息子が悪役令嬢だった件

知花虹花

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現実世界 その7

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 もう、なにも手がつかなくなった。

 恋愛ボケ。

 自分でもそう思う。

 夢心地で家に帰ったのはいいのだけど・・・

 次の日は見事に遅刻したうえ、朝の仕事はボロボロだった。

 朝番にするんじゃ、なかった。

 発注は間違えるは、注文を聞き間違えるわで、みんなにさんざん迷惑をかけてしまった。

 こりゃまずい。

 いい歳して恥ずかしい。

 仕事だって、アルバイトだからっといって手を抜くんじゃなくて真面目にやらないと。

 それにこの仕事は好きなのに。

 何度か、正社員を打診されたこともあったのだが、若いころ一度、就職したときに精神的にやられたので、なかなか正社員になる決心がつかなかったのだ。

 それに、今更この歳でまさか、キスの一つや二つ、動揺もしないし、ちゃんと脳内でシュミレーションもしてたから、何でもないことだと思ってた。

 でも、すみません・・・思いっきり動揺している。

 初めてだったんだよおお。

 浮かれるでしょ。

 浮かれない人っているのかな? 

 アラサーだけど、少女みたいになちゃった。

 しかも、あれって大人のキスも混じってたよね。

「少し口をあけて」

 って言われて、舌が侵入してきたことに、凄い動揺した。

 実際にやるのと、漫画や小説で読むのと違う・・・よ。

 でも、気持ち良かった。

 ほんのり日本酒の味がして、それが終わると、またぎゅうっと抱き締められて、ほっぺや、おでこにキスをされる。

 それから、首筋、胸、にキスが降りてきて。

 居酒屋が個室で良かったあああ。

 朝が早いからと、送ってくれた帰り際にもキスをしてくれて・・・

 赤い顔ばれてないよね・・・

 でも、そもそもこっちからお願いしたからな・・・

 いやいや、ずっと手を出したかったっていってくれたし。

 大丈夫だよ・・・ね。

 それにしてもキスする前に歯を磨くべきだったのかな、もう何が正解かわからなくなっていた。

 脇もちゃんと処理したし、できることはやってたはず。

 バイト先であまりにもポンコツな様子だった私を心配して話を聞いてくれた先輩が、

「そもそも、はじめは大切すぎて手をなかなか出さない人もいるから、そのパターンだったんじゃない?」

 そんな少女漫画みたいなパターンも実際にあるんだ。

「まあ、今時の男子って意外に草食男子が多いし、一概には言えないけどね。むしろ、女の方が肉食系でしょ。でも、手を出されたでしょ、良かったじゃん」

「うん、でもキスだけだよ」

 だってお店の中だし、あのままはちょっと・・・

「キスだけでそれじゃ本番はどうするのよ」

 本番て、確かに。

「もう責任とってもらって、結婚しちゃえば」

「それはないよ、彼、若いもん。」

 急に現実に戻される。

 私、収入安定してないし、そうかといって、ぐずぐずとフリーターも続けられないだろうし・・・

 それに何より私、肝心なこと忘れてた。

「私、まだ彼に処女って言ってない・・・」

 先輩は呆れた顔でいった。

「むしろ据え膳だと思うけどな。」

 でもな、私が男の立場だったら重い。

 自分でも重いのにどうしたらいいんだろう。
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