時のコカリナ

遊馬友仁

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第四章〜④〜

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 友人たちの件については、こちらで手を打てることはやり尽くしたので、もう一つの関心事に思考を切り替える。
 メッセージの送信から二日近くが経過しているにもかかわらず、いまだに小嶋夏海からの応答はなかった。

(なにか、メッセージの返信ができない事情でもあるのだろうか……?)
(いや、送ったメッセージがマズかったのか?なにか気に障る内容があったか……?)

などと、次々にネガティブな考えが頭に浮かぶ。

 スマホを枕元に置き、自室のベッドで悶々としながら、横たわっていると、メッセージの着信を示すランプが光った。
 慌てて、手を伸ばし、ロックを解除してメッセージを表示させる。

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返事が遅くなってゴメンね
(ユミコからも連絡が来ました)

私も花火大会に
参加させてもらおうと思います

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 簡潔なメッセージだったが、その内容に安堵している自分に気付いた。
 すぐさま、送られてきたメッセージに返答をする。

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返信ありがとう!

大嶋から聞いたかも知れないが
プールに行ったメンバーに
声を掛けさせてもらっている

久々に連絡が取れたし、
少し話せないかな?

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 一瞬、頭をよぎった「小嶋の声が聞きたい」という文言は、悩んだ末、気味悪がられてはいけない、と考え直して、書き込まないでおいた。

 二日前のメッセージとは異なり、すぐに既読マークがつき、返信があった。

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ゴメン。
今日は話すのは遠慮したい

お誘い、ありがとう。
花火、楽しみにしてる。

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 やはり、なにか連絡を取りにくい事情でもあるのだろうか?
 しかし、これ以上、考えてもネガティブな思考に陥るだけだし、彼女のプライバシーに立ち入ることになってしまうかも知れない……そう思い直して、《YES!》と書かれたコアラのスタンプを送信し、

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わかった。

花火大会の詳細については、
あらためて連絡させてもらう

あと、なにかあったら、
遠慮なく連絡してくれ

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と、メッセージを返信しておいた。
 これ以上のメッセージ交換はしないつもりで内容を送信したので、彼女からの返信は期待していなかったのだが、しばらくすると、意外にもスマホの着信ランプが光った。

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ありがとう。

色々と話せるようになったら、
話しを聞いてもらおうかな

あと、連絡が取れない時も
ウチの前の公園のネコの
様子を確認してくれると嬉しい

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 前半の内容には納得できたが、メッセージの後半の内容には、明らかに不可解な点があった。
 しかし、文章のやり取りで、そのことを指摘するのも難しいと感じ、彼女が自分で話したい、と思った時にたずねれば良いか、と考えて、《OK》と書かれたコアラのスタンプを返信しておくだけにした。
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