パラレル to LOVEる〜多元世界でハーレム生活を堪能していたら彼女たちがひとつの世界線に集まってきました〜

遊馬友仁

文字の大きさ
上 下
5 / 75

第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜③

しおりを挟む
「夏休みの活動のことなんだけどさ~」

 こちらの返事を待たずに、相談事とやらを切り出してきたのは、浅倉桃あさくらもも
 
 中学校の放送部の時から付き合いのある後輩の女子生徒だ。

 オレや友人の黄田冬馬きだとうま、上級生である荒金桜花あらがねおうか先輩を追いかけて――――――というわけではないのかも知れないが、四月から、自分たちの通う、あいらんど高校に進学し、再び中学時代と同じようにオレたちと一緒に活動している。

 だが――――――。

 いくら、彼女とオレが親しく話す仲であるとは言え、無断で自宅に上がって、遠慮なしに自室に入ってくるような関係性を築いた覚えはない。

 おまけに、「お兄ちゃん」という呼び方は、何事か?

 いや、、中学校の頃、彼女と一緒に出演していた校内放送(ラジオのトーク番組形式のモノだった)で、

「女子から呼ばれてみたい呼称といえば、やっぱり、『お兄ちゃん』だよな! 可愛らしい声の女の子に、そう呼んでもらえるサブスクのサービスがあれば、ひと月に二千円まで課金しても構わん!」

という発言をして、その結果、向かい合って語り合う彼女に、

「うっわ! キモッ!! センパイ、前々から言ってますけど、そんなんだから、校内の女子にを見るような目で見られるんですよ?」

と、虫けらに送るような視線で、ドン引きされたことはある気がするのだが……。

 混乱する思考に脳内処理が追いつかず、呆けたように自分を見つめるオレのようすに気がついたのか、彼女の表情は怪訝なモノに変わり、こちらに語りかけてくる。

「なによ、そんな不審者を見るような目つきで……ちゃんと、ノックもしたし、同居人が部屋に入ってくるのが、そんなに不満なの? それとも、真っ昼間から、コソコソと女子に言えないようなことをしてたとか? いやらしい……」

 毒舌と言っても良い言葉で一方的にまくし立てるそのようすは、記憶のとおりなのだが、彼女の言葉の中に、捨ておけないフレーズがあることを、オレは聞き逃さなかった。

「なあ、桃……って、どういうことだ……?」

「ちょっと……いま、そんなこと言う? ネタとしては、ツッコミ甲斐がないくらいつまんないし、暑さボケじゃなければ、普通にショックなんだけど……」

「いや、スマン……事故で入院してたし、ちょっと混乱してるのかも知らん」

「ハァ!? 事故で入院? なに言ってんの? 夢の話しなら後にしてよ! もういい!」

 そう言ってから、彼女は、

「司さ~ん、ちょっと来て! お兄ちゃんが変なこと言ってるよ~」

と、バタバタと部屋を出て行った。

(いや、入院先の病院には、桃も見舞いに来てくれてたじゃないか……)

 自室から姿を消した彼女に返そうとした言葉を発する機会を失ったので、立ち去った後輩女子の言動を思い返し、自分の記憶との整合性を取ろうとしていたところ、パタパタと足音を立て、桃は母親をともなって、オレの自室に戻ってきた。

「さっきも、外から戻ってきてフラフラと部屋に上がって行ったと思ったら……雄司ゆうじ、熱でもあるの?」

 部屋に入ってきた母は、心配そうな顔で、手のひらをオレの額に当ててくる。

「触った感じは熱くないみたいだけど……」

 そう言いながら、彼女は持ってきた体温計(いつもながら準備の良いことだ)をオレに手渡し、脇に挟むようにうながす。
 母親に言われ、体温計を左腕の脇に挟んだオレが、

「熱よりも、事故で頭を打ったことの方が心配なんだけど……」

と、つぶやくと、後輩の女子は、ウチの母親に語りかける。

「ね、変なこと言ってるでしょ? 事故がどうとか……」

 桃の言葉に母も、うなずきながら、オレに問いかけてきた。

「たしかに……雄司ゆうじ、アンタいつ事故に遭ったの?」

「いや……いつって……母さんも桃も、オレが入院してた病院に来てくれたじゃないか!」

 さっき、桃に言えなかった反論を行うと、目の前の二人は、不思議そうに顔を見合わせている。

「入院……? 寝ぼけてるじゃなければ、桃ちゃんの言うように、こりゃ、ホントに熱中症の暑さボケかな? 後遺症が出る前に救急車を呼ばないと……」

 今度は、不安げな表情で、リビングにスマホを取りに戻ろうとする母を制するように、「ちょっと待って!」と声をかける。

「体調は問題ないんだけど、冷静に思い出したいから、ちょっと、いまの状況を確認させてくれないか?」

 なるべく落ち着いた口調になるよう心がけて、そう提案すると、二人はうなずいて、オレの要望を受け入れてくれた。

 母親と桃の話しによると、浅倉桃が、我が家に同居することになったのは、彼女の両親が仕事の関係で海外移住しなければならなくなったからだそうだ。

 数年後には、日本に戻ってくることが前提なので、桃は国内に留まることになり、その間、仕事で繋がりのある母親が彼女を我が家に住まわせることを申し出たという。

 その際、母と桃の間で、

・母親のことを「つかささん」と名前で呼ぶこと。
・オレのことを「お兄ちゃん」と呼ぶこと。

が、取り決められたということだ。

「くろセンパイのこと『お兄ちゃん』って呼ぶなんて、最初はめっちゃ抵抗があったんだから……ようやく、慣れたと思ったら、こんな風に言われるなんてねぇ……」

 心外だと言わんばかりにため息をつく、桃のようすを見ながら、いつもは生意気な口をきいてくる後輩女子が、照れくさそうに、

「お兄ちゃん……」

と、呼びかけてくる姿を想像し、その思春期男子の心を鷲掴みにする破壊力に、思わず悶絶しそうになってしまった。

(クッ……なぜ、オレはその現場に居合わせなかったんだ……)

 後悔しつつも、心配をかけてしまった二人には、素直に感謝と謝罪の気持ちをを伝えることにする。

「ありがとう……なんか、変なことを口走ってしまって申し訳ない……」

 そう言いながら、困った時のいつもの癖で、つい後頭部に手を添えると――――――。
 
 またも、オレの目の前に巨大な惑星があらわれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...