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第14章~Bascket Case~②
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「亜莉寿と話しておきたいことっていうのは、二人が出会った時からの思い出話しみたいなものなんやけど───。こうして、二人で話せる機会は、もしかすると、もうないかも知れないから……」
彼が、慎重に切り出すと、
「そう、ね───。それに、私たち二人のことなら、私にしか話せないこともあると思うし……」
亜莉寿も、彼女なりに思うところがあるのか、秀明に同意する。
それを聞いた秀明は、嬉しそうな笑顔で
「ありがとう!亜莉寿は、最初に二人が会った時のこと覚えてる?」
亜莉寿にたずねる。
「もちろん!一昨年の夏休みに、叔父さんのお店《ビデオ・アーカイブ》で、私が店番をしてた時だったよね」
「うん!ジョン・ヒューズ関連作品の『恋しくて』を探していたら、店員のお姉さんに声を掛けられて───」
「確か、夕立か何か、大雨が降ってたよね」
「そうそう!それで、雨宿りをさせてもらいながら、ジョン・ヒューズの映画について話し合ってさ」
「うん!『ブレックファスト・クラブ』のあのセリフ……」
「「『大人になると心が死ぬもの』」!!」
「二人の声が重なった時は、何だか可笑しくなって、笑っちゃった」
亜莉寿は、そう言って、その時のことを思い出したのか、またクスクス笑い出した。
彼女の楽しそうな様子を眺めながら、秀明は、
「あのセリフをハモったからかも知らんけど、すごく店員のお姉さんに親近感が湧いてさ……。その後も、亜莉寿のジョン・ヒューズ作品の映画評を聞かせてもらいながら、『このヒトは、将来、映画評論家になれるな~』って思ってた」
と、当時を振り返りながら話す。
「そうだったんだ───。何だか、ちょっと照れるな~」
亜莉寿は、面映ゆいといった様子で、長い髪の毛先をクルクルと触る。
「自分としては、あの後も、『もう一度お姉さんに会いたいな~』って思ってたことをブンちゃんに暴露されてしまったけど……」
照れくさそうに目尻を掻きながら秀明は、つぶやいた。
「そうだったね!坂野クンが、そのことを教えてくれた時の有間クンの表情は、今でも思い出せるよ」
表情を一変させて、今度はニヤニヤと微笑む亜莉寿。
「それは、もう忘れてほしいわ───。オレが話したんやから、亜莉寿も、あの夏の日、映画について語り合った相手に対して、どう思ってたか聞かせて」
秀明が要求すると、
「まあ、有間クン程じゃないかも知れないけど、《ビデオ・アーカイブ》のお姉さんとしても、また、この男の子と映画について、話せたら楽しいだろうな、って思ってたよ───」
亜莉寿は、そう答えた後に一拍おいて、
「だから、四月の最初のホームルームで、同じクラスの男子が自己紹介をして、あの夏の日の男の子と同じ名前を名乗った時は、本当にビックリしたもの……」
と、当時の心境を語る。そして、さらに一拍おいて、
「まあ、その後、私も自己紹介で映画が好きなことをアピールしたのに、誰かさんには、一ヶ月半も放置されたんですけどね───(微笑)」
久々に自分に向けられた《ダークネス・アリス・スマイリング(吉野亜莉寿の暗黒微笑)レベル1》に、秀明は、
「……」
しばし硬直する。そして、
「あらためて、その節は、本当に申し訳ございませんでした」
土下座をせんばかりの勢いで、謝罪した。
その様子を見た、亜莉寿はクスクスと可笑しそうに笑いながら、
「あの時は、『どうして、私に気付かないの!』って、ホントに腹が立ってたんだけど───。良く考えたら、会員カードで名前を知ってた私と違って、有間クンは、私の名前を知り様がなかったもんね」
そう言って、フォローしてくれる彼女に、秀明は
「それもあるけど……。お店で働いているのが、中学生とは思わなかったし───。あと、自分は中学生なりに映画の知識や見方に対して自信を持っていたけど、自分より遥かに映画に詳しくて、深い見方ができるヒトが、同じ中学生だとは考えられなかったっていうのが、大きいかな、と思う」
懐かしそうに、当時の想いを語った。
「そんな風に思ってたんだ……」
と、秀明の言葉を聞いた亜莉寿は、反応し、
「やっぱり、もっと早く私が声を掛けておけば良かったのかな?」
と、独り言の様にポツリとつぶやいた。
「いや、それは、自分の周りの環境を考えると、難しかったやろうなぁ。クラスで話してる時のオレとブンちゃん達の周りの雰囲気って、独特やろ?」
苦笑いしながら、秀明は亜莉寿をフォローし、
「あの空気に割って入って来れる女子は、元々の知り合いのショウさんか、あとは───、ケタ外れのコミュニケーション能力を持ってるA組の朝日奈さんくらいやわ」
おどけた様な表情で締めくくった。
彼が、慎重に切り出すと、
「そう、ね───。それに、私たち二人のことなら、私にしか話せないこともあると思うし……」
亜莉寿も、彼女なりに思うところがあるのか、秀明に同意する。
それを聞いた秀明は、嬉しそうな笑顔で
「ありがとう!亜莉寿は、最初に二人が会った時のこと覚えてる?」
亜莉寿にたずねる。
「もちろん!一昨年の夏休みに、叔父さんのお店《ビデオ・アーカイブ》で、私が店番をしてた時だったよね」
「うん!ジョン・ヒューズ関連作品の『恋しくて』を探していたら、店員のお姉さんに声を掛けられて───」
「確か、夕立か何か、大雨が降ってたよね」
「そうそう!それで、雨宿りをさせてもらいながら、ジョン・ヒューズの映画について話し合ってさ」
「うん!『ブレックファスト・クラブ』のあのセリフ……」
「「『大人になると心が死ぬもの』」!!」
「二人の声が重なった時は、何だか可笑しくなって、笑っちゃった」
亜莉寿は、そう言って、その時のことを思い出したのか、またクスクス笑い出した。
彼女の楽しそうな様子を眺めながら、秀明は、
「あのセリフをハモったからかも知らんけど、すごく店員のお姉さんに親近感が湧いてさ……。その後も、亜莉寿のジョン・ヒューズ作品の映画評を聞かせてもらいながら、『このヒトは、将来、映画評論家になれるな~』って思ってた」
と、当時を振り返りながら話す。
「そうだったんだ───。何だか、ちょっと照れるな~」
亜莉寿は、面映ゆいといった様子で、長い髪の毛先をクルクルと触る。
「自分としては、あの後も、『もう一度お姉さんに会いたいな~』って思ってたことをブンちゃんに暴露されてしまったけど……」
照れくさそうに目尻を掻きながら秀明は、つぶやいた。
「そうだったね!坂野クンが、そのことを教えてくれた時の有間クンの表情は、今でも思い出せるよ」
表情を一変させて、今度はニヤニヤと微笑む亜莉寿。
「それは、もう忘れてほしいわ───。オレが話したんやから、亜莉寿も、あの夏の日、映画について語り合った相手に対して、どう思ってたか聞かせて」
秀明が要求すると、
「まあ、有間クン程じゃないかも知れないけど、《ビデオ・アーカイブ》のお姉さんとしても、また、この男の子と映画について、話せたら楽しいだろうな、って思ってたよ───」
亜莉寿は、そう答えた後に一拍おいて、
「だから、四月の最初のホームルームで、同じクラスの男子が自己紹介をして、あの夏の日の男の子と同じ名前を名乗った時は、本当にビックリしたもの……」
と、当時の心境を語る。そして、さらに一拍おいて、
「まあ、その後、私も自己紹介で映画が好きなことをアピールしたのに、誰かさんには、一ヶ月半も放置されたんですけどね───(微笑)」
久々に自分に向けられた《ダークネス・アリス・スマイリング(吉野亜莉寿の暗黒微笑)レベル1》に、秀明は、
「……」
しばし硬直する。そして、
「あらためて、その節は、本当に申し訳ございませんでした」
土下座をせんばかりの勢いで、謝罪した。
その様子を見た、亜莉寿はクスクスと可笑しそうに笑いながら、
「あの時は、『どうして、私に気付かないの!』って、ホントに腹が立ってたんだけど───。良く考えたら、会員カードで名前を知ってた私と違って、有間クンは、私の名前を知り様がなかったもんね」
そう言って、フォローしてくれる彼女に、秀明は
「それもあるけど……。お店で働いているのが、中学生とは思わなかったし───。あと、自分は中学生なりに映画の知識や見方に対して自信を持っていたけど、自分より遥かに映画に詳しくて、深い見方ができるヒトが、同じ中学生だとは考えられなかったっていうのが、大きいかな、と思う」
懐かしそうに、当時の想いを語った。
「そんな風に思ってたんだ……」
と、秀明の言葉を聞いた亜莉寿は、反応し、
「やっぱり、もっと早く私が声を掛けておけば良かったのかな?」
と、独り言の様にポツリとつぶやいた。
「いや、それは、自分の周りの環境を考えると、難しかったやろうなぁ。クラスで話してる時のオレとブンちゃん達の周りの雰囲気って、独特やろ?」
苦笑いしながら、秀明は亜莉寿をフォローし、
「あの空気に割って入って来れる女子は、元々の知り合いのショウさんか、あとは───、ケタ外れのコミュニケーション能力を持ってるA組の朝日奈さんくらいやわ」
おどけた様な表情で締めくくった。
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