息子が悪役令嬢だった件

懐かしの我が家？ ９

　なぜかわからないが、あれほど就職活動に苦戦していたのに、何とか一人暮らし出来そうな、福利厚生がしっかりとした会社の事務の仕事が決まったのだ。

　でも、このことは彼にも両親にも言ってなかった。

　だから、誤算だった。

　本当に彼の言う通り、彼の両親にも結婚は全く反対されずに、むしろすぐに結婚する方向にすでに決まっていた。

　できちゃった結婚でもなかったのに、式場は私の家の挨拶が終わった後、すぐに申し込んでたらしくビックリした。

　でも、できちゃった婚だったら、ますます責任取ってもらって結婚したんだと思って、またうじうじしちゃったかな？と思った。

　もっとも最近は授かり婚というみたいだから、時代が変わったなと思ってる。

　それにしても、結婚は勢いだって聞いたことがあるけど勢いがないとできないのは本当だと思った。

　私も彼や両親達の押しが強くなかったら、きっと結婚してなかった。

　後で聞いたのだけど、彼によると私にプロポーズは何回もしていたらしい。

　プロポーズされてたっけ？？？しかも何回もって・・・全然気が付かなかった。

　彼としては、定番な？毎日味噌汁を飲みたいから、一緒のお墓に入りたい、君といると癒されるとか、貯金がたくさんあるから君を養えるとか、色々と言ってたらしい。

　だけど、毎回流されるのでこのままではだめだと思ったらしく、男らしく、

「結婚しよう」

　と言ったらしいけど、疎かった私は責任取らなくてもいいですよと言って断ったそうだ。

　そういわれてみれば、むしろ責任取っていいなら取りたいんだとかも言ってたっけ・・・

　それにしても、あれって全部プロポーズだったのか・・・

　彼の家の玄関から出ると、また新しい部屋にいた。

　あらら、これは懐かしいというのかな？

　例のラブホテルの部屋だった。

　こうやって改めてみると、部屋の中が記憶と違うような気もする。

　この頃は結婚が決まったので、一時的にパパが自分の実家に戻ってた時期だった。

　二人で暮らす家を探すため、会社で借りていた家を出て、新しい家を探すことにしたからだ。

　だけど結婚が決まったのに、なぜかデートのたびにホテルに誘われて、貪るように身体を重ねた時期でもあった。

　そもそも、この頃は普通のデートが一切なくなって、結婚式の打ち合わせや、新居探しになった。

　私はせっかく決まった就職も、断ってしまった。

　結婚式場の準備は、もうすでに彼と彼のご両親がしていて、私は特に結婚式にこだわってなかったので、すべて任してしまった。

　ドレスは彼が選んだし、そこに私の意志は特になかった。

　そんな感じだったせいか、どうやら結婚したくないと思われていたようだ。

　結婚式って普通女の方がこだわるよねと友達にも言われたが、私は結婚の情報誌すら買わなかった。