息子が悪役令嬢だった件

新しいフラグ １3

　リンさんは、

「信じられないだろうけれど、アリスは自分で解いちゃうんだ」

　肩をすくめながら言う。

　それが、レオンの興味を引いたみたいで、

「へえ、そのことを今まで、なんで隠してた？俺も実験していいか？」

　というと、

「じゃあ、俺はイザベラを実験台にしようかな」

　すると、私でもわかるぐらいに、いきなり空気が重くなった。

　隣にいるイザベラが、珍しく、がくがく震えてる。

「だから、あなた達、狂ってるのよ」

　アリスさんが優しくリンさんの手を握ったら、空気が少し軽くなった。

　ええっと、レオンはともかく、こんな穏やかそうな人が、狂ってるなんて、本当に世も末なんだけどな。

「年がら年中、魔物討伐してたら、心も荒むよな」

　イザベラが、調子を取り戻したらしい。

「まあね」

　リンさんは軽く答えたけど、アリスさんが、

「その魔物を使って、楽しそうに残酷な実験してたわよね？」

　実験って・・・どんな実験なんだろうか。

　こんなに人のよさそうな顔しているのに？

「あれは・・・ちょっとした遊びのつもりだった」

　遊びって・・・

　レオンが補足する。

「アリス、あれは、黒魔術に欠かせない必要な実験だ。再生魔法を取得するためには、かなりの数を殺して、再び、再生するかどうか、実験しないといけない」

「いや、あれは悪い遊びだった」

　リンさんは、朗らかに笑っているけれど、それでも私は、ドン引きだ。

　やっぱり異世界って・・・怖

「ね、これでも、狂ってるリンを、こちらのちゃんとした世界に呼び戻したのは私だからね」

　うん。確かに闇が深そう。

　でも、そんなことは言えないから

「そうなんですね」

　と相槌を打ったけど、

「ちなみに、レオンは、放置したけどね」

　げげっ・・・ということは、レオンは、狂ったままってことですか？・・・怖いけど、わかるような気がする。

「でも、学園に来てからのレオンは変わったわ。さっきみたいに、大爆笑なんて見たことがなかった」

「そうか？いつも笑ってるよな」

　イザベラは意外そうな顔をした。

「ないない、こうやってまともに話すのも、学園に入ってからだし、それまでは、やばい奴だから、リンに任せてたけど、レオンにも感情ってあったんだなと思ったら、つい感動しちゃって、魔法を自分で解除しちゃったみたい、私、感情コントロール下手だから・・・」

「ここ最近は、ちゃんと制御できてたのにな」

「そうね、解除したの、最近ではリンからプロポーズされた以来かもね」

　甘い雰囲気が漂ってるけれど、制御って？・・・プロポーズって？

「あっ、一つ訂正ね、もう、恋人同士じゃなくて今は婚約者になったの」

「へえ・・・」

　イザベラったら、あまり興味なさげな返事をするなあ。

　レオンが、

「リンは、もともと魔法協会のエリートだったし、黒魔術師としても優秀過ぎて、今の師匠に魔法協会のトップの後継者として目をつけられたから、本当だったら玉の輿だったのにな」

　意外だな・・・レオンが、リンさんのこと、べた褒めしてる。

　相当優秀ってことか。