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第4章〜こっち向いてほしいけれど あきらめることも私なりのファイトでもある〜⑩
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久々知大成から、内密の相談事を持ちかけれたことで、オレには、色々と考えることがあった。今朝の教室での一件は、おそらく、長洲先輩と小田先輩の二人が手を回してくれたことなのだろう。それは、最後に、久々知が、浦風さんの名前を出したことで、なんとなく察しがついた。
上級生も、同級生も、みんな下級生思いだな……と、感じつつ、学年をまたいだ交流をほとんど持っていないオレは、そうした関係性を少しうらやましくも感じる。
(そう言えば、昨日、ワカ姉が、「ポケモン的人生を歩もうと思ったら、ドラクエ的な人生よりも、コミュニケーション能力は、重要だよ」「フリーランスな生き方は、ヒトとのつながりが全てだからね!」なんて言ってたっけ?)
そんなことを考えながら、オレは、この日の放課後に向けての作戦を練る。
浦風さんの独白を聞いて決意を固めたように、オレには、もう一人のクラス委員に、どうしても、伝えなければいけない想いがあった。
久々知と一緒に教室に戻ったあと、オレは、彼女が一人になるタイミングを見計らって、声をかける。
「今日の放課後、なにか予定はあるか? もし、時間があれば、校舎北館の展望フロアに来てほしい」
なるべく、簡潔に用件を伝えたつもりなのだが、相手は目を丸くしながら、ぎこちなく、コクンと一度だけ首をタテに振った。
とりあえず、初手で断られなかったことに安心したものの、午前中のみの短縮授業期間中とは言え、放課後までは、まだ四時間分も授業がある。
彼女に対して、自分の想いをどう伝えようかと悩みながら授業を受けていたため、教壇に立つ教師の声は、まったくと言って良いほど、耳に入って来なかった。
◆
放課後になり、オレは、いつものように存在感を消しながら、教室をあとにする。
今朝、久々知が声をかけて来て、花火大会に誘われてからというもの、先週までと同じようなノリで、話しかけてくるようになった後方の席の塚口マコトも、放課後はなにか用があったのか、オレに絡んでくることはなかった。
他のクラスメートの妨害が入らなかった幸運に感謝しつつ、オレは、彼女より先に、自分で指定した校舎北館の展望フロアに足を運ぶ。女子と一対一で向き合い、自分の想いを告げるという行動自体、自分の人生で初めてのことなので、緊張感は、ハンパではない。
考えてみれば、小学時代の同級生だった常松は、あの年頃で、良くこの緊張感に耐えたモノだと思う。
そんな過去の感傷にひたっていると、おもむろに鉄製の扉が開き、その向こうから、一緒に夏祭りに参加した女子生徒が姿を見せた。
「立花くん……」
声をかけてきた相手に向き合いながら、返答する。
「上坂部……こんな暑い中、屋上に呼び出してすまない……今日は、どうしても、伝えたいことがあったんだ」
「うん……」
クラス委員は、やや緊張した面持ちで、額に浮かぶ汗をふきながら、また、小さく、コクリとうなずく。
「オレは、ヨネダ珈琲で話しを聞いてから、上坂部のことが、ずっと頭から離れなかった。最初は、『なんで、こんな面倒くさいことに付き合わなきゃいけないんだ!』って思ってたけど……でも、あの日、小さい頃から親しかった久々知への想いを話す上坂部やカラオケのときに、健気に振る舞っている姿を見ていたら、自分にもなにか出来ないかなって思うようになったんだ……」
オレの独白を彼女は、押し黙ったまま聞いてくれている。
「それで、上坂部に確認も取らずに、ネット配信でお悩み相談をしている白草四葉さんに、勝手に相談内容を送ってしまった……しかも、そのことで、上坂部に余計な迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳ない!」
大きな声でそう告げて、オレは、深々と頭を下げる。すると、彼女は、おどろき、焦ったように両手を前に突き出して答えた。
「そ、そんな、私は別に気にしてないから! 立花くんも、そんなふうに大げさに謝らないで……!」
「そ、そうか……そう言ってもらえると、助かる」
彼女の言葉に安堵を覚え、頭を上げる。オレには、まだ、伝えなければならない想いがあるからだ。
「あと、もうひとつだけ良いか?」
こちらの問いかけが、またも相手を驚かせてしまったのか、上坂部は、ふたたび、ぎこちなくうなずく。
「もうひとつ、伝えたいことは――――――」
オレが、慎重に言葉を選びながら伝えようとすると、目の前のクラスメートは、固いつばを飲み込むように、真剣な面持ちで、こちらに視線を向けている。
「もし、まだ久々知への想いを諦めていないなら……オレに、その想いを伝える手伝いをさせてくれないか?」
これまで、数週間に渡って考えていたことを率直に伝えると、上坂部葉月は、
「へ? ふへ?」
と、間の抜けた声をあげて、困惑したようにたずねてくる。
「えっと……立花くん……立花くんが伝えたいことって、それだけ?」
「ん? あ、あぁ……そうだけど……?」
オレが、そう答えると、クラス委員は、気が抜けたように、
「ア、アハハ……な、なんだ、そうなんだ……」
と言ったあと、その場に、しゃがみ込んでしまった。
上級生も、同級生も、みんな下級生思いだな……と、感じつつ、学年をまたいだ交流をほとんど持っていないオレは、そうした関係性を少しうらやましくも感じる。
(そう言えば、昨日、ワカ姉が、「ポケモン的人生を歩もうと思ったら、ドラクエ的な人生よりも、コミュニケーション能力は、重要だよ」「フリーランスな生き方は、ヒトとのつながりが全てだからね!」なんて言ってたっけ?)
そんなことを考えながら、オレは、この日の放課後に向けての作戦を練る。
浦風さんの独白を聞いて決意を固めたように、オレには、もう一人のクラス委員に、どうしても、伝えなければいけない想いがあった。
久々知と一緒に教室に戻ったあと、オレは、彼女が一人になるタイミングを見計らって、声をかける。
「今日の放課後、なにか予定はあるか? もし、時間があれば、校舎北館の展望フロアに来てほしい」
なるべく、簡潔に用件を伝えたつもりなのだが、相手は目を丸くしながら、ぎこちなく、コクンと一度だけ首をタテに振った。
とりあえず、初手で断られなかったことに安心したものの、午前中のみの短縮授業期間中とは言え、放課後までは、まだ四時間分も授業がある。
彼女に対して、自分の想いをどう伝えようかと悩みながら授業を受けていたため、教壇に立つ教師の声は、まったくと言って良いほど、耳に入って来なかった。
◆
放課後になり、オレは、いつものように存在感を消しながら、教室をあとにする。
今朝、久々知が声をかけて来て、花火大会に誘われてからというもの、先週までと同じようなノリで、話しかけてくるようになった後方の席の塚口マコトも、放課後はなにか用があったのか、オレに絡んでくることはなかった。
他のクラスメートの妨害が入らなかった幸運に感謝しつつ、オレは、彼女より先に、自分で指定した校舎北館の展望フロアに足を運ぶ。女子と一対一で向き合い、自分の想いを告げるという行動自体、自分の人生で初めてのことなので、緊張感は、ハンパではない。
考えてみれば、小学時代の同級生だった常松は、あの年頃で、良くこの緊張感に耐えたモノだと思う。
そんな過去の感傷にひたっていると、おもむろに鉄製の扉が開き、その向こうから、一緒に夏祭りに参加した女子生徒が姿を見せた。
「立花くん……」
声をかけてきた相手に向き合いながら、返答する。
「上坂部……こんな暑い中、屋上に呼び出してすまない……今日は、どうしても、伝えたいことがあったんだ」
「うん……」
クラス委員は、やや緊張した面持ちで、額に浮かぶ汗をふきながら、また、小さく、コクリとうなずく。
「オレは、ヨネダ珈琲で話しを聞いてから、上坂部のことが、ずっと頭から離れなかった。最初は、『なんで、こんな面倒くさいことに付き合わなきゃいけないんだ!』って思ってたけど……でも、あの日、小さい頃から親しかった久々知への想いを話す上坂部やカラオケのときに、健気に振る舞っている姿を見ていたら、自分にもなにか出来ないかなって思うようになったんだ……」
オレの独白を彼女は、押し黙ったまま聞いてくれている。
「それで、上坂部に確認も取らずに、ネット配信でお悩み相談をしている白草四葉さんに、勝手に相談内容を送ってしまった……しかも、そのことで、上坂部に余計な迷惑を掛けてしまって、本当に申し訳ない!」
大きな声でそう告げて、オレは、深々と頭を下げる。すると、彼女は、おどろき、焦ったように両手を前に突き出して答えた。
「そ、そんな、私は別に気にしてないから! 立花くんも、そんなふうに大げさに謝らないで……!」
「そ、そうか……そう言ってもらえると、助かる」
彼女の言葉に安堵を覚え、頭を上げる。オレには、まだ、伝えなければならない想いがあるからだ。
「あと、もうひとつだけ良いか?」
こちらの問いかけが、またも相手を驚かせてしまったのか、上坂部は、ふたたび、ぎこちなくうなずく。
「もうひとつ、伝えたいことは――――――」
オレが、慎重に言葉を選びながら伝えようとすると、目の前のクラスメートは、固いつばを飲み込むように、真剣な面持ちで、こちらに視線を向けている。
「もし、まだ久々知への想いを諦めていないなら……オレに、その想いを伝える手伝いをさせてくれないか?」
これまで、数週間に渡って考えていたことを率直に伝えると、上坂部葉月は、
「へ? ふへ?」
と、間の抜けた声をあげて、困惑したようにたずねてくる。
「えっと……立花くん……立花くんが伝えたいことって、それだけ?」
「ん? あ、あぁ……そうだけど……?」
オレが、そう答えると、クラス委員は、気が抜けたように、
「ア、アハハ……な、なんだ、そうなんだ……」
と言ったあと、その場に、しゃがみ込んでしまった。
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