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第7章~恋人までの距離(ディスクスタンス)~⑧
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秀明が、おどけた様に言うと、舞はいつも以上に真剣に、
「無理に茶化したくなる気持ちもわからなくはないけど、笑いごとじゃないで?」
そして、言外に「わかってるやろうけど」というニュアンスを込めて、語る。
「ウチら単位制は、男子が少ない上に、女子に積極的な人間が、さらに少ないから……。今まで吉野さんにアプローチする人間はいなかったけど、これから先は、どうなるかわからへんで?」
現実を突き付ける様に、淡々と話す舞の言葉に、秀明はうなづくしかない。
「まあ、ブンちゃんの注目のされ方をみると、そうなるよな……。けど、オレには……」
言葉を続けようとする秀明に、
「『自分に、それをどうこう言う資格は無い』って言いたいんやろ?」
まるで、秀明の心を見透かした様に、舞は図星をつく。
「あ……。うん」
秀明は、再びうなづくことしかできない。
言葉の続かない秀明に、舞は再び告げる。
「『なんで、言いたいことがわかったん?』って、顔してるけど、今の有間の立場なら、そう言うしかないやろ?」
「確かに、そうやね……」
肯定する秀明に、
「まあ、仮に、有間が『吉野さんが他の生徒にアプローチされたり、告白されたりするのはイヤや!』って、私に話したところで、私にもどうする事も出来へんから、有間の答えを聞かせてもらいたかった訳じゃないねんけどな……」
舞は、そう語る。
「えっ、じゃあ……」
秀明が疑問の言葉を言い終わらないうちに、
「なんで、こういう話しをしたかったっていうと、有間自身に、自分の気持ちに向き合って欲しかったから」
舞が自らの考えを口にした。
「オレ自身に……?」
「そう。中学の時に有間の話しを聞かせてもらってから、ずっと思ってたんやけど……。もし、有間のそばに魅力的な女子がいた時に、『有間は素直に自分の気持ちに気付くかな?』って。有間は、小学生の時以来、自分自身の恋愛的な気持ちにフタをしてしまったんじゃないか、って思ってたから」
「そ、それは……」
舞の言葉を聞いて、秀明は動悸が早まり、呼吸がしづらくなっていることに気付いた。
「ツラい想いをさせてしまったら、ゴメンやけど……。でも、もし、有間が自分自身の想いに気付けなかったら……。自分の気持ちにケリを付けられなかったら……。どういう結果になるにしても、誰も幸せにならへんと思うから」
舞は一気に話し終えると、一口ドリンクをすすった。
「今日、私が話したかったのは、これだけ。一方的に話しをしてゴメンな。しかも、あんまり聞きたくない話しやったと思うし……」
「いや、ありがとう……。オレのことを考えて話してくれたことはわかるし……。ショウさんも、こんなこと話しにくかったやろ?」
秀明は、感謝の言葉を述べる。
「まあ、話しやすいか、話しにくいかと言えば、話しやすい話しではないな~」
そう言って舞は笑う。
「でも、有間なら聞いてくれると思ってたから―――。それに、私のことも、ちゃんと配慮してくれてるし」
「いや、それは当たり前やろう?」
秀明が、当然といった感じで聞き返すと、
「自分に耳の痛い話しをする相手のことを配慮するって、出来ないヒトも多いと思うけど……。そういうところも含めて信頼してるから、話してみようと思ったんよ」
「ショウさんに、そこまで信頼してもらえてるだけでも嬉しいわ」
笑いながら素直な想いを口にした秀明に、
「まあ、どんな結果になるにしても応援してるから、有間が聞いてほしい話しとかあれば、いつでも遠慮なく言って!相談に乗るから」
「ありがとう……!ショウさんも困ってることがあったら、いつでも言って!オレの方は、話しを聞くくらいしか出来ないかもやけど……」
秀明が、そう言うと、舞は笑って
「気持ちだけ受け取っとくわ」
と、返答した。
会話が一段落すると、秀明は時計を見る。
時計の針が、午後六時をさしているのを確認すると、
「あっ、ゴメン!そろそろ帰らんと」
と帰宅の準備をする。
「夕飯の準備してるんやったっけ?ご苦労様」
舞が声を掛ける。
「うん!今日は、チャーハンで簡単に済ませようと思うけど。それと、貴重なアドバイスありがとう!」
「どういたしまして。私は、もうちょっと残っていくわ」
舞が、告げると、
「了解ッス!ショウさんも、気をつけて帰ってな」
秀明は、そう言って帰って行った。
「無理に茶化したくなる気持ちもわからなくはないけど、笑いごとじゃないで?」
そして、言外に「わかってるやろうけど」というニュアンスを込めて、語る。
「ウチら単位制は、男子が少ない上に、女子に積極的な人間が、さらに少ないから……。今まで吉野さんにアプローチする人間はいなかったけど、これから先は、どうなるかわからへんで?」
現実を突き付ける様に、淡々と話す舞の言葉に、秀明はうなづくしかない。
「まあ、ブンちゃんの注目のされ方をみると、そうなるよな……。けど、オレには……」
言葉を続けようとする秀明に、
「『自分に、それをどうこう言う資格は無い』って言いたいんやろ?」
まるで、秀明の心を見透かした様に、舞は図星をつく。
「あ……。うん」
秀明は、再びうなづくことしかできない。
言葉の続かない秀明に、舞は再び告げる。
「『なんで、言いたいことがわかったん?』って、顔してるけど、今の有間の立場なら、そう言うしかないやろ?」
「確かに、そうやね……」
肯定する秀明に、
「まあ、仮に、有間が『吉野さんが他の生徒にアプローチされたり、告白されたりするのはイヤや!』って、私に話したところで、私にもどうする事も出来へんから、有間の答えを聞かせてもらいたかった訳じゃないねんけどな……」
舞は、そう語る。
「えっ、じゃあ……」
秀明が疑問の言葉を言い終わらないうちに、
「なんで、こういう話しをしたかったっていうと、有間自身に、自分の気持ちに向き合って欲しかったから」
舞が自らの考えを口にした。
「オレ自身に……?」
「そう。中学の時に有間の話しを聞かせてもらってから、ずっと思ってたんやけど……。もし、有間のそばに魅力的な女子がいた時に、『有間は素直に自分の気持ちに気付くかな?』って。有間は、小学生の時以来、自分自身の恋愛的な気持ちにフタをしてしまったんじゃないか、って思ってたから」
「そ、それは……」
舞の言葉を聞いて、秀明は動悸が早まり、呼吸がしづらくなっていることに気付いた。
「ツラい想いをさせてしまったら、ゴメンやけど……。でも、もし、有間が自分自身の想いに気付けなかったら……。自分の気持ちにケリを付けられなかったら……。どういう結果になるにしても、誰も幸せにならへんと思うから」
舞は一気に話し終えると、一口ドリンクをすすった。
「今日、私が話したかったのは、これだけ。一方的に話しをしてゴメンな。しかも、あんまり聞きたくない話しやったと思うし……」
「いや、ありがとう……。オレのことを考えて話してくれたことはわかるし……。ショウさんも、こんなこと話しにくかったやろ?」
秀明は、感謝の言葉を述べる。
「まあ、話しやすいか、話しにくいかと言えば、話しやすい話しではないな~」
そう言って舞は笑う。
「でも、有間なら聞いてくれると思ってたから―――。それに、私のことも、ちゃんと配慮してくれてるし」
「いや、それは当たり前やろう?」
秀明が、当然といった感じで聞き返すと、
「自分に耳の痛い話しをする相手のことを配慮するって、出来ないヒトも多いと思うけど……。そういうところも含めて信頼してるから、話してみようと思ったんよ」
「ショウさんに、そこまで信頼してもらえてるだけでも嬉しいわ」
笑いながら素直な想いを口にした秀明に、
「まあ、どんな結果になるにしても応援してるから、有間が聞いてほしい話しとかあれば、いつでも遠慮なく言って!相談に乗るから」
「ありがとう……!ショウさんも困ってることがあったら、いつでも言って!オレの方は、話しを聞くくらいしか出来ないかもやけど……」
秀明が、そう言うと、舞は笑って
「気持ちだけ受け取っとくわ」
と、返答した。
会話が一段落すると、秀明は時計を見る。
時計の針が、午後六時をさしているのを確認すると、
「あっ、ゴメン!そろそろ帰らんと」
と帰宅の準備をする。
「夕飯の準備してるんやったっけ?ご苦労様」
舞が声を掛ける。
「うん!今日は、チャーハンで簡単に済ませようと思うけど。それと、貴重なアドバイスありがとう!」
「どういたしまして。私は、もうちょっと残っていくわ」
舞が、告げると、
「了解ッス!ショウさんも、気をつけて帰ってな」
秀明は、そう言って帰って行った。
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