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第2章〜Everything Everyone All At Once〜⑧
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ついさっきまでは、親友や先輩の姿をした謎の組織に所属するふたりの素性が気になり、彼らにとってオレの取っていた行動が問題視されないものなのか、心配していたのだが……。
一気に現実味の無い話しが飛び出してきて、正直なところ、あ然としてしまう。
自分たちの通う学校に、過激派が潜入だとーーーーーー?
声に出すと、バカバカしさが、より一層、際立ってしまうように感じられたので、口には出さず、もう一度、頭の中で、冬馬いや、ゲルブと呼ばれた同年代男子の言葉を繰り返す。
自分たちの通う学校に、過激派が潜入ーーーーーー。
何度、考えても、その現実感の無さに、乾いた笑いが込み上げてきそうになる。
幼稚園バスを襲う悪の秘密結社でもあるまいし、なぜ、過激派とやらが、平凡な公立高校を狙うんだ?
よくある妄想ばなしのように、授業をサボって屋上で昼寝でもしていれば、オレだけ難を逃れて、単独でクラス全員を解放する活躍でも出来たりするのだろうか?
そんな愚にもつかないことを考えていることが、こちらの表情から伝わったのだろうか、醒めた表情のゲルブが、釘をさすように、彼の見解を付け加えてきた。
「現実味がなくて、とても信じられないって顔をしてるけど……玄野雄司、この状況は、キミが招いたことでもあるんだからね?」
その一言に、オレの心臓は、ふたたびドクン――――――と、イヤな音を立てる。
「オレが、この状況を生んだ……って、どういうことなんだ?」
その質問には、「それはね……」と、ゲルブに代わって、ブルームが答える。
「並行世界を移動することのできる能力を私たち銀河連邦では『トリップ』、能力者のことを『トリッパー』と呼んでいるんだけど、通常、この能力は、連邦政府が許可を与えた者だけが特殊な手術を行って使えるようになるものなの。ところが、並行世界の監視を行う管理局が、自分たちの認知していなかった場所で、何度もセカイ間を移動している存在がいることを発見した」
「それが、オレだって訳か……」
こちらの問いかけに、ブルームは、ゆっくりとうなずく。
「銀河連邦政府の公式的見解としては、並行世界の存在や移動については、自分たちの管理のもと、穏便に行おうというものなんだけど……大衆の中には、自分たちのセカイに脅威をもたらすかも知れない他のセカイそのものを抹消し、並行世界を移動する能力を持つ人間も根絶やしにしようと考える人たちもいるの」
「それって、さっき言ってた『ラディカル』とか言う奴らか?」
先輩の姿の女子生徒は、ふたたびうなずいて、説明を続ける。
「『ラディカル』のメンバーは、私たちのような政府公認の『トリッパー』以上に、イレギュラーなカタチで能力に目覚め貴方という存在を危険視しているようなの。そこで、彼らが考えるのは――――――」
彼女は、そこまで語り、あとはそちらで察しろ、と視線を送ってきた。
もう、何度目になるだろう、また、背中に冷たい汗が流れる。
「もしかして、オレは、『ラディカル』のヤツらに命を狙われていたりするのか?」
「最悪の場合、彼らがその手段に出ることは、十分に考えられる。そして、その対象は、玄野雄司くん、貴方だけでなく、貴方と親しい人たちも含まれている……と、私たちは、考えているの」
淡々と語るブルームの口調に対して、冷静さを欠いたオレは、思わず声を荒げてしまう。
「そんな! 三葉たちは、関係ないだろ!?」
いや、自分でも、目の前のふたりに、そんな抗議の声を上げても意味がないことくらいは理解しているのだが……。
そんなオレのココロの内を察したかのように、ゲルブが、彼らの見解を述べる。
「キミも、理解しているとは思うけど、これは、あくまで『ラディカル』のメンバーたちの考えだからね。各セカイの強制的統合を目論む彼らにとって、『トリッパー』の中でもイレギュラーな存在であるキミは、今すぐにでも排除したい対象だ。そして、それは、キミの行動に大きく影響を受けた周りの人たちも同様なんだ。実際、彼女たちは、自分の記憶やキミとの関係に疑問を持ち始めているだろう? 玄野雄司の能力が目覚めた条件が解明されない限り、彼女たちにも同じ能力が発現しないとも限らないからね。あるいは、彼女たちに近づくことで、キミ自身と接触する機会を格段に増やすことができる――――――」
「それなら、三葉や河野、桃に早く、このことを伝えないと!」
幼なじみやクラス委員、同居人の身を案じたオレは、立ち上がって彼女たちの元へと急ごうとするが、冬馬の姿をした男子生徒は、悠然とした口調で、
「まあまあ……そんなに焦んなくても大丈夫だよ」
と、オレを諭すように語りかけてくる。
「大丈夫って、ナニを根拠に、そんな悠長なことを言ってるんだ!? 校内には、『ラディカル』ってヤツらが潜んでるんだろう?」
「それを見越して、もう手は打ってある。ボクたちの組織の人間が、彼女たちの身辺を警護する役についているんだ。白井さんには宮尾さんが、河野さんと浅倉さんには山竹さんが、それぞれ警護をしながら、相手の出方を探っているから、ご心配なく」
焦る気持ちは変わらないものの、友人の声をとおして語られるその内容に、オレは、少しだけ安堵した。
一気に現実味の無い話しが飛び出してきて、正直なところ、あ然としてしまう。
自分たちの通う学校に、過激派が潜入だとーーーーーー?
声に出すと、バカバカしさが、より一層、際立ってしまうように感じられたので、口には出さず、もう一度、頭の中で、冬馬いや、ゲルブと呼ばれた同年代男子の言葉を繰り返す。
自分たちの通う学校に、過激派が潜入ーーーーーー。
何度、考えても、その現実感の無さに、乾いた笑いが込み上げてきそうになる。
幼稚園バスを襲う悪の秘密結社でもあるまいし、なぜ、過激派とやらが、平凡な公立高校を狙うんだ?
よくある妄想ばなしのように、授業をサボって屋上で昼寝でもしていれば、オレだけ難を逃れて、単独でクラス全員を解放する活躍でも出来たりするのだろうか?
そんな愚にもつかないことを考えていることが、こちらの表情から伝わったのだろうか、醒めた表情のゲルブが、釘をさすように、彼の見解を付け加えてきた。
「現実味がなくて、とても信じられないって顔をしてるけど……玄野雄司、この状況は、キミが招いたことでもあるんだからね?」
その一言に、オレの心臓は、ふたたびドクン――――――と、イヤな音を立てる。
「オレが、この状況を生んだ……って、どういうことなんだ?」
その質問には、「それはね……」と、ゲルブに代わって、ブルームが答える。
「並行世界を移動することのできる能力を私たち銀河連邦では『トリップ』、能力者のことを『トリッパー』と呼んでいるんだけど、通常、この能力は、連邦政府が許可を与えた者だけが特殊な手術を行って使えるようになるものなの。ところが、並行世界の監視を行う管理局が、自分たちの認知していなかった場所で、何度もセカイ間を移動している存在がいることを発見した」
「それが、オレだって訳か……」
こちらの問いかけに、ブルームは、ゆっくりとうなずく。
「銀河連邦政府の公式的見解としては、並行世界の存在や移動については、自分たちの管理のもと、穏便に行おうというものなんだけど……大衆の中には、自分たちのセカイに脅威をもたらすかも知れない他のセカイそのものを抹消し、並行世界を移動する能力を持つ人間も根絶やしにしようと考える人たちもいるの」
「それって、さっき言ってた『ラディカル』とか言う奴らか?」
先輩の姿の女子生徒は、ふたたびうなずいて、説明を続ける。
「『ラディカル』のメンバーは、私たちのような政府公認の『トリッパー』以上に、イレギュラーなカタチで能力に目覚め貴方という存在を危険視しているようなの。そこで、彼らが考えるのは――――――」
彼女は、そこまで語り、あとはそちらで察しろ、と視線を送ってきた。
もう、何度目になるだろう、また、背中に冷たい汗が流れる。
「もしかして、オレは、『ラディカル』のヤツらに命を狙われていたりするのか?」
「最悪の場合、彼らがその手段に出ることは、十分に考えられる。そして、その対象は、玄野雄司くん、貴方だけでなく、貴方と親しい人たちも含まれている……と、私たちは、考えているの」
淡々と語るブルームの口調に対して、冷静さを欠いたオレは、思わず声を荒げてしまう。
「そんな! 三葉たちは、関係ないだろ!?」
いや、自分でも、目の前のふたりに、そんな抗議の声を上げても意味がないことくらいは理解しているのだが……。
そんなオレのココロの内を察したかのように、ゲルブが、彼らの見解を述べる。
「キミも、理解しているとは思うけど、これは、あくまで『ラディカル』のメンバーたちの考えだからね。各セカイの強制的統合を目論む彼らにとって、『トリッパー』の中でもイレギュラーな存在であるキミは、今すぐにでも排除したい対象だ。そして、それは、キミの行動に大きく影響を受けた周りの人たちも同様なんだ。実際、彼女たちは、自分の記憶やキミとの関係に疑問を持ち始めているだろう? 玄野雄司の能力が目覚めた条件が解明されない限り、彼女たちにも同じ能力が発現しないとも限らないからね。あるいは、彼女たちに近づくことで、キミ自身と接触する機会を格段に増やすことができる――――――」
「それなら、三葉や河野、桃に早く、このことを伝えないと!」
幼なじみやクラス委員、同居人の身を案じたオレは、立ち上がって彼女たちの元へと急ごうとするが、冬馬の姿をした男子生徒は、悠然とした口調で、
「まあまあ……そんなに焦んなくても大丈夫だよ」
と、オレを諭すように語りかけてくる。
「大丈夫って、ナニを根拠に、そんな悠長なことを言ってるんだ!? 校内には、『ラディカル』ってヤツらが潜んでるんだろう?」
「それを見越して、もう手は打ってある。ボクたちの組織の人間が、彼女たちの身辺を警護する役についているんだ。白井さんには宮尾さんが、河野さんと浅倉さんには山竹さんが、それぞれ警護をしながら、相手の出方を探っているから、ご心配なく」
焦る気持ちは変わらないものの、友人の声をとおして語られるその内容に、オレは、少しだけ安堵した。
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