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第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑨
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ルートB・河野雅美の場合
長年、密かに想いを寄せていた三葉への告白が成功したことで、自分という存在に自信を持つことができたオレは、他の女子との関係にも興味が湧いてきた。
いま、オレの心の一部を占めている河野雅美は、高校に入学してから二年続けて同じクラスになったクラスメートだ。
入学式の当日、担任から配られたプリントを手渡す際、
「ねぇ、あなたの名前は玄野くんであってる? ご近所さんだね! 一年間ヨロシクお願いします」
と、彼女は軽く会釈をし、優しく微笑んでくれた。
積極的な性格になり、歌唱動画の投稿やSNSでの発信など、なんにでもアグレッシブに挑戦していく三葉をまぶしく感じていた自分にとって、少し控えめな性格ながらも、クラスの仕事や吹奏楽部で活動をする河野の姿は健気に感じられ、いつからか、彼女を応援したいと思うようになっていた。
そして、一年生の二学期のとき、オレは、彼女とともにクラス委員に推薦されたのだが、そのとき、河野雅美と過ごす時間が増えることに、密かに喜びを感じている自分に気づいた。
クラス委員の仕事を一緒にするようになってからは、彼女の真面目な仕事ぶりや、クラス全体に配慮した言葉には尊敬の念を感じるようになった。
また、彼女は教職員や先輩からの信任もあつく、次期生徒会のメンバー入りが期待されているそうだ。
何事にも、いまひとつ自信が持てなかった当時のオレは、放課後の教室でテキパキと委員の仕事をこなしつつ、
「ゴメンね、玄野くん……部活が忙しいのに、付き合ってもらって……」
と、自分の事情よりも、コチラを気遣う言葉をかけてくれる彼女の優しい人柄を感じながら、
(こういうシッカリした女子は、それに相応しい男子と付き合うんだろうな……)
などと考えていた。
陽キャラそのもので、クラスの中心人物そのものの三葉はもちろん、責任感と他人への思いやりにあふれる河野のような女子と交際する相手は、どんなスペックのオトコなんだろう……と、想像することしかできなかった自分だが――――――。
文字どおり、セカイを股にかけた試行錯誤の末、三葉との交際にこぎつけたオレは、
「もし、河野雅美と付き合うことができたら……は、自分にどんな表情を見せてくれるんだろう?」
という好奇心を抑えることができなくなっていた。
こうして、同じクラス委員の仕事をこなすクラスメートに興味を抱くようになったオレは、文化祭までの成功体験を元に、ふたたび、『セカイ・システム』にアクセスする。
なるべく、自分と彼女が良い雰囲気になっているセカイを探し出し、『ルートB・河野雅美』というタイトルでブックマークを付け、クラス委員への心理的接近を始めようとした。
――――――のだが。
動画投稿サイトやSNSを中心にして、盛んに恋愛がらみの情報発信を行い、別のセカイでは、幼なじみであるオレの相談に応じて、その恋愛観を余すことなく開示してくれた三葉 & ミツバと違い、個人の価値観を広く世界にアピールする訳でもなければ、クラス委員としての接点しかなく、自分と色恋沙汰に関する話しをする程の仲ではない河野雅美が、異性との恋愛について、どんな価値観を持っているか、そして、それをどのように調査すべきか、まるで、検討がつかなかった。
ここは、放送・新聞部の部員として、一年半以上に渡って、取材を通じて校内にさまざまな人脈を作ってきた経験を活かすしかない。
河野雅美のことを良く知り、彼女自身が、信頼を寄せている相手は、吹奏楽部の副部長にして、生徒会長を務める琴吹美菜子先輩と、彼女の親友である文芸部の山竹碧だ。
情報収集をするなら、このふたりの中でも、前者の琴吹先輩の方が適していると判断する。
同じクラスの山竹は、いかにも文学少女といった感じの女子生徒で、男子と気安く話してくれるようなタイプではない。
また、男子としては例外的に彼女と比較的よく話している冬馬によれば、山竹碧は、軽々しく友人のことを他人に話すように生徒ではないという。
一方、オレがこれまで各クラブへの取材で得た知見では、生徒会長にして吹奏楽部副部長の琴吹先輩は、コチラがオープンな気持ちで話しを聞こうという態度を取れば、ざっくばらんに色々なことを話してくれるうえに、部員たちの色恋沙汰にも興味津々といった感じでクビをツッコミたがるタイプだ。
以前、新聞部の取材のついでに、絶対に記事にしない、と約束したうえで、あいらんど高校では珍しく、男女混合かつ大所帯の部員数を誇る吹奏楽部の恋愛事情について、彼女に聞いたことあるのだが、そのときに、恋愛関係に発展しやすい楽器のパートや、交際が始まってからの男女のチカラ関係など、興味深い話しを聞かせてくれた。
さらに、琴吹先輩が、同じユーフォニアムのパートを務める河野に目をかけていることは、彼女のこれまでの言動から、うかがうことができた。
河野雅美と、お近づきになるためのメイン・ルートである『ルートB』の近くに位置するいくつかの惑星で、オレは新しい取材活動を開始した。
長年、密かに想いを寄せていた三葉への告白が成功したことで、自分という存在に自信を持つことができたオレは、他の女子との関係にも興味が湧いてきた。
いま、オレの心の一部を占めている河野雅美は、高校に入学してから二年続けて同じクラスになったクラスメートだ。
入学式の当日、担任から配られたプリントを手渡す際、
「ねぇ、あなたの名前は玄野くんであってる? ご近所さんだね! 一年間ヨロシクお願いします」
と、彼女は軽く会釈をし、優しく微笑んでくれた。
積極的な性格になり、歌唱動画の投稿やSNSでの発信など、なんにでもアグレッシブに挑戦していく三葉をまぶしく感じていた自分にとって、少し控えめな性格ながらも、クラスの仕事や吹奏楽部で活動をする河野の姿は健気に感じられ、いつからか、彼女を応援したいと思うようになっていた。
そして、一年生の二学期のとき、オレは、彼女とともにクラス委員に推薦されたのだが、そのとき、河野雅美と過ごす時間が増えることに、密かに喜びを感じている自分に気づいた。
クラス委員の仕事を一緒にするようになってからは、彼女の真面目な仕事ぶりや、クラス全体に配慮した言葉には尊敬の念を感じるようになった。
また、彼女は教職員や先輩からの信任もあつく、次期生徒会のメンバー入りが期待されているそうだ。
何事にも、いまひとつ自信が持てなかった当時のオレは、放課後の教室でテキパキと委員の仕事をこなしつつ、
「ゴメンね、玄野くん……部活が忙しいのに、付き合ってもらって……」
と、自分の事情よりも、コチラを気遣う言葉をかけてくれる彼女の優しい人柄を感じながら、
(こういうシッカリした女子は、それに相応しい男子と付き合うんだろうな……)
などと考えていた。
陽キャラそのもので、クラスの中心人物そのものの三葉はもちろん、責任感と他人への思いやりにあふれる河野のような女子と交際する相手は、どんなスペックのオトコなんだろう……と、想像することしかできなかった自分だが――――――。
文字どおり、セカイを股にかけた試行錯誤の末、三葉との交際にこぎつけたオレは、
「もし、河野雅美と付き合うことができたら……は、自分にどんな表情を見せてくれるんだろう?」
という好奇心を抑えることができなくなっていた。
こうして、同じクラス委員の仕事をこなすクラスメートに興味を抱くようになったオレは、文化祭までの成功体験を元に、ふたたび、『セカイ・システム』にアクセスする。
なるべく、自分と彼女が良い雰囲気になっているセカイを探し出し、『ルートB・河野雅美』というタイトルでブックマークを付け、クラス委員への心理的接近を始めようとした。
――――――のだが。
動画投稿サイトやSNSを中心にして、盛んに恋愛がらみの情報発信を行い、別のセカイでは、幼なじみであるオレの相談に応じて、その恋愛観を余すことなく開示してくれた三葉 & ミツバと違い、個人の価値観を広く世界にアピールする訳でもなければ、クラス委員としての接点しかなく、自分と色恋沙汰に関する話しをする程の仲ではない河野雅美が、異性との恋愛について、どんな価値観を持っているか、そして、それをどのように調査すべきか、まるで、検討がつかなかった。
ここは、放送・新聞部の部員として、一年半以上に渡って、取材を通じて校内にさまざまな人脈を作ってきた経験を活かすしかない。
河野雅美のことを良く知り、彼女自身が、信頼を寄せている相手は、吹奏楽部の副部長にして、生徒会長を務める琴吹美菜子先輩と、彼女の親友である文芸部の山竹碧だ。
情報収集をするなら、このふたりの中でも、前者の琴吹先輩の方が適していると判断する。
同じクラスの山竹は、いかにも文学少女といった感じの女子生徒で、男子と気安く話してくれるようなタイプではない。
また、男子としては例外的に彼女と比較的よく話している冬馬によれば、山竹碧は、軽々しく友人のことを他人に話すように生徒ではないという。
一方、オレがこれまで各クラブへの取材で得た知見では、生徒会長にして吹奏楽部副部長の琴吹先輩は、コチラがオープンな気持ちで話しを聞こうという態度を取れば、ざっくばらんに色々なことを話してくれるうえに、部員たちの色恋沙汰にも興味津々といった感じでクビをツッコミたがるタイプだ。
以前、新聞部の取材のついでに、絶対に記事にしない、と約束したうえで、あいらんど高校では珍しく、男女混合かつ大所帯の部員数を誇る吹奏楽部の恋愛事情について、彼女に聞いたことあるのだが、そのときに、恋愛関係に発展しやすい楽器のパートや、交際が始まってからの男女のチカラ関係など、興味深い話しを聞かせてくれた。
さらに、琴吹先輩が、同じユーフォニアムのパートを務める河野に目をかけていることは、彼女のこれまでの言動から、うかがうことができた。
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