息子が悪役令嬢だった件

神様のお試し その８

　それにしてもドアを開ける度、過去の自分の姿を見るのがつらくなってきた。

　それに自分が幽霊になってるのに慣れちゃったというなんと言うか、自分の適応力に感心する。

　私ったらエリザベスでも里子でもどうでもいいみたい。

　今はただ、ずっとドラマを見ているみたいに自分の経験した人生を見ている。

　時々未来の自分も見たりするけれどあまり実感がない。

　ふと、本当に自分の人生なのかな？と疑うときもあるが、幽霊状態になってから、基本漂っているだけでお腹も好かないし眠くもない、どこも痛くないし痒くもない。

　エリザベスになってから若い体になったけれど、疲れたり、痛みがあったり、愛される快感もあり、ちゃんとした感覚があった。

　それが生きているってことなのかもしれない。

　そういえば、このドアって結局私が行ったことのある部屋の場所に出れるのね・・・なんて思ってのドアを開けたら、

　次に開けたドアの部屋は学園の教室だった。

「アルカナ、趣味が悪いですね、ドアノブに悪意の種を仕込むなんて」

　誰？知らない声・・・でも

　アルカナって例のアルカナ？？？フードをすっぽりかぶっているので顔が見えない。

　でも随分背が低いような・・・

　それに、アルカナがドアノブになんかしたの？

「心外だな・・・俺じゃないと言ったら？それにしても、ルノーがいるなんて思わなかったな、やっぱりオラクルの犬だもんな」

　ルノーと呼ばれた人物、私、なんとなく見た覚えがあるんだけど、誰だっけ？こんなイケメン、一度見たら忘れなそうなんだけど・・・　

「師匠にアルカナだけは注意するように言われてたのでね」

　師匠？？？

「チッ、オラクルの奴、相変わらず弟子には甘いようだな、甘すぎて反吐がでる」

　オラクルって、リンやアリスの先生だよね？？？オラクルが師匠ってこの人いったい誰？

「元旦那が信用できないのでは？」

「残念なことに、今もあいつの旦那だよ」

「そうでしたっけ？」

　ちょっと・・・オラクルって不倫発覚？？？

「あいつとは契約を結んでいるのでね」

　契約を結んでるんだ・・・って結婚ってことだよね？？？

「あなたなら本当は、それくらいの契約解消することはできるでしょう？」

　そうなの？離婚ってことなのかな？アルカナは嬉しそうにいった。

「無理だね、あの契約は死んでも無理なんだから・・・」

　死んでも無理な結婚の契約なんて・・・こわいけど、ロマンチックでもあるのかな？