息子が悪役令嬢だった件

悪役令嬢 現る 5

　
　オランが女性、いや、人間不信って・・・マリーちゃんたら、一体、何やらかしたんだろう？

「俺だって、珍しく、頑張ったんだよ」

　やさぐれているイザベラが、説明し出した。

「俺が張り切って、悪役令嬢にせっかくなってやろうと思ったのに、なんだか、どんどんおかしな方向になっていったのは、あいつらのせいだと思う」

　ぷうっと、ほほを膨らましたけど、可愛すぎて、どう考えても、悪役令嬢に見えないんだけどな。

「今更、悪役令嬢になるって、じゃあ、マリーちゃんて、まさかのヒロインだったの？」

　えーと、それって、私としては、ちょっと微妙だな。

　やっぱり、ヒロインって、優しいとか、ほっこりする感じとか、一応、私も夢みたいんだけどな。

「なんで、イザベラが悪役令嬢をやりたいのか、僕は今だに理解できませんが、あのマリーって女の子の方が、よほど悪役ぽかったですよ」

　オランが言うと、イザベラは反省したように、

「でもさ、俺、もともと、テンション低いから、あんまり高笑いとか、できないと思ってたけれど・・・頑張ってやってみた」

　少し、ドやあ、って顔をした。

　その顔、久しぶりに見たわ。

　オランが、びっくりしたように、えっ？って顔をする。

「あれ、高笑いだったんですか？随分か細い声でしたよ。マリーって奴にイザベラさん、責められても微笑んでたので、むしろ、みんなが健気って言ってましたが・・・それに、彼女の方が数倍、高笑い上手でしたよ。」

「えっ？えっ？」

　イザベラはちょっと赤くなって、下を向く。

「俺が健気って・・・草」

　ぶつぶつ言っているイザベラを見て、オランは、とどめを刺して言う。

「あの場では、イザベラさんが間違いなく、健気なヒロインでしたよ、あそこにいた生徒の大半はそう思っていると思います」

　呆れたように、そういって、オランは、工房に行かないと、と図書館から出て行った。

　それに、レオンもついていく。

　二人そろって出ていくの、珍しいなあと思ったけど、そんなことより、

「いったい、何があったのよ？」

　と聞く。

　だからさ、と言いにくそうに、

「もともとイザベラが、悪役令嬢だったんだから、その役を引き受けてもいいかなって思ってさ。断罪イベントに乗っかってやったんだけど、うまくいかなくて・・・」

　ふーん、イザベラは、外見はどう見ても、儚い妖精っぽいから、むしろ悪役令嬢じゃなくヒロインじゃ・・・なんてさ。

　口が裂けても言えないな。