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第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑬
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「な・な・な、なんのことだよ、幼なじみキャラの攻略って……」
そのものズバリな指摘に、いつも以上に言葉に詰まりながら返答すると、名和立夏は余裕たっぷりの表情で、自らの推理(というほどハイレベルなモノでもないが……)を披露する。
「私、男性向けのゲームには、あまり詳しくないんだけど……人気ゲームの『ナマガミ』には、桜田志穂子だっけ? そんな名前の『男子の理想像』って言われてるキャラクターが居るんだよね?」
想定もしていないところから図星を突かれたオレの反応を楽しんでいるのか、目の前の相手は、
「あれ? どうしたの黙り込んで……」
と、わざとらしく言ったあと、
「あっ、また、私ナニか言っちゃいました?」
そう語り、クスクスと笑っている。
(おまえの発言は、無自覚ではないだろう……)
本当に、どこまでも性格が悪いオンナだ……。ただ、彼女が言うように、「男子が求める『いつか現れる、理想のお姫様』像」とされるキャラクターのイラストが、現在、オレの積みゲーとなっている『ナマガミ』の桜田志穂子そっくりに描かれた(おそらく女性向けのモノと思われる)雑誌記事が出ていることはたしかだった。
件のイラストいわく、「男子が求める『いつか現れる、理想のお姫様』像」とは……。
・とにかく、癒やしてくれる、一緒にいてやすらぐ
・料理、掃除、アイロンがけ…家事全般が得意
・自分の趣味の話を聞いてくれる
・働いて収入を得てくれる「ただし、家事に支障をきたさない程度に」
・お金には堅実で、チープなデートでも楽しんでくれる
・母のように包みこんでくれて、自分を誉めてくれる
という特長を持っているそうだ。
ただ、ゲーム攻略の共通ルートをプレイした実感では、ここに挙げられた点が、すべて、『ナマガミ』の桜田志穂子に当てはまっている訳ではないと感じる。
それでも、ゲームのキャラクターそっくりに描かれたイラストに、「祐一は、そのままでいいんだよ」と、このゲームの主人公の名前を語らせていることから、少なくとも、このキャラを描いたイラストレーターが、桜田志穂子を想定しているであろうことは、容易に想像できる。
ただし、色々なことが頭をめぐり、おそらく、苦虫を噛み潰したような表情になっているであろうオレの顔を見ながら、名和立夏は、
「あれ? もしかして、ゲームのタイトルまで当たっちゃった感じ? それなら、ゴメンナサイ。別に作品やキャラクターをイジるつもりはなかったのだけど……謝っておくわ」
などと、なぜか、少しだけしおらしく、謝罪してくる。ただ、そんな殊勝な態度を見せたのも一瞬で、「とにかく……」と、彼女は、話題を変えるように言ったあと、
「あなたが、葉月に肩入れするのなら、私も受けて立つつもりだけど……幼なじみ持ちの相手にイレ込みすぎて、余計なことまで背負い込まない様に、気をつけた方がイイわよ?」
と、オレに対して、注意をうながしてきた。
「ご忠告いたみ入るが……オレは、オレの好きなようにさせてもらうさ」
桜田志穂子の件を指摘され、少しばかり焦っていたオレが、なんとか、冷静さを取り戻し、そう返答すると、彼女は、「そう……」と、つぶやいたあと、
「葉月にも、『ねぇ、大成くんのこと、どう思ってるの?』って、何回も聞いたのに……聞き分けの無さは、あなたもあのコと同じね」
と、ため息をもらす。
名和立夏からすれば、なにか重要な忠告をしているつもりなのかも知れないが、あいにく、オレは彼女の言い分に耳を貸すつもりはなかった。
「話しはそれだけか? 他に話しがないなら、オレは帰らせてもらうが……」
そう言って、食堂の席を立とうとすると、正面の相手は、肩をすくめながら、
「女子の話しは、もう少し落ち着いて聞くものじゃない? これだから、モテない男子は……」
と、苦笑するように言う。相変わらず、ヒトをいらだたせる言い方をするヤツだが、このあとに予定があるわけではないので、最後まで相手の話しを聞くことにする。
オレが、席に座り直すと、彼女は細長い人差し指と中指を立てて宣告する。
「話したいことは、あと二つ。それが終わったら、いつでも帰ってくれて良いわ」
不機嫌さを隠すことなく、無言でうなずくオレの態度を気にする様子もなく、名和立夏は、澄ました表情で語る。
「一つ目は、あなたが配信動画にお悩み相談を送った白草四葉ちゃんのこと。先週末の夏祭りの日は、仕事の関係で久々に彼女と会ってきたんだけど……立花クン、あなた四葉ちゃんのファンなのよね? 彼女のSNSの裏アカウントに興味はない?」
仕事の関係で、彼女と会った? 二人に、そんな接点があったのか!? そのことが気になって、思わずたずねてしまう。
「名和、白草さんと知り合いなのか?」
つい、前のめりになって質問すると、彼女はしたり顔で語る。
「偶然、同じ時期に、こっちの地方に引っ越すことになったんだけどね。向こうにいる頃は、良く読者モデルの撮影現場で一緒になったから、それなりに仲良くさせてもらってるの。今回も、往復の新幹線では、ずっと一緒だったし」
「そ、そうなのか……」
オレは、意外なつながりに驚きつつも、「それなりに仲良くさせてもらってる」と語る相手の裏アカウントについて触れるなんて、本当に仲が良いのか? と疑ってしまう。
「けど、裏アカとかには、興味ねぇよ」
オレが、キッパリと断言すると、名和立夏は、残念そうにつぶやく。
「そう? 彼女の素顔を見ることが出来て、面白いのに……」
彼女の素顔? オレのような人間のことを配信動画で誉めてくれる四葉ちゃんは、素顔も天使に決まっているのだ。わざわざ、SNSで、そのことを確認する必要などない。
オレの決意が固いことを理解したのか、目の前の相手は、それ以上、この話しを続けることなく、人差し指を立てて、話題を変える。
「最後のひとつは、私が一番あなたに聞きたかったこと。立花クン、あなた、潮江リッカって言う名前を覚えていない?」
彼女の口から発せられたその名前は、オレが、小学生のときに、もっとも親しく話していた女子のモノだった。
そのものズバリな指摘に、いつも以上に言葉に詰まりながら返答すると、名和立夏は余裕たっぷりの表情で、自らの推理(というほどハイレベルなモノでもないが……)を披露する。
「私、男性向けのゲームには、あまり詳しくないんだけど……人気ゲームの『ナマガミ』には、桜田志穂子だっけ? そんな名前の『男子の理想像』って言われてるキャラクターが居るんだよね?」
想定もしていないところから図星を突かれたオレの反応を楽しんでいるのか、目の前の相手は、
「あれ? どうしたの黙り込んで……」
と、わざとらしく言ったあと、
「あっ、また、私ナニか言っちゃいました?」
そう語り、クスクスと笑っている。
(おまえの発言は、無自覚ではないだろう……)
本当に、どこまでも性格が悪いオンナだ……。ただ、彼女が言うように、「男子が求める『いつか現れる、理想のお姫様』像」とされるキャラクターのイラストが、現在、オレの積みゲーとなっている『ナマガミ』の桜田志穂子そっくりに描かれた(おそらく女性向けのモノと思われる)雑誌記事が出ていることはたしかだった。
件のイラストいわく、「男子が求める『いつか現れる、理想のお姫様』像」とは……。
・とにかく、癒やしてくれる、一緒にいてやすらぐ
・料理、掃除、アイロンがけ…家事全般が得意
・自分の趣味の話を聞いてくれる
・働いて収入を得てくれる「ただし、家事に支障をきたさない程度に」
・お金には堅実で、チープなデートでも楽しんでくれる
・母のように包みこんでくれて、自分を誉めてくれる
という特長を持っているそうだ。
ただ、ゲーム攻略の共通ルートをプレイした実感では、ここに挙げられた点が、すべて、『ナマガミ』の桜田志穂子に当てはまっている訳ではないと感じる。
それでも、ゲームのキャラクターそっくりに描かれたイラストに、「祐一は、そのままでいいんだよ」と、このゲームの主人公の名前を語らせていることから、少なくとも、このキャラを描いたイラストレーターが、桜田志穂子を想定しているであろうことは、容易に想像できる。
ただし、色々なことが頭をめぐり、おそらく、苦虫を噛み潰したような表情になっているであろうオレの顔を見ながら、名和立夏は、
「あれ? もしかして、ゲームのタイトルまで当たっちゃった感じ? それなら、ゴメンナサイ。別に作品やキャラクターをイジるつもりはなかったのだけど……謝っておくわ」
などと、なぜか、少しだけしおらしく、謝罪してくる。ただ、そんな殊勝な態度を見せたのも一瞬で、「とにかく……」と、彼女は、話題を変えるように言ったあと、
「あなたが、葉月に肩入れするのなら、私も受けて立つつもりだけど……幼なじみ持ちの相手にイレ込みすぎて、余計なことまで背負い込まない様に、気をつけた方がイイわよ?」
と、オレに対して、注意をうながしてきた。
「ご忠告いたみ入るが……オレは、オレの好きなようにさせてもらうさ」
桜田志穂子の件を指摘され、少しばかり焦っていたオレが、なんとか、冷静さを取り戻し、そう返答すると、彼女は、「そう……」と、つぶやいたあと、
「葉月にも、『ねぇ、大成くんのこと、どう思ってるの?』って、何回も聞いたのに……聞き分けの無さは、あなたもあのコと同じね」
と、ため息をもらす。
名和立夏からすれば、なにか重要な忠告をしているつもりなのかも知れないが、あいにく、オレは彼女の言い分に耳を貸すつもりはなかった。
「話しはそれだけか? 他に話しがないなら、オレは帰らせてもらうが……」
そう言って、食堂の席を立とうとすると、正面の相手は、肩をすくめながら、
「女子の話しは、もう少し落ち着いて聞くものじゃない? これだから、モテない男子は……」
と、苦笑するように言う。相変わらず、ヒトをいらだたせる言い方をするヤツだが、このあとに予定があるわけではないので、最後まで相手の話しを聞くことにする。
オレが、席に座り直すと、彼女は細長い人差し指と中指を立てて宣告する。
「話したいことは、あと二つ。それが終わったら、いつでも帰ってくれて良いわ」
不機嫌さを隠すことなく、無言でうなずくオレの態度を気にする様子もなく、名和立夏は、澄ました表情で語る。
「一つ目は、あなたが配信動画にお悩み相談を送った白草四葉ちゃんのこと。先週末の夏祭りの日は、仕事の関係で久々に彼女と会ってきたんだけど……立花クン、あなた四葉ちゃんのファンなのよね? 彼女のSNSの裏アカウントに興味はない?」
仕事の関係で、彼女と会った? 二人に、そんな接点があったのか!? そのことが気になって、思わずたずねてしまう。
「名和、白草さんと知り合いなのか?」
つい、前のめりになって質問すると、彼女はしたり顔で語る。
「偶然、同じ時期に、こっちの地方に引っ越すことになったんだけどね。向こうにいる頃は、良く読者モデルの撮影現場で一緒になったから、それなりに仲良くさせてもらってるの。今回も、往復の新幹線では、ずっと一緒だったし」
「そ、そうなのか……」
オレは、意外なつながりに驚きつつも、「それなりに仲良くさせてもらってる」と語る相手の裏アカウントについて触れるなんて、本当に仲が良いのか? と疑ってしまう。
「けど、裏アカとかには、興味ねぇよ」
オレが、キッパリと断言すると、名和立夏は、残念そうにつぶやく。
「そう? 彼女の素顔を見ることが出来て、面白いのに……」
彼女の素顔? オレのような人間のことを配信動画で誉めてくれる四葉ちゃんは、素顔も天使に決まっているのだ。わざわざ、SNSで、そのことを確認する必要などない。
オレの決意が固いことを理解したのか、目の前の相手は、それ以上、この話しを続けることなく、人差し指を立てて、話題を変える。
「最後のひとつは、私が一番あなたに聞きたかったこと。立花クン、あなた、潮江リッカって言う名前を覚えていない?」
彼女の口から発せられたその名前は、オレが、小学生のときに、もっとも親しく話していた女子のモノだった。
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