息子が悪役令嬢だった件

王子の秘密 不毛な恋の行方 １

　私は、ふと、疑問に思った。

　かなりレアな能力なのに、攻略対象じゃないリンが出来るなら、再生魔法イザベラにもできたりして。

　悪役令嬢役なんだから、ワンチャン、出来たりしそう。

「まさかと思うけどさ、イザベラは再生魔法できるの？」

　これが出来たら、この世での怖いものなしになるのかもね。

「残念だけど、出来ないよ。どうやら黒魔術は必須だろうからな、俺も悪役令嬢役だから黒魔術の方が向きそうなものだろうなと思ってたんだけど、どうやら闇の魔術とは、全然違うんだよな。一応、興味があって図書館でそのことについては情報を集めてみたが、結論としては習得する気は一切ない。精神的にも、肉体的にも、黒魔術は無理ゲー。それに、今のところ俺はとりあえずヒールのみで、今のところ事足りてるしな」

　なんだ、残念。

「そもそも、死ぬほど危険な目にあってないし・・・」

　確かに、日々平和に過ごしているし、むしろ、死ぬほど危険な目に合うって、なかなか難しいのでは？とのんきに思ってたら、イザベラが、しれっと爆弾発言を投入してきた。

「でも、これからは、前後左右に、背後にも気をつけなくちゃな。俺達は王家を敵に回した可能性が高いからな。」

　ん？なんですと？

「前後左右はなんとなくわかるけど、背後に気を付けるって、どういうことよ？」

　これまで生きてきた中で、背後に気を付けたことがないんだけど。

「トルマリン王国には有名な王家御用達の暗殺集団がいるから」

「・・・」

　言葉にできない・・・王家御用達って、普通、高級そうなお菓子とかさ、王家で使用している商品のことなんじゃないの？オランのところ道具みたいにさ。

　暗殺集団に対してもツッコミどころ満載なんだけれど、話が進まなそうなので、思い切って聞く。

「いつの間に敵に回したっけ？私、そんな大それたことした覚えないんだけど・・・まさかと思うけど、イザベラなんかやらかしたの？」

　動揺が激しいが、今回は、やらかしたのは、私じゃないと思いたい。

　脳みそが、珍しくフル回転している。

「うーん、正直こっちは、何にもしてないけど、あいつが勝手に秘密をばらまいてるから、今のところ、どっちに転ぶかわかんないんだよな」

　取り敢えず、私がやらかしてないことだけは分かってよかった・・・って思ったけれど。

「あいつって？」

「あのポンコツ王子、エリザベスと同じで魔力が全くない」

「私はともかく、王子が、魔力ないなんて、大丈夫なの？？？」

「大丈夫なわけないだろ」

　イザベラが、珍しく大きなため息をついた。