息子が悪役令嬢だった件

小説の世界 再び 匠 その８

　
　ファミリーレストランで、彼女はパスタのセットを頼んだ。

　トマトとほうれん草と海老のパスタだった。

　俺は、ハンバーグセットにした。

　「ケーキも頼む？」

　と聞くと、嬉しそうに頷いた。

　俺の方をデザートセットにして苺のケーキを頼む。

　苺フェアだった。

　それを、いつものように、二人で半分コにして食べる。

　ファミリーレストランも、デザートに力を入れてるせいか、自家製を謳ったイチゴケーキは、もの凄く美味しかった。

　コーヒーも飲み終わり、予定通りに、ファミリーレストランを出て、次のデート先に移動しようとしたとき、彼女にいきなり謝られた。

　何が起こった・・・

　まさか、俺がヤラなかったからか？

　それで、まさかの別れ話とか？

　焦る俺に、彼女が言ったのは、

「本当に、ごめんなさい。こんな事を頼める人いなくて・・・差し支えなければ、両親にちょっとだけ、会ってくれないかな」

　だった。

「でも、もしダメだったら、全然いいからね。だって、最近、仕事忙しいよね」

　とも言う。

　なんだ、そんなことか。

　めちゃめちゃ焦った。

　でも、焦って、損した。

　むしろ、挨拶なら、もっと早くてもよかったのに・・・

　そもそも、もう、結婚の挨拶でもいいぐらいだ。

　仕事だって、結婚の挨拶のためなら休んだっていいんだけど。

「仕事も、忙しくないし、挨拶にいくよ。」

　というと、ありがとうを連発された。

　ファミリーレストランじゃなかったら、土下座しそうだ。

　もしかして、今日、様子が変だったのって、これか？

　でも、これで、プロポーズができると思った。

　よし、次のデートコースでプロポーズだ。

　ちゃんとした場所でプロポーズできそうだ。

　指輪をいきなり渡して引かれたらどうしようかと思ってた。

「よかったあ・・・彼氏がいるって言っても、両親に全然信じてもらえなくて、断られたらどうしようかと思った。それに顔を合わせたらすぐに帰っていいからね」

　それは無理だ。

　ちゃんとご両親に挨拶するつもりだ。

　挨拶に必要な菓子折りを持って、当日はやっぱりスーツじゃないとな。

　俺、普段は作業着ばっかりで、スーツは一着しか持ってないけど、黒だし、まあ、それでいいか。

　とにかく年下だからといって、ご両親に頼りないとは思われたくない。

　しっかりと挨拶しなくちゃな。

　娘さんをくださいと、お嬢さんをくださいどっちがいいんだろう・・・悩むなあ。