女ともに興味をもってくれそうな、恋愛アドバイザーに挑戦してみたいんだけど、黒田クン、わたしのモルモ……じゃなくて、わたしのアドバイスを受けてみる気はない?」
「いいじゃん、面白そう!!」
「いや、ちょっと待て!!!」
壮馬とオレは、ほぼ同時に声をあげ、互いの顔を見合わせる。
「え!? 面白そうじゃん、やろうよ竜司!」
「いやいや! なんでオレが!? しかも、白草! いま、『わたしのモルモットになってみない?』って言おうとしただろ!?」
「さぁ、なんのことかな~? 何か聞こえた、黄瀬クン?」
「いや、白草さんは、竜司を実験体にしようなんて、一ミリも考えていないと思うよ」
憤慨するこちらをよそに、白草と壮馬は、ニンマリとほくそ笑みながら、シレっと返答してきた。
「お・ま・え・ら、な~」
さらに怒りを込めるオレに対して、壮馬が説得にかかる。
「ボクらも、そろそろ新しい視聴者層を開拓するべきだと思うんだけどな~。それに、『クローバー・フィールド』のヨツバちゃんが協力してくれるなんて、二度とないチャンスかもしれないよ?」
そして、提案者の白草も、
「せやせや! 黒田クンは、みすみす絶好のチャンスを逃すタイプなん?」
わざとらしい地方言語を交えて、挑発気味に問い掛けてきた。
さらに、彼女は、少し真剣な表情で、声のトーンを一段落とし、
「それに、フラレたままで、黒田クンは悔しくないんだ?」
と、失恋の傷が未だに癒えないオレに向かって、問いただすように言葉を発した。
彼女の言い回しに、ただならぬ雰囲気を感じながらも、なんとか言葉を絞り出す。
「悔しくないか、って言われりゃ、そりゃ……」
そして、その後の発言に淀んでいる、右斜め四十五度の位置に座るこちらに、這い寄るようにして顔を寄せた白草四葉は、問い詰めてきた。
「悔しいよね……? 哀しいよね……?」
その迫力に気圧され、
「あ、あぁ……」
仰け反りながら、細かく首をタテに振るしかないオレの目を、しかと見据えた彼女は、
「だったら……」
と、一言をつぶやき、一拍置いたあと、
「復讐するしかないよね……!紅野サンに」
そうキッパリと言い切った。
断定口調で語る彼女の一言で、パーティ・グッズの電気ショック系玩具に触れたお笑い芸人のように、ビクリと身体を大きく震わせたオレは、動揺し、しどろもどろになりながら、答える。
「ナ、ナ、ナ、ナンのことだよ!? 紅野に復讐って……?」
そんな、はたから見れば情けない姿を、やや上方から見下ろす形で、オレの鼻先に人差し指を突き出し、白草四葉は、断言した。
「今さら隠そうとしても無駄! 黒田クンがフラレた相手は、紅野アザミなんでしょ?」
それは、話しが進まないから、さっさと白状しろ、とでも言いたげな彼女の物言いだ。
「あ……うん……」
彼女の迫力にミステリー小説の探偵役に真相を突きつけられた犯人が自供するかのごとく、オレは、うなだれるしかなかった。
※
一方、対面初日であるはずの二人が展開する修羅場的な雰囲気に、一人取り残された『第三の男』である黄瀬壮馬は、目の前の同級生二名が醸し出す、肌がヒリつくような空気を呆然と眺めていた。
(ナ、ナニコレ? 竜司と白草さんは、今日が初対面のハズだよね? なんで、二人の会話は、彼氏の浮気を問い詰めてる彼女みたいな感じになってんの?)
さらに――――――。
(しかも、白草さん、いま、紅野さんのことを呼び捨てにしてなかった? いったい、どういうこと?)
というあらたな疑問に、市内の偏差値トップ校で成績上位を誇る(それなりに)優秀な彼の脳内器官も、情報処理が追いつかない模様である。
それでも、なんとか状況を整理した壮馬は、劇中のクライマックスで、犯人を追い詰める名探偵に対し、解説を求める凡人役のように、疑問を投げかける。
「あ、あのさ、白草さん。竜司のフラれた相手が、紅野さんだって、どうしてわかったの?」
そんな疑問に、天才的推理力を持つ者だけが発する
(なぜ、そんな簡単なことを、いちいち答えなきゃいけないの?)
という一般人を憐れむようなオーラを漂わせながら、白草四葉は、自身の見解を披露した。
「黒田クンの失恋動画では、相手の女子について、『同じクラスで席が近くて話すようになって、親しくなった』『《LANE》で、メッセージを交換するのが楽しかった』『委員会の仕事を一緒にするようになって、より相手を意識するようになって、気付けば恋愛感情が芽生えていた』って、言ってたでしょ?」
続けて、彼女は、春休みに公開された動画の内容を淡々と指摘する。
そして、
「あとは、今日のホームルームでの二人の反応。アレだけ見れば、紅野サンと初対面のわたしでも、黒田クンが誰を意識してるか、わかるって……」
こんな簡単なこともわからないのか、と億劫そうな表情ながらも、白草四葉は、最後まで饒舌に自らの推察内容を語った。
(ん? LANEでのメッセージ交換のことは、関係なくない?)
壮馬は、その点に、かすかな違和感を覚えたものの、深くは追求せず、
「なるほど……どうやら、竜司は語りすぎたようだね……」
などと、肩をすくめながら、善意の第三者であるかのごとく発言するが――――――。
「おい! 誰のせいで、こんな事になったと思ってんだ!? あの動画で、カンペを出したりして、オレの発言を色々と引き出したのは、おまえ自身だろ!?」
竜司が、例の動画編集者に対して恨みがましい目線を送りながら、呪詛のセリフのごとく、言葉を投げつける。
そんな親友の非難めいた視線を受け流しながら、
「アハハ……そうだったっけ!?」
と、まったく悪びれる様子もなく宣う壮馬。
その様子にあきれた表情で、四葉は問い掛けた。
春休みの動画の件は、個人的にあまり触れてほしくはない話題であるが、白草の要望を聞き出さないことには、話しが進まないと判断し、そう問いかけてみた。
すると、オレの一言に、白草四葉は居住まいを正し、
「それじゃ……」
と、つぶやいてからコホン……と、可愛らしい咳払いをしたあと、慎重に、しかし、ハッキリとした口調で切り出した。
「わたしが考えていたのは、二人の《竜馬ちゃんねる》と、わたしの《クローバー・フィールド》のアカウントで、コラボができないかな? ってことなんだ」
彼女の言葉に、オレたち二人は、またも顔を見合わせる。
オレと壮馬の反応をどう受け取ったのかはわからないが、彼女は続けて、
「その内容、なんだけど……」
今度は、ややもったいぶった様子で、オレたち二人を交互に見ながら、慎重に語る。
「今まで、わたしのフォロワーは圧倒的に女の子が多かったから、これからは、男子にも、わたしの《ミンスタ》や《チックタック》を見に来てもらいたい、と思ってるんだ……」
そして、カリスマ的人気を誇るミンスタグラマーは、こんな提案をしてきた。
「そこで、《クローバー・フィールド》のヨツバとしては、男女ともに興味をもってくれそうな、恋愛アドバイザーに挑戦してみたいんだけど、黒田クン、わたしのモルモ……じゃなくて、わたしのアドバイスを受けてみる気はない?」
「いいじゃん、面白そう!!」
「いや、ちょっと待て!!!」
壮馬とオレは、ほぼ同時に声をあげ、互いの顔を見合わせる。
「え!? 面白そうじゃん、やろうよ竜司!」
「いやいや! なんでオレが!? しかも、白草! いま、『わたしのモルモットになってみない?』って言おうとしただろ!?」
「さぁ、なんのことかな~? 何か聞こえた、黄瀬クン?」
「いや、白草さんは、竜司を実験体にしようなんて、一ミリも考えていないと思うよ」
憤慨するこちらをよそに、白草と壮馬は、ニンマリとほくそ笑みながら、シレっと返答してきた。
「お・ま・え・ら、な~」
さらに怒りを込めるオレに対して、壮馬が説得にかかる。
「ボクらも、そろそろ新しい視聴者層を開拓するべきだと思うんだけどな~。それに、『クローバー・フィールド』のヨツバちゃんが協力してくれるなんて、二度とないチャンスかもしれないよ?」
そして、提案者の白草も、
「せやせや! 黒田クンは、みすみす絶好のチャンスを逃すタイプなん?」
わざとらしい地方言語を交えて、挑発気味に問い掛けてきた。
さらに、彼女は、少し真剣な表情で、声のトーンを一段落とし、
「それに、フラレたままで、黒田クンは悔しくないんだ?」
と、失恋の傷が未だに癒えないオレに向かって、問いただすように言葉を発した。
彼女の言い回しに、ただならぬ雰囲気を感じながらも、なんとか言葉を絞り出す。
「悔しくないか、って言われりゃ、そりゃ……」
そして、その後の発言に淀んでいる、右斜め四十五度の位置に座るこちらに、這い寄るようにして顔を寄せた白草四葉は、問い詰めてきた。
「悔しいよね……? 哀しいよね……?」
その迫力に気圧され、
「あ、あぁ……」
仰け反りながら、細かく首をタテに振るしかないオレの目を、しかと見据えた彼女は、
「だったら……」
と、一言をつぶやき、一拍置いたあと、
「復讐するしかないよね……!紅野サンに」
そうキッパリと言い切った。
断定口調で語る彼女の一言で、パーティ・グッズの電気ショック系玩具に触れたお笑い芸人のように、ビクリと身体を大きく震わせたオレは、動揺し、しどろもどろになりながら、答える。
「ナ、ナ、ナ、ナンのことだよ!? 紅野に復讐って……?」
そんな、はたから見れば情けない姿を、やや上方から見下ろす形で、オレの鼻先に人差し指を突き出し、白草四葉は、断言した。
「今さら隠そうとしても無駄! 黒田クンがフラレた相手は、紅野アザミなんでしょ?」
それは、話しが進まないから、さっさと白状しろ、とでも言いたげな彼女の物言いだ。
「あ……うん……」
彼女の迫力にミステリー小説の探偵役に真相を突きつけられた犯人が自供するかのごとく、オレは、うなだれるしかなかった。
※
一方、対面初日であるはずの二人が展開する修羅場的な雰囲気に、一人取り残された『第三の男』である黄瀬壮馬は、目の前の同級生二名が醸し出す、肌がヒリつくような空気を呆然と眺めていた。
(ナ、ナニコレ? 竜司と白草さんは、今日が初対面のハズだよね? なんで、二人の会話は、彼氏の浮気を問い詰めてる彼女みたいな感じになってんの?)
さらに――――――。
(しかも、白草さん、いま、紅野さんのことを呼び捨てにしてなかった? いったい、どういうこと?)
というあらたな疑問に、市内の偏差値トップ校で成績上位を誇る(それなりに)優秀な彼の脳内器官も、情報処理が追いつかない模様である。
それでも、なんとか状況を整理した壮馬は、劇中のクライマックスで、犯人を追い詰める名探偵に対し、解説を求める凡人役のように、疑問を投げかける。
「あ、あのさ、白草さん。竜司のフラれた相手が、紅野さんだって、どうしてわかったの?」
そんな疑問に、天才的推理力を持つ者だけが発する
(なぜ、そんな簡単なことを、いちいち答えなきゃいけないの?)
という一般人を憐れむようなオーラを漂わせながら、白草四葉は、自身の見解を披露した。
「黒田クンの失恋動画では、相手の女子について、『同じクラスで席が近くて話すようになって、親しくなった』『《LANE》で、メッセージを交換するのが楽しかった』『委員会の仕事を一緒にするようになって、より相手を意識するようになって、気付けば恋愛感情が芽生えていた』って、言ってたでしょ?」
続けて、彼女は、春休みに公開された動画の内容を淡々と指摘する。
そして、
「あとは、今日のホームルームでの二人の反応。アレだけ見れば、紅野サンと初対面のわたしでも、黒田クンが誰を意識してるか、わかるって……」
こんな簡単なこともわからないのか、と億劫そうな表情ながらも、白草四葉は、最後まで饒舌に自らの推察内容を語った。
(ん? LANEでのメッセージ交換のことは、関係なくない?)
壮馬は、その点に、かすかな違和感を覚えたものの、深くは追求せず、
「なるほど……どうやら、竜司は語りすぎたようだね……」
などと、肩をすくめながら、善意の第三者であるかのごとく発言するが――――――。
「おい! 誰のせいで、こんな事になったと思ってんだ!? あの動画で、カンペを出したりして、オレの発言を色々と引き出したのは、おまえ自身だろ!?」
竜司が、例の動画編集者に対して恨みがましい目線を送りながら、呪詛のセリフのごとく、言葉を投げつける。
そんな親友の非難めいた視線を受け流しながら、
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