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現実世界 その2
しおりを挟むあの飲み会で、素面なのに、やらかした私は、バイトのみんなから、優しくされた。
出来れば、みんな忘れてくれればいいのに・・・ 叫ばなきゃ良かった。
「里子は、年齢を聞かなければ、二十歳代に見えるよ」
「ありがとう」
「それに顔、可愛いんだから、自信をもって」
「はあ」
「一応、変なのにはモテるのにね・・・」
励ましてくれるのは、本当にありがたいんだけど、こんな歳でフリーターで、結婚の予定もなくて、キラキラした若い子達と一緒に働いてるのって正直つらい。
親も、最近になって、やっと諦めたのか、今から、手に職をつけなさいと言ってきた。
諦められるのも、けっこう辛い。
どこからか、聞いたことのある声が聞こえる。
「親って、こういうものよ」
うーん、最近、幻聴激しいな。
歳をとって来た両親を見ると、本当に申し訳ない気持ちになるけど、こればっかりはどうしょうもない。
自分が誰かを好きになって、結婚というよりは、むしろ親が生きているうちに、親孝行の一環として、何とかしないとって方が強い。
子供の義務感、それって、本当の幸せなの?
「だから、私は自分の息子には、どんな形でも、幸せであれば、それでいいと思っている」
時々、誰かがささやく。
でも、息子だったら、社会人になったらもっと大変じゃんと、思わずつっこむ。
息子なんていないけどさ。
日々のアルバイトに、終われる毎日が、続いていたある日、バイトの先輩から、よかったら人を紹介しようかと声をかけられる。
「なんか、年上でも年下でも、オジサンでも、なんでもこいって素面で叫んだって聞いたから」
笑いながら、言われた。
「はい、ちょっと、いや、大分、追い詰められて」
先輩は既婚者だ。
お子さんも三人いて、毎日忙しそうにしている。
あの日の飲み会は、さすがに子供が小さいからって断ってたな。
でも、噂聞くの早いな、みんな口が軽いんだから・・・
先輩の知り合いの人の後輩が、まだ結婚してないから、どうかなって言ってくれた。
「ぜひ、お願いします」
頭を下げる。
もう、恥ずかしさは一ミリもなかったけど、後悔したのは会ってからだった。
「私が大分、いや、ものすごくお姉さんだよ・・・ね?」
自己紹介が終わったあと、私が言った言葉だ。
先輩に、どうやら年下らしいよって言われたけど・・・年下過ぎますよ、犯罪。
私がいくら童顔だからって、さすがに結婚前提はないな。
向こうが可哀想だ。
彼は二十代前半だったし、そして、しっかり社会人として働いている。
ああ、若いのに見習わないと・・・少し話をして、その日は解散になった。
とりあえず、連絡先は交換した。
先輩が興味津々で、
「どうだった?」
と聞いてきたけど
「めっちゃ若いけど、しっかりしてましたね」
と無難に答えた。
心の中では、ないなと思いながら・・・
でも、先輩は笑っていった。
「向こうは、とっても気に入ったっていってたらしいよ、近いうち連絡があると思うよ」
えっ?絶対あり得ない・・・と思ったけど
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