43 / 75
第3章〜逆転世界の電波少女〜④
しおりを挟む
「そ、それは、もしかして、オレと関係あることか……?」
桃との会話を思い出しながら、オレは慎重にたずねる。
すると、三葉は、少し驚いたようすで、たずね返してくる。
「あれ、どうしてわかったの?」
その返答に、悪い予感が的中してしまったことを内心で嘆いていると、彼女は、苦笑いしながら、続けて自身のみた夢について語り始めた。
「何日か前のことなんだけど……朝、いつもみたいに雄司を起こしに行ったら、なぜか、雄司の家に放送部の後輩が居たの! しかも、同居していて、毎朝モーニングコーヒーを淹れてもらってるとか、おかしなことまで言い出すの! それに、登校しようと思ったら、委員長の河野さんまで、雄司に告白して付き合い出したとか言ってくるし……『もう、なんなの! このセカイは!?』って、頭がおかしくなりそうだったよ!」
自分ではおかしなことを言っていると認識しているのか、幼なじみであり、このセカイでは交際関係にある彼女は、自嘲的な笑みを浮かべながらも、自身の抱える不安や不満を吐き出すようにオレに語りかけてきた。
スマホの画面越しに語る健気なその姿を目にすると、彼女を困惑させてしまったという自責の念にかられ、心が痛む。
「ゴメン……三葉。オレが不安にさせてしまったせいだ……」
ただ、不意に漏れた、そのつぶやきに、彼女は、さっきよりも驚いたようすで、目を丸くしたあと、はにかみながら返事を返してきた。
「そんな……雄司が謝ることじゃないのに……でも、ありがとう……」
いや、自分の方こそ、三葉に感謝の言葉を掛けてもらうような覚えはないのだが……。彼女は、さらに続けて、思いの丈を語ってくれた。
「わたしがみた夢のことで、勝手にモヤモヤしたり、イライラしていただけだから、それを誰かにぶつけるなんてしたくなかったんだよね……でも、その気持ちは、やっぱり消化しきれなくて……男の子にこんな話しをしちゃうと、絶対に嫌われると思ってたのに……」
「いや、嫌うなんて、そんなことは……」
彼女が夢と思い込んでいる出来事は、オレ自身の行動に原因があることは明白なので、後ろめたさを感じながら、そう答えると、三葉は思ってもいない言葉を返してきた。
「100点……100点満点の答え……」
「えっ、なに?」
意味がわからず、そうたずね返すと、彼女はつぶやくように答えを返す。
「『オレが、不安にさせてしまったせいだ……』って言うのは、100点満点の答えだっていうこと……」
(いや、なぜ、それが100点の回答なんだ? どういうことだ……?)
ふたたび、彼女の言葉の真意がわからず、その意味を考えあぐねていると、三葉は自分の気持ちを確認するように、解説を始めた。
「わたしの勝手な思い込みなのに……雄司はわたしのことを責めずに、わたしの気持ちに寄り添ってくれたでしょう? それに、雄司に言われて気付いたんだ。わたしは、雄司に会えないことが……雄司を誰かに取られちゃうことが不安だったんだなって……そんな風に、わたしの想いに気付いて、自分でも理解できていなかったわたしの気持ちを気付かせてくれたから、100点満点の答えだって言ってるの!」
最後は、早口になりながらも、自身の想いをコチラにぶつけてくる三葉。
そんな彼女の言葉は、オレ自身を全面的に信頼し、オレの存在を肯定してくれていることがうかがえ、オレの自尊心を満たすのに十分すぎるほどの効果をもたらす。
ただーーーーーー。
オレが彼女に掛けた言葉、そして、その言葉を生むきっかけになったのは、すべて、自分の軽薄で愚かな行為だったことを意識すると、三葉の想いは、より大きな罪悪感となって、オレにのしかかってきた。
オレにとっての『ルートA』、銀河連邦政府の管理番号No.141421356のセカイの白井三葉は、オレを信頼し、全力で好意を向けてくれる、ある意味で、男子高校生にとっての理想の女子だ。
ただ、それは、オレが、自分自身の都合が良いように、いくつものセカイを股にかけて、何度もやり直しを経験したうえで成り立っている関係に過ぎないとも言える(すでに、自分の目で確認したように、彼女は、オレと交際していないどころか、三葉他の男性と付き合ったりしているセカイも数多く存在している)。
このセカイ(=『ルートA』)のオレと三葉の関係は、言ってみれば、はじめたばかりのスマホのゲームで、理想的な初回特典カードを手に入れるために、何度もインストールとアンインストールを繰り返すリセットマラソンを行って手に入れた最強の初回デッキのようなモノだ。
本来ならやり直しの効かない人生において、こんなリセマラ的な行為で得られた好意に、どれ程の価値があるのか――――――と、オレは今さらながらに、自問をせざるを得ない。
しかし、そんなオレの後悔をよそに、一途な彼女は、こんな提案をしてきた。
「あ~、こうして通話してたら、やっぱり、雄司に会いたくなっちゃった! ねぇ、ちょっと、遅い時間だけど、これから、外で会えない?」
自室の壁掛け時計を確認すると、時計の針は九時前を指していたが――――――。
オレと会えないことで不安を感じてしまっているという三葉の信頼に応えるためにも、彼女への返答の選択肢は、ひとつしかなかった。
桃との会話を思い出しながら、オレは慎重にたずねる。
すると、三葉は、少し驚いたようすで、たずね返してくる。
「あれ、どうしてわかったの?」
その返答に、悪い予感が的中してしまったことを内心で嘆いていると、彼女は、苦笑いしながら、続けて自身のみた夢について語り始めた。
「何日か前のことなんだけど……朝、いつもみたいに雄司を起こしに行ったら、なぜか、雄司の家に放送部の後輩が居たの! しかも、同居していて、毎朝モーニングコーヒーを淹れてもらってるとか、おかしなことまで言い出すの! それに、登校しようと思ったら、委員長の河野さんまで、雄司に告白して付き合い出したとか言ってくるし……『もう、なんなの! このセカイは!?』って、頭がおかしくなりそうだったよ!」
自分ではおかしなことを言っていると認識しているのか、幼なじみであり、このセカイでは交際関係にある彼女は、自嘲的な笑みを浮かべながらも、自身の抱える不安や不満を吐き出すようにオレに語りかけてきた。
スマホの画面越しに語る健気なその姿を目にすると、彼女を困惑させてしまったという自責の念にかられ、心が痛む。
「ゴメン……三葉。オレが不安にさせてしまったせいだ……」
ただ、不意に漏れた、そのつぶやきに、彼女は、さっきよりも驚いたようすで、目を丸くしたあと、はにかみながら返事を返してきた。
「そんな……雄司が謝ることじゃないのに……でも、ありがとう……」
いや、自分の方こそ、三葉に感謝の言葉を掛けてもらうような覚えはないのだが……。彼女は、さらに続けて、思いの丈を語ってくれた。
「わたしがみた夢のことで、勝手にモヤモヤしたり、イライラしていただけだから、それを誰かにぶつけるなんてしたくなかったんだよね……でも、その気持ちは、やっぱり消化しきれなくて……男の子にこんな話しをしちゃうと、絶対に嫌われると思ってたのに……」
「いや、嫌うなんて、そんなことは……」
彼女が夢と思い込んでいる出来事は、オレ自身の行動に原因があることは明白なので、後ろめたさを感じながら、そう答えると、三葉は思ってもいない言葉を返してきた。
「100点……100点満点の答え……」
「えっ、なに?」
意味がわからず、そうたずね返すと、彼女はつぶやくように答えを返す。
「『オレが、不安にさせてしまったせいだ……』って言うのは、100点満点の答えだっていうこと……」
(いや、なぜ、それが100点の回答なんだ? どういうことだ……?)
ふたたび、彼女の言葉の真意がわからず、その意味を考えあぐねていると、三葉は自分の気持ちを確認するように、解説を始めた。
「わたしの勝手な思い込みなのに……雄司はわたしのことを責めずに、わたしの気持ちに寄り添ってくれたでしょう? それに、雄司に言われて気付いたんだ。わたしは、雄司に会えないことが……雄司を誰かに取られちゃうことが不安だったんだなって……そんな風に、わたしの想いに気付いて、自分でも理解できていなかったわたしの気持ちを気付かせてくれたから、100点満点の答えだって言ってるの!」
最後は、早口になりながらも、自身の想いをコチラにぶつけてくる三葉。
そんな彼女の言葉は、オレ自身を全面的に信頼し、オレの存在を肯定してくれていることがうかがえ、オレの自尊心を満たすのに十分すぎるほどの効果をもたらす。
ただーーーーーー。
オレが彼女に掛けた言葉、そして、その言葉を生むきっかけになったのは、すべて、自分の軽薄で愚かな行為だったことを意識すると、三葉の想いは、より大きな罪悪感となって、オレにのしかかってきた。
オレにとっての『ルートA』、銀河連邦政府の管理番号No.141421356のセカイの白井三葉は、オレを信頼し、全力で好意を向けてくれる、ある意味で、男子高校生にとっての理想の女子だ。
ただ、それは、オレが、自分自身の都合が良いように、いくつものセカイを股にかけて、何度もやり直しを経験したうえで成り立っている関係に過ぎないとも言える(すでに、自分の目で確認したように、彼女は、オレと交際していないどころか、三葉他の男性と付き合ったりしているセカイも数多く存在している)。
このセカイ(=『ルートA』)のオレと三葉の関係は、言ってみれば、はじめたばかりのスマホのゲームで、理想的な初回特典カードを手に入れるために、何度もインストールとアンインストールを繰り返すリセットマラソンを行って手に入れた最強の初回デッキのようなモノだ。
本来ならやり直しの効かない人生において、こんなリセマラ的な行為で得られた好意に、どれ程の価値があるのか――――――と、オレは今さらながらに、自問をせざるを得ない。
しかし、そんなオレの後悔をよそに、一途な彼女は、こんな提案をしてきた。
「あ~、こうして通話してたら、やっぱり、雄司に会いたくなっちゃった! ねぇ、ちょっと、遅い時間だけど、これから、外で会えない?」
自室の壁掛け時計を確認すると、時計の針は九時前を指していたが――――――。
オレと会えないことで不安を感じてしまっているという三葉の信頼に応えるためにも、彼女への返答の選択肢は、ひとつしかなかった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる