息子が悪役令嬢だった件

溺愛される理由 5

　
　やみちゃんがニヤニヤしながら、

「奴がここに来る可能性も捨てがたいからな」

　ええっ、そうかなあ、まさかと思うけどさ。

「ここにブルーノって来れるの？]

　後ろに人の気配がした。

「なんの話だ、それ・・・」

「えっ、騎士団長様、いや、アル、いつの間にそこにいたの？」

　全然気が付かなかった。

「えっと、こっちの話で、全然たいしたことじゃないから・・・」

　と言い訳じゃないけど、言ってみる。

　だって、騎士団長いや、アルすごい顔しているよ・・・　

　でも、やみちゃんが、いたずらを思いついたって顔をして、

「ベルの浮気の話さ」

　やみちゃん、それはまずいんじゃあ・・・と思ったら、アルはすごい勢いで私をお姫様抱っこすると、わたしの部屋に一目散になだれ込み、手慣れた手つきで、本棚を開けて例のボタンを押した。

　すると、奥に通じる扉がでてきた。

　やっぱり・・・

　遠くからやみちゃんの声で

「冗談だよ、アルフォンスうー」

　と叫ぶのが聞こえたけど、アルは完全に無視している。

「それに、ここの結界はレオンが張っているから、のみだって入れないよー」

　そういえば、やみちゃんだって、結界嫌がってたじゃん。

　ブルーノが入れるわけないのに・・・

「ねえ、やみちゃんの冗談だって、のみもはいれないって言ってるよ」

　といっても、聞く耳持たないようだ。

　ズンズンと奥に進んでいくと、おとぎ話に出てくるような扉があった。

　扉を開けて中に入ると、ガチャリと音を立てて、扉は自動にしまった。

　そこには、リビングと思われるぐらい、広い空間の一番最初に目の付くところに、大きなベッドとお風呂があった。

　お風呂はガラス張りなのか、透け透けなんだけど、透明なシャワーカーテンで覆われてあって、所々に金色の装飾がついているので、キラキラ光っている。

　ベットは、でんぐり返しのマット運動ができるほど広かったし、寝具は真っ白でふんだんにレースがついた寝具が敷かれてあった。

　素敵なんだけど・・・これは是非とも、お部屋を探検したい。

　けれど、ベッドの上でアルが、私をぎゅーと抱きしめていて、離してくれない。

　すると、どこからか声がして、

「レオン様から奥様に差し入れです」

　と言う声とともに、飲料水がそばにあったテーブルの上に置かれたので、渋々離してくれた。

　手紙もついてる。

　アルと私と二人分の手紙だ。

（この手紙は、魔法で本人しか読めない）

　と書いてある。

　そんな魔法もあるんだ・・・と感心している場合じゃなかった。

　その手紙には、

　（緊急事態につき、この避妊薬、全部飲め）

　って書かれてる。

　緊急事態って確かにそうだけど・・・これなの？

　背に腹は代えられないか・・・私はそれを、一気に飲んだ。

　助けにくるんじゃないのね・・・

　でも、アルはレオンの手紙を読んで、少し落ち着いたみたいだった。

　二人で、手紙を読み終わったと思ったら、手紙はすーっと跡形もなく消えた。

　レオンて本当にすごい魔法使いだと思うけど・・・お願い、もう少し、デリカシー求む。