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失われた記憶 その7
しおりを挟む食事は、お屋敷の中でとると思ってたけれど、なぜか、ログハウスに案内された。
ログハウスが有るんだ・・・まあ、ログハウスっていうには、ものすごい広いけど。
でも、食事は広いお屋敷の方がよかったな。
だってレオンの父親とすごい距離が近い・・・けど、仕方ないか。
それにしても、正装しているレオンの父親、本当にイケメン。
濃紺の騎士団が着る制服らしくて、見とれてしまう。
号泣姿しか見てないけど、レオンの年取ったバージョンの破壊力ったら・・・ものすごく緊張しちゃう。
ご飯、喉にとおるかな・・・
食事が始まろうとしたそのとき、間に合ったなと声がした。
いつの間にか、やみちゃんがいる。
「あれ、やみちゃんどうしたの?」
「聡にさ、夕飯は騎士団長の家で食べろって脅されたからさ。」
プリプリ怒った様子で、
「あいつ、本当にマザコンだよ、レオンは心配しすぎだって言ってたし、オレもその意見に賛成だけど、まあ、オレはレオンの言うことは聞きたくないってだけで、こっちに来てやった。」
「そうなんだ。」
レオンてば、やみちゃんに嫌われてるなあ・・・人型のやみちゃんは一応正装していた。
可愛いけど、なんかの発表会にいくみたい。
でも、
「じゃあ、食事、はじめてもらおうか、アルフォンス」
と、やみちゃんが騎士団長に向かって言った。
顔は可愛らしいけど精霊って多分、うちらより、はるかに年上だもんね。
騎士団長はちょっと固い顔を崩して執事に追加の料理をたのんでいる。
でも、助かった。
だって執事も侍女もいるけど基本二人っきりはきついよ。
聡に感謝しないと。
マザコン万歳。
「やっぱりさ、たまには違った趣向のご飯も楽しみだな。」
「お口に合うといいのですが」
やみちゃんが執事に言われている。
食事が運ばれてきて、前菜からスタートした。
やみちゃんが、
「オレはこういうチマチマ運ばれるのイライラするんだよね」
と言ったので、執事が慌てて、料理を全部出すように指示してる。
やっぱり、精霊って恐いものなのかな、と思いつつも、早く食事が終わりそうだなと期待した。
なので、前菜の次に、すぐにメインが来て、わたしは分厚いステーキ肉を切った。
レオンてば本当にお金持ちなんだな・・・
ステーキはナイフが要らないほど柔らかかったし、ステーキにかかったソースもすごく美味しい。
と思っていると、あっという間にスープや、パンや、デザートまで来た。
さすがに一つ、一つの料理、凝っている。
夢中で食べていると、やみちゃんが、
「ん?なんか、やけに静かだな、ベルはいつも、おしゃべりなのにどうしたんだよ、あっそうか、記憶喪失だったけ、亮達が大慌てしてたからな、そういえば、あれからしばらく極楽鳥のやつ、見てないな。」
騎士団長がやみちゃんを睨んでる。
それに気がついたやみちゃんは、いたずらっ子のように、
「本当になんか居心地悪いな、それにしてもさ、ベルってば、オレには教えてくれればいいのに。本当はラブ、ラブだったなんてさ。」
「えっ?」
「だって、ベルがかかっている呪いって、この世で一番忘れたくないものなんだろ。」
「何よりも大事なものが奪われるとかだったみたいだけど、命じゃなくて、記憶ですんでよかったな。」
モグモグしながらやみちゃん一人でしゃべってる。
「まあ、普通だったら記憶はどっちかのはずが、二つとも忘れているんだもんな、アルフォンスもよかったな」
騎士団長がますます睨んでる。
やみちゃん、大丈夫なの?
「それって、同じくらい大事だと言う証拠だしな、まあ、器は違うが、一つの魂を愛しているってことだからな」
騎士団長の顔色が変わった。
「やみちゃん、それ、なんの話なの?」
「んっ、まあ、ロマンスの話だよ」
お腹一杯になったのか、猫やみになって、
「じゃあ、散策という名のパトロールに行ってくる」
と言って、部屋を出た。
残された私達は、やみちゃんを呆然と見送ったのだった。
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