息子が悪役令嬢だった件

失われた記憶 その３

　最近なんか、急に忙しくなってきた。

　伝説の剣、呪い？事件の後は、暫くゆっくりしてたのだが・・・

　少し寝込んだせいか、侍女の仕事をごっそり、レオンの侍女がやってくれているのも大きい。

　お陰で、侍女の仕事をする必要がなくなった私は、最初は暇をもて余した。

　レオンの侍女は、イザベラのついでに、私にも化粧をしてくれたので、どこか良いところのご令嬢と間違えられて、いろんな学生に交際を申し込まれたりした。

　姿勢や言葉遣いが直ったせいもあるから、マナー教室の成果も出てるようだ。

　勿論、交際は全部、丁重にお断りしたけれど。

　私は元気なのに、

「少しは大人しく・・・いや、ゆっくりしなよ」

　聡とやみちゃん達に言われたが、呪われているっていっても身体には危険がないって学園の医者に言われた。

　それに、今は新たに、食堂の新作メニューのカレーを試作中なのだ。

　食堂のいつものメンバーとおしゃべりしながら、カレーを作る。

　ちょうど学校の畑にもカレーに合いそうな野菜や、ハーブ類が育っているからだ。

　それに、亮の好物で、とっても楽しみにされている。

「最近、ベル、急に綺麗になったな、気品も感じるぞ。」

　食堂のおじちゃんに言われる。

「ありがとう、イザベラの今の侍女がとても優秀で、私の化粧もしてくれるんだよね。」

　おばちゃん達が、

「あんだけ通ってた騎士団長さまはどうしたんだろ」

　ああ、レオンのお父さんか。

「あんなにベルにご執心だったのに。」

「ご執心？」

「まあ、結構、歳の差があったし、騎士団長って二度めだろ。」

「二度めだろうが、あんないい男、大歓迎だけどね。」

　とおばちゃん達。

　へえ、奥さんいないんだ。

「ベルは若いし、今じゃ選び放題だしな。」

「選び放題なんてそんなことないよ。」

「でも最近告白ラッシュだよね。」

　そうなのだ。

　なぜか、食堂にくる先生や、生徒も、からかっているのか、大分困っている。

　最近は食堂が男子生徒や教師でよく混むようになった。

　売り上げはうなぎ登りなのだが・・・

　余りに異常な様子に、流石に聡がおかしいと気づいたみたい。

　一度、血相を変えて、オランと一緒に食堂にきた。

　そして、私を見て、こそこそとメモ取ったり、ひそひそ話したかと思うと、

「絶対、攻略対象と関わるなよ」

　と言って、慌てた様子でオランと何処かに行ってしまった。

　攻略対象に関わるなって聡と亮の方でしょ。

　私は全く関係ないはずだけどな。

　関わるなって言われたけど、もう、ちょっと関わっちゃったけど大丈夫かな・・・

　まあ、大したことないし、大丈夫なはず。

　後でまた聡に報告すればいいか。

　と軽く考えてた私が馬鹿だったと後ですごく後悔するのだった。