パラレル to LOVEる〜多元世界でハーレム生活を堪能していたら彼女たちがひとつの世界線に集まってきました〜

遊馬友仁

文字の大きさ
上 下
59 / 75

第4章〜What Mad Metaverse(発狂した多元宇宙)〜①

しおりを挟む
 午後の授業のあとの放課後のショート・ホーム・ルームが終わると同時に、オレは、冬馬とうまと放送・新聞部の部室に向かった。

 ももと同じくらい……とは言わないまでも、オレも島内四片しまうちよひらのデモテストを楽しみにしていた。

 だが――――――。

 親友とともに、部室を訪れると、そこに、VTuber・島内四片しまうちよひらを演じる下級生の姿はなかった。

(最近は、真っ先に部室に顔を出して、デモテストに熱中していたのに……今日は、どうしたんだろう?)

 そう思って、すでに部室で新年度の部員勧誘資料を作成し始めていたももと同学年の宮尾雪野みやおゆきのにたずねてみた。

宮尾みやお浅倉あさくらはまだ来てないのか?」

浅倉あさくらさんなら、用事が終わってから、部室に来ると言ってたべ……」

 下級生は、そう即答したあと、気になることをつぶやいた。

「あれ? でも、玄野センパイと一緒じゃなかったべか? あの表情は、てっきり玄野センパイと、ふたりで会うものだと思ってたべが……」

 ももがオレと一緒に……?

 たしかに、今日は彼女の誕生日で、ささやかながらプレゼントも用意しているが……何かを手渡したり伝えたりするなら、自宅に戻ってからにしようと考えていた。

 あるいは、彼女の友人、もしくは、中学生時代の最初の頃のように彼女を想う男子生徒がプレゼントを手渡そうとしていることもあり得るがのだが……。

 ただ、そう自分に言い聞かせても、この言い様のない胸騒ぎを抑えることができない――――――。

 その不安が表情にあらわれたのか、そばにいた冬馬とうまが不思議そうにたずねてくる。

「どうしたんだよ、雄司ゆうじ。そんな落ち着かない顔して……浅倉さんが部室に来てないことが、そんなに心配なの? 同居人だからって、ちょっと過保護すぎやしないか?」

 その呑気な一言に、

「なに言ってるんだ、ゲルブ! ももがシュヴァルツたちに狙われてるかも知れないんだぞ!?」

と、思わず声を荒げそうになってしまうが、おっとりとした親友の表情に、すんでのところで、

(そうだ……いまは、銀河連邦の捜査官じゃないんだ……)

と思い直して、歯がゆさに唇を噛む。

 ゲルブたち銀河連邦の捜査官を呼び出すには、彼らから授かったトリッパー・ジャッジメント・マシンT・J・Mを使って、別セカイのトリッパーが、このセカイに紛れ込んでいることを知らせなければならない。

 唇に歯を当てたまま、

(どうする……)

と、この状況を打開する策に頭を巡らせる。
 そうして、数秒たらずの沈黙のあと、オレの頭には、あるアイデアが浮かんだ。

(このデバイスが、トリッパーに反応するなら……)

 そう考えて、制服の内ポケットから、トリッパー・ジャッジメント・マシンT・J・Mを取り出して、自分の身体に向けて、レーザーを照射する。

雄司ゆうじ、なにやってんの?」

 オレの突然の行動に、親友は、いぶかしげに問いかけ、下級生の宮尾みやおも、眉をひそめて怪訝な表情をつくる。

 それでも、何度もセカイをトリップした経験のあるオレの脳波を読み取ったデバイスは、思ったとおり、赤い光線に切り替わり、トリッパーが、このセカイのこの場所にいることを示した。

 あとは、ゲルブたちが、この信号を受け取って、このセカイに駆けつけてくれることを待つばかりだが……。

 相変わらず、不思議そうな表情でオレのことをうかがっている冬馬とうまのようすを観察していると、彼は、一瞬ビクリと身体を震わせて、わずかながら、その顔つきも変化した気がする。

 そして、オレの観察眼は、間違っていなかったようで、親友の姿をしたままの彼は、

玄野雄司くろのゆうじ! なにがあった!?」

と、食い気味にオレに問いかけてくる。
 思惑どおりの展開に気持ちが高ぶるのをなんとか抑えつつ、ゲルブに現状を伝えようとすると、部室に居た、もうひとりの部員も声をあげる。

「いきなり、別のセカイに移動するのは、やっぱり慣れないべ……心の準備くらいさせてくれねぇだか?」

「シュノ―! キミもシグナルを受け取ってたのか!?」

 驚いたように声をあげるゲルブに、シュノ―という名で呼ばれたのは、宮尾雪野みやおゆきのの姿をした少女だ。
 
 そう言えば、彼女は、あので、文芸部の部長を務める山竹やまたけとともに、三葉みつばももを警護する任務についてくれていた。
 そんなことを思い出しながら確認するオレに、落ち着きを取り戻しつある親友の姿をした捜査官が、たずねてくる。
 
「なんにしても、味方がいてくれるのは、心強い。ところで、玄野雄司くろのゆうじ。こうして、ボクらを呼び出したということは、なにか、手掛かりを掴んだのかい?」

「あぁ、確証はないがな……そのことを話す前に、ひとつ確認させてくれるか?」

 ゲルブの問いかけに、オレは質問で返す。
 そして、彼の答えを待たずに、続けてたずねた。

「ここまで来たからには、もう隠し事はなしにしてもらいたいんだが……アンタたちが追いかけているシュヴァルツは――――――姿をしているんじゃないのか?」

 そう問いかけたオレの言葉に、ゲルブとシュノ―は、一瞬、驚いたように目を見開いたあと、静かに、その瞳を閉じた。

 言葉はなくとも、オレにとっては、彼らのその表情こそが、何よりもその答えを雄弁に物語っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...