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第三章〜㉑〜
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午後八時に、ビデオ通話に切り替えて開始されたオンライン勉強会は、自分の想定以上の進捗を記録した。
図書館で一人で取り組んでいた時間以上に課題の進みが早かったのは、回答につまった時、小嶋夏海に質問を投げかけると、すぐに、その質問に答えてくれたからというの大きかったのだろう。
そのおかげで、途中、十分間の休憩を挟んで、午後十時まで続いた学習時間の中で、課題として取り組んだ数学の冊子は、午前中に掛けた時間よりも多くのページをこなし、図書館で終了させた部分も含めて、今日一日ぶんの目標の約九十パーセントを達成することができた。
集中して机に向かっていたため、固まった上半身を軽いストレッチでほぐしつつ、
「小嶋のおかげで、かなり遅れを取り戻せた。ありがとう」
と、声を掛けると、
「そう。少しは役に立てたみたいで良かった」
柔らかい口調の声が返ってきた。
「いや、少しじゃなくて、大いに助かった。ところで、どうして通話しながら、勉強しようと提案してくれたんだ?」
気になったことを聞いてみると、
「ちょっと、気になったネットの記事を読んだからね。坂井には、こういうのが向いてるのかと思っただけ。今度、その記事を送ってあげる」
と、彼女は楽しげな声で返答する。
彼女も、自分と同じく『通話アプリで勉強が捗る』というネット記事を読んだのだろうか?
ともあれ、昼過ぎに体調を崩したにも関わらず、この時間まで、こちらの勉強に付き合ってくれた小嶋夏海に、何らかのカタチで返礼をしておきたい。
(なにか、彼女を元気づけること……自分が、役に立てることはないか……)
と考え、午後に彼女の家に行った時、近所の公園で横になっている猫のことを思い出した。
「明日は、どうする? また、図書館に来れるか?」
本題に入る前に、まずは彼女の都合と体調を確認する。
「そうね、私も今日の午後に調べてたかったことを済ませておきたいし……明日も九時に図書館に集合しない?」
「そうだな。何かオレに出来そうなことがあったら、遠慮なく呼んでくれ」
合意が取れたので、こちらから、次の話題に移ることにした。
「あと、明日の夕方、時間を取れないか? 今日、小嶋の家に行かせてもらった時に、近所の公園で縞模様のネコを見掛けたんだが……寝転がっているところに近付くと、すぐに逃げられたんだ。アレが小嶋の言ってたネコかはわからないがーーーーーー。コイツがあれば、あのネコを撫でたりすることも出来るのかな、って思ったんだ」
『時のコカリナ』をスマホのビデオ画面に映しながら、考えていたことを伝えると、
「『あの子』を見たの!? それって、キジトラ……こげ茶色と黒のシマシマだった?」
興奮気味に声が返ってきた。
「あぁ、雑貨屋で買ったネコリナの模様に似てたな」
こちらの返答には、
「そうなんだ! じゃあ、きっと、あの子ね! 坂井も、あの子の魅力に気付いたんだ!?」
『あの子の魅力』とやらが、どういうモノなのか良くわからないが、
「おっ、そうだな……」
彼女の圧に、気圧されて思わず肯定と取れる答えを返してしまった。
「そっか、そっか! 坂井も、あの子に一目惚れしたんだね~」
一人で納得している彼女を止める手段は最早なく、昼過ぎに体調を崩したとは思えないくらい声に活気が戻ったことを安心しつつも、その前のめりぶりに自分の提案が適切なモノであったのか、自信が持てなくなっていた。
しかしながら、一度作られた流れを変えられようハズもなく、
「じゃ、明日の夕方は公園で実験ね!」
彼女の一言で、神社での施行以来、五日ぶりに実験(と呼べるほどのものではないかも知れない)が、実行されることになった。
図書館で一人で取り組んでいた時間以上に課題の進みが早かったのは、回答につまった時、小嶋夏海に質問を投げかけると、すぐに、その質問に答えてくれたからというの大きかったのだろう。
そのおかげで、途中、十分間の休憩を挟んで、午後十時まで続いた学習時間の中で、課題として取り組んだ数学の冊子は、午前中に掛けた時間よりも多くのページをこなし、図書館で終了させた部分も含めて、今日一日ぶんの目標の約九十パーセントを達成することができた。
集中して机に向かっていたため、固まった上半身を軽いストレッチでほぐしつつ、
「小嶋のおかげで、かなり遅れを取り戻せた。ありがとう」
と、声を掛けると、
「そう。少しは役に立てたみたいで良かった」
柔らかい口調の声が返ってきた。
「いや、少しじゃなくて、大いに助かった。ところで、どうして通話しながら、勉強しようと提案してくれたんだ?」
気になったことを聞いてみると、
「ちょっと、気になったネットの記事を読んだからね。坂井には、こういうのが向いてるのかと思っただけ。今度、その記事を送ってあげる」
と、彼女は楽しげな声で返答する。
彼女も、自分と同じく『通話アプリで勉強が捗る』というネット記事を読んだのだろうか?
ともあれ、昼過ぎに体調を崩したにも関わらず、この時間まで、こちらの勉強に付き合ってくれた小嶋夏海に、何らかのカタチで返礼をしておきたい。
(なにか、彼女を元気づけること……自分が、役に立てることはないか……)
と考え、午後に彼女の家に行った時、近所の公園で横になっている猫のことを思い出した。
「明日は、どうする? また、図書館に来れるか?」
本題に入る前に、まずは彼女の都合と体調を確認する。
「そうね、私も今日の午後に調べてたかったことを済ませておきたいし……明日も九時に図書館に集合しない?」
「そうだな。何かオレに出来そうなことがあったら、遠慮なく呼んでくれ」
合意が取れたので、こちらから、次の話題に移ることにした。
「あと、明日の夕方、時間を取れないか? 今日、小嶋の家に行かせてもらった時に、近所の公園で縞模様のネコを見掛けたんだが……寝転がっているところに近付くと、すぐに逃げられたんだ。アレが小嶋の言ってたネコかはわからないがーーーーーー。コイツがあれば、あのネコを撫でたりすることも出来るのかな、って思ったんだ」
『時のコカリナ』をスマホのビデオ画面に映しながら、考えていたことを伝えると、
「『あの子』を見たの!? それって、キジトラ……こげ茶色と黒のシマシマだった?」
興奮気味に声が返ってきた。
「あぁ、雑貨屋で買ったネコリナの模様に似てたな」
こちらの返答には、
「そうなんだ! じゃあ、きっと、あの子ね! 坂井も、あの子の魅力に気付いたんだ!?」
『あの子の魅力』とやらが、どういうモノなのか良くわからないが、
「おっ、そうだな……」
彼女の圧に、気圧されて思わず肯定と取れる答えを返してしまった。
「そっか、そっか! 坂井も、あの子に一目惚れしたんだね~」
一人で納得している彼女を止める手段は最早なく、昼過ぎに体調を崩したとは思えないくらい声に活気が戻ったことを安心しつつも、その前のめりぶりに自分の提案が適切なモノであったのか、自信が持てなくなっていた。
しかしながら、一度作られた流れを変えられようハズもなく、
「じゃ、明日の夕方は公園で実験ね!」
彼女の一言で、神社での施行以来、五日ぶりに実験(と呼べるほどのものではないかも知れない)が、実行されることになった。
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