息子が悪役令嬢だった件

漆黒の王子現る？滅亡のカウントダウン？ その３

　
　どうやら休講の知らせが急だったからか、自習の指示もなく、代わりの先生も見つからなかったみたいで、生徒たちは困惑したみたい。

　私としてはおとなしく食べてるつもりなんだけど、隣の席に座っていた子達の噂話がバッチリ聞こえてきてしまい、不可抗力だけど盗み聞きしてしまった。

　最初は極楽鳥の授業がなくて残念だみたいな話から、例のイザベラの婚約発表話に移った。

　極楽鳥はああ見えて人気教師らしく、授業も楽しいって評判になってるのは知ってけど、やっぱり昨日の今日じゃイザベラのうわさ話もするよね。

　どうやら内容は王子が昨日に限ってあんなに大勢の前でイザベラともいちゃいちゃしてたけど、それまでお気に入りだったマリーちゃんとはどうなってるのみたいな話だ。

　要するに二股疑惑というより、完全に二股じゃんって話。

　王子の評判が下がっただけだったらよかったけど、なぜかイザベラの評判もびっくりするほど下がってた。

　しばらくイザベラは留守だったし、当たり前だけど全く悪いこともしてない。

　なんでだろう？とおもったけど、マリーちゃんを擁護する声が多かったのにびっくりした。

　マリーちゃんは可愛いから多少の問題があっても、王子と健気な女の子とのラブロマンスと言うことである一定の子たちからは結構支持されてたのがうかがえる。

　ふと魅了のせいかな？とも思ったけど、マリーちゃんが学園にいないのに魅了の効果が続いてるのもおかしいし、やっぱりイザベラはこの世界では悪いことしてなくても悪役になって誤解されちゃうのかなと悲しくもなった。

　だって、本物のイザベラもいい子だったみたいだし、なんとなく歯がゆい。

　そう思いつつ食堂を出て、自分の部屋に寄ってから昨日書いたノートと用意した差し入れを持ってイザベラの部屋に行く。

　ドキドキしながらノックをするとイザベラが出てきた。

　やっぱり顔だけだと妖精よりきれいかもと思わせるようなの容姿なので、どうしてもどっちか判断できない。

　仕事で疲れてるはずなのに、これだけ美しいとイザベラ本人かも？？？と心の準備をしてたつもりだったけど、なぜか心臓がどきどきする。

「あの、えっと・・・イザベラ？さんですか？」

　万が一、本物だったらいけないと思っておそるおそる聞いてみると、

「そうだけど、お母さん、中身は俺だよ」

　といわれた。

「聡・・・だよねえ、良かったよううううう」

　やっぱり盛大に泣いてしまった。