息子が悪役令嬢だった件

懐かしの我が家？ 18

　一応ダメ押しで、

「気持ちに答えられられず本当にごめんなさい」

　トラブル対応は迅速にしないと。

　油断したつもりは全くなかったけど、

「諦めません」

　と言われ、いつの間にか、壁際に追いやられていた。

　両手を握られたかと思ったら、そのまま両腕を上に持ち上げられ、万歳みたいな格好になった。

　そして、

　「オレを見てください」

　と言われて、そのままキスをされてしまう。

「ンん・・・」

　告白だけでもびっくりし過ぎて、モテない自分の人生にこんなことが起こると思っていなかったし、とっさのことでよけれなかった。

　でも、これってまさか、友達が言ってた神様のお試しな訳？？？でも不意打ちなんですけどね。

　だけど結婚前に彼を裏切る事になる？？？の？

　サーっと血の気が引く。

　でも、はじめはびっくりし過ぎて動けなかった。

　でも、それがいけなかったらしい。

　最初は優しく触れただけのキスだったはずが、いつのまにか舌を入れられ、ますます激しくなってきたので、頑張って逃げようとしたが、もがいても振りほどけなかった。

　えっ？力が入らない・・・どうしょう・・・それに息が・・・続かない。

「何してるんですか？」

　すると意外にも助けてくれたのは、あの新人の女の子だった。

　どうやらイケメン君を待ち伏せしていたらしく、なかなか出てこないから呼びに来たらしい。

　でも、助けてくれたというよりは、私がイケメン君に迫ったと勘違いしたらしく、軽蔑したような目を向けてイケメン君の服を引っ張ってそのまま外に行ってしまった。

　厨房に行って慌ててうがいする。

　わかったことがある。

　当たり前だけど、キスをされるのは誰でもいいわけじゃないってこと。

　やっぱり好きな人じゃないと、ぞわぞわするんだな。

　全然振りほどけなかったときは、さすがに怖くて震えた。

　それに学生の頃や、大人になってから何度か痴漢に会ったり、子供のころに誘拐されそうになったことがフラッシュバックしたのだ。

　私は、帰り支度を慌ててしながら、飛び出すようにアルバイト先から出た。

　イケメン君と彼女が言い争っているのを横目で見たけど、急いで走り抜ける。

「待って」

　と聞こえたような気もしたけれど、ここは聞こえなかったことにしよう。

　震える手で彼に連絡する。

　電話口で私の様子がおかしいと思ったのか、最寄り駅にすぐに彼が迎えに来てくれた。

　彼を見た途端、子供みたいに泣いたので、落ち着くまでホテルで過ごすことになった。

　親には終電を逃したから友達の家に泊めてもらうと報告した。

　この頃は、友達に結婚のお手伝いを頼んでいる関係で、親も簡単に外泊をオッケーしてくれていた。