息子が悪役令嬢だった件

知花虹花

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帰ってこない悪役令嬢 6

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「亡命と引っ越しって、天と地ほどに違うよ、亡命なんて、そんなに簡単なことじゃないし、それこそレオンが黙ってないだろ」

「そうかなあ、レオンも知ってると思ってた。だって、一緒に、亡命すればいいのでは?」

 レオンって、国にはこだわってないように見えるしね。
 
「確かに、レオンはイザベラが絡むと国にはこだわらない可能性もあるが、亡命はそんなに簡単なことじゃないぞ」

 そうなの?知らなかった。

「レオンだって学生になったとはいえ、学生の間だけ休みをもらっているけれど、今でも俺達と一緒で騎士団に所属しているし、自分の領地を持っているだろ、管理しているところは全部棄てていくなんて、いくら何でも無責任なことをするかどうか、それにエリザベス達だって、今ある工房をどうするんだ?」

 そうなんだよね、それを含めてイザベラに聞きたかったのに帰ってないんだもん・・・

「それにしても、エリザベス達がいた国は自由に亡命が引っ越し感覚でできるような、ものすごく平和な国にいたのか?」

 ん?

「あっ、そっか・・・」

 言われてみれば、現実味のないことを言ってしまった。 

 確かに今までは国が豊かで亡命しようとは考えない国にはいたけれど、確かにすっかり平和ボケしてたんだな。

 多分、どこかでこの世界が、正直言って現実世界ではなくて物語と思っている自分がいるからつい、現実味のないことを言ってしまう。

 反省しないと。

「とりあえずは、イザベラが帰ってきたら、なんで亡命なんかを考えているのか、聞きださなきゃね」

 とは言いつつ、いま気づいてしまった。

 考えてみたら、イザベラだって平和ボケしていた国民の一人だから、よほどのことがない限りは亡命なんて言葉出さないと思うからだ。

 だからこそ、尚更イザベラが亡命しようとしていることが気になる。

 仮にレオンとの貞操危機ぐらいなら、多分イザベラ自身本気出せば対処できるだろうし、何よりイザベラはトルマリン王国を気に入ってたと思う。

 それに、事なかれ主義的なところもあるから、自分から進んで動かないはずだから、動かないといけない理由つまりリンには言わなかったけれど、おそらくどうあがいてもトルマリン王国にいられない理由ができたんだと思う。

 ただ、イザベラが私たちを見捨てるとは考えにくいので、この留学はみんなで亡命できるかどうかの偵察なんだろうなあとはおもっている。

「俺はアルから、もう少し詳しく聞いてくるわ」

 と言ってリンが出て行った。

 アリスと二人きりになると、アリスが急にもじもじとし出した。

 今までのシリアスの話から、例の話をするのをためらっているみたいだ。

 うんうん、話したいよね、と思ったので、ガッツリ話を聞く体制に入ろうと思った。

 けれど、小腹もすいたし、自分には反省文が百枚あることを思い出す。

 だからとりあえず腹ごしらえの品をアリスに頼んで、お茶とお茶菓子を用意してもらう。

 アリスが用意したのは、カモミールティーだった。
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