息子が悪役令嬢だった件

切ない恋の大集合 その１０

　
　イザベラが私って言うの珍しいな・・・とふと思う。

　私にはイザベラの言葉は令嬢言葉に変換しないわけだから、王子にキスされて、かなり動揺してしまったんじゃないかな？？？

　さっきと違って王子の傍におとなしくいるイザベラもなんか変。

「イザベラ大丈夫？」

　声をかけてみたけれど、反応がない。

　それどころか、王子を見つめるイザベラを見たとき私はぞっとした。

　だってそれは恋する女の子の顔だったからだ。

　それってどういうことかと言うと・・・母の勘が働く。

　イザベラの中に聡がいないってこと。

　あまりにも突然のことだったので心の準備もしてなかったし、むしろ聡がイザベラとしていてこれからもずっと一緒に入れると思っていたからだ。

　聡がいない？

　すると私が絶望した顔をしたのをイザベラが見たのか、恋する少女の顔からすっかり変わって、みるみるうちに青ざめて

「ごめんなさい」

　そう言ってイザベラが倒れた。

　王子がすぐに支えたけれど、どっから来たのかレオンも血相を変えて抱きとめる。

　王子は支えたイザベラを離そうとしないで王宮専属の魔法医に見せるっていうし、レオンは自分が治すって言ってイザベラを抱き寄せる。

　しばらく二人でもめてたけれど、王子とレオンがお互いにイザベラのことを譲らなかったところにやっと亮と極楽鳥がきて極楽鳥が二人から取り上げてイザベラを抱きかかえる。

　極楽鳥はちょうど教師バージョンだったので、教師として学園の医務室に連れていくといった。

　みんなついてこようとしたけれど、極楽鳥は私だけ医務室に付き添うように言って、付き添いは一人でいいと言って他の人はこないようにと指示した。

　でも、正直イザベラの傍にいてもぶるぶる震えるしかできなかった。

　学園の魔法医はイザベラには特に問題がなく寝不足だろうといったので、極楽鳥がイザベラを部屋に運んだ。

　とりあえず聡の存在を知ってる極楽鳥と二人になったので、

「聡、起きてよ」

　泣きながら言ってみる。

　イザベラはすやすや寝ていて血色もよかったけれど、そんなことはどうでもいい。

　私は耳元で聡を呼び続ける。

　涙交じりの声だったけど、だんだん声が大きくなってしまったようだ。

　すると聞きなれた乱暴な口調で、

「うるさいなあ、耳元で大きい声って、耳が壊れたらどーするんだよ、人がせっかく寝てるのにお母さんバカなの？」

「さとし・・・聡だああ」

　本物のイザベラになったんじゃなかった、さっき、イザベラ本人だと思ったのは気のせいだったのかなあ？

「なんだよ、エリザベスはなんで泣いてるんだ？ってここはどこだ？」

　一応、食堂であったことを簡単に話す。

　聡はしばらく考えて、

「あっ、そっか俺イザベラと交代しちゃったんだ」

　爆弾発言をぶっこんできた。