息子が悪役令嬢だった件

知花虹花

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小説の世界 1 匠

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 彼女に会ったのは先輩の紹介だった。

 学校の部活の先輩で、たまに一緒に遊んでたのだが、俺が職人になってからは女っけなく働いている俺を心配して、紹介してくれたのだった。

「かなり年上みたいだけどいいか?」

 何回も確認されたけど、年上女房は金のわらじをはいて探せってじいちゃんがいってたからと言うと、先輩に笑われた。

 それよりも、俺みたいな職人でもいいのかと言ったら、手に職がある人がいいって言われたらしい。

 俺は女性にたいして、気のきいたことも言えないから、この際、すごい年上でもいいから、いっそのこと甘えられそうな人がいいなと思った。

 元々、年上がいいと思ったのは、兄弟が多く、なかなか甘えられない環境だったのもあるかもしれない。

 でも、実際に彼女に会ってみると、想像と違って、めちゃくちゃ可愛かった。

 年上と言われなければわからないし、下手したら俺と同じ年にも見える。

 しかも可愛い。

 でも、

「私の方が大分、いや、ものすごくお姉さんだ・・・ね」

 すまなそうに言われたけど、俺は、ものすごく緊張してたので、正直、会話のほとんどを覚えてない。

 取り敢えず、連絡先は無事交換できたのはよかった。

 とはいっても俺は携帯を持っていなかったので、彼女の携帯の番号を紙に書いてもらった。

 すぐに連絡したかったが、会社の寮に住んでいて、寮には電話がなく、公衆電話を探さないといけなかった。

 そもそも、俺は会社と寮との行き来だけだったので、電話がなくても困ることがなく、当時は携帯を持つ必要がなかった。

 でも、俺はすぐに紹介してくれた先輩に、一目惚れしましたと報告しにいった。

 本当のことだったから。

 その後、あの時すぐに電話をしなかったことを、あとから物凄い後悔するのだが・・・

 かなり浮かれてたのか、仕事が終わったら連絡するつもりだったが、電話番号を書いた紙をうっかり寮に置いてきたことを思い出してつい油断をした。

 仕事でいつもは絶対にしない、ドジをしてしまい、そのまま入院してしまった。

 全治一ヶ月。

 両足骨折してた・・・動けないなんて。

 電話番号ぐらいは暗記しとけばよかったなと思ったが、後の祭りだ。

 病室からは、そもそも動けないし、紹介してくれた先輩に連絡できずにイライラしてた。

 もう一度会いたい。

 絶対にもう一度会いたい。

 一ヶ月すぎた頃、松葉杖を駆使して、何とか寮に戻り、電話番号を持って公衆電話に行く。

 頼むから出てくれ。

 祈るような気持ちで電話をする。
 
 それから俺達は、無事、付き合うことになったのだ。
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