息子が悪役令嬢だった件

懐かしの我が家？ １

　ドアを開けると、作業机に眼鏡をかけた上品そうな女の人がパソコンの前にいる。

　あれ？部屋を間違えたかな？

　でもこの作業机って、確かパパに作ってもらったやつだよね。

　結局、洗濯ものの置き場になちゃってたけど、本来はあんな感じで使いたいって思ってたんだよね。

　あれ？でもこの世界にパソコンなんてあったっけ？それに、この部屋どこかでみたことがある。

　どこかで見たって・・・いや、違う、これが本当の家のリビングじゃん。

　この世界に来る前の我が家。

　どういう事なのかわからないが、何らかのきっかけでまた、自分の家に帰れたのかと思ったけれど知らない住人がいるし、どうやらここの住人に私が見えていないようで、目の前に行っても無視される。

　それに、私の姿はエリザベスのままだ。

　学園にいたので、一応、制服を着ていたのだけど、心なしか自分が透けて見える。

　久しぶりに見た我が家だけど私が住んでいた時よりも大分お洒落になってるような気がする。

　あと、ご飯のとってもいいにおいがする。

　ふと、ダイニングテーブルを見ると、テーブルにぎっちりと並んでいる食事はスゴイヘルシーだった。

　野菜を中心としたカラフルな彩りで、しかも、ちょっとお洒落なカフェのバイキングに来たみたいな品数。

　スタイリッシュな格好をしてパソコンをいじったりしている女の人は、年を取っているがほっそりとしていて私に似ているような気がする。

　でも、すぐに、これ私じゃないわと思う。

　だって私、樽体形だったはず。

　でも、私じゃないとしたら誰だろう？

　おかしいな、このマンションには見覚えあるのにな。

　住宅ローンを払いながら、細々と暮らしていた自分が家族と住んでいたマンション。

　どうしても家庭菜園がしたくて、ルーフバルコニー付きの物件にしたんだけれど、ものぐさのせいか結局、宝の持ち腐れになっていたバルコニーが、遠目でもわかるくらい緑に覆われておしゃれな家庭菜園のベランダになっている。

　赤い実はきっとトマトだろうか。

　キュウリやナス　ミントやローズマリー、グリーンカーテンにはゴーヤが鈴なりになっている。

　それにルーフバルコニーは、ご飯が食べれるように、日よけの付いたテーブルや椅子も置いてある。

　うーん、私の家じゃないのかな？

　リビングに戻って、キッチンに行くと自分の家で間違いないと思うものがあった。

　子供達のマグネットの写真だ。

　小さい頃、息子たちの七五三の写真を撮った時に、写真館でおまけで貰った小さい写真が磁石になっていて、冷蔵庫の側面に張っていたのが、ずれ落ちてたのか下の方に貼ってあり運よくそのままになっていた。

　ずれ落ちてたため、この家の持ち主は気がつかなかったのだろうか。