息子が悪役令嬢だった件

懐かしの我が家？ ５

　もし、選ばなければ、どっちの世界にもこのまま戻れないなんてことあるのかなって思ってちょっとゾッとした。

　まさかと思うけど、どっちの世界にも行けないで今の幽霊のような状態で、ここにいることになるのもあり得るのかも？

　そう思うとちょっと焦る。

　焦って他にできることがないのかと玄関の方に行ってみる。

　何気なく玄関を触ると、そのまま玄関を通り抜けることができた。

　うわっ、どういう事？？？やっぱり私、幽霊じゃん。

　またパニックになる。

　でも、玄関を通り抜けると、今度はまた違う部屋にいた。

　あれ？ここって実家のリビングだ。

　玄関を通り抜けたら、すぐリビングなんて、なんだかおかしいと思ったけれど、間違いなく実家のリビングだ。

　実家は西日がよく入って、年を取った両親がリビングのテーブルで二人仲良くいつもウトウトしていたっけ。

　とはいっても今は西日が差しておらず、部屋自体もそんなに明るくなかった。

　私はハッとする。

　ここでもし両親に会えたら、号泣してしまうかも・・・と思ったが、誰もいなかった。　

　でも、懐かしい思いがあふれてくる。

　なぜなら私が結婚した後、実家はとっくの昔に処分していたからだ。

　両親はとても仲が良かったせいか、最後は一緒に逝ってしまった。

　それに元々、年を取ってできた一人娘だったから、早めに覚悟はしていたのだが、一応親孝行として、両親には何とか結婚式や孫の顔は見せれた。

　実家を処分したのは、さすがに家の劣化が進んでいた為だったが、今では更地になってもう別の新築の家が建っている。

　でも、今、実家が存在しているってことは・・・もしかしてだけど私は過去に来たのかも？？？と思う。

　私の部屋は東南の角だったから、とりあえず行ってみよう。

　自分の部屋にも簡単に入れた。

　こっちの部屋は明るいので、どうやら今は朝なのかもしれない。

　私の部屋には当時、バイトに行っていた制服がきちんとたたまれて置いてある。

　ずっとバイトしてたからな・・・本当は、正社員として働いて年を取った両親を安心させるつもりだった。

　でも、自分も年を取っていき、新卒生と就職活動を戦うのに臆病になっていた。

　今のバイト先でも社員雇用の話はあったのだが、迷っているうちに若いアルバイトの人数が増えた為、社員雇用の話は保留になっている。

　机の上を見てみると、就職情報誌がたくさん積まれている。

　付箋もいっぱい貼ってある。

　それと一緒に、パパからもらったプレゼントの数々がきちんと並べてあった。

　ネックレスや、イヤリング、ゲームセンターで取ったぬいぐるみなどだ。

　綺麗に並べて見てたほど、うれしかったんだよね。

　実家でしばらくくつろいでいる？といっても、幽霊だからさまよってる状態なのだが、ガチャリと玄関の方から音がした。

　どうやら家族が帰ってきたみたいだ。