息子が悪役令嬢だった件

現実世界 その１

　あれ、これって夢？こっちが夢か。

　夢だ？？？よ・・・ね。

　どっちが夢なんだっけ？

　そもそも、誰の夢なの・・・かな？

　身体がとっても軽い。

　やっぱり、若くてほっそりしてると、心まで軽くなるよう。

　うん、リアルに細い。

　今日もバイト行かないと、って、今日は遅番だったけ？

　あれ？どこかで声が聞こえる。

「お母さんだって、若い頃は、ほっそりしてたんだからね」

　誰に言ってるんだろう？

　私は小さいとき、とてもポッチャリしてて、よくいじめられていた。

　ポッチャリって・・・

　いや、単にデブだった。

　体が重いせいで、動きも鈍くて、一重の目も、糸みたいだった。

　そのせいか、男の子に意地悪されたり、からかわれたり。

　ところが、思春期になって、急に痩せはじめて、一重が二重になり、括れができて、出るところは出て、かわいくなりはじめて・・・でも、モテはじめると男性不信が始まった。

　アノトキ　カラカッタノニ。

　アノトキ　イジメタクセニ。

　その事ががトラウマとして残る。　

　そして男性不信・・・完全に拗らせた。

　でも、友達がいれば、楽しいからいいと思ってた。

　ただし、だんだん、年が適齢期というものに近づきはじめると、周りには遊ぶ友達が、段々いなくなってきた。

　子供が小さいからとか、彼氏と旅行に行くからとか、　ウラギリモノ。

　親も、うるさくなってきた、いとこの結婚式があるたびにいわれる。

　孫が産まれたって、報告の年賀状がくるたびに・・・　結婚ってそんなにしないといけないものなの？

　世間体ってそんなに大事デスカ？でも、仕事が辛くてやめた私は、実家で居候状態だった。

　もっと勉強しとけば良かったし、せめて、資格でも取っておけばよかったかも。

　デモ　ソノトキハ　キガツカナイ。

　そういえば、親は、ちゃんと勉強しなさいっていってたな。

「こういうことって、親になるとわかるんだよね」

　アルバイトを転々としながら、日常がものすごいスピードで過ぎていく。

　なんで、うまくいかないんだろう。

　なんで、私より可愛くない子が彼氏がいるんだろう。

　その娘は彼氏とは別に付き合ってる人がいるよ。

　なんで、私より性格が悪い子が結婚してるんだろう。

　その娘は、男の人の前だと態度が変わるよ。

　なんで　なんで　なんでかなあ。

　じゃあ、あなたは可愛いの？

　じゃあ、あなたは性格いいの？

　いいわけない。

　もし、よかったらもうとっくに誰かに選ばれてる。

　そう、誰か私を選んで。
　
　お願い。

「お互い、クリスマスまでには、結婚しないとね」

　友達が言う。

「クリスマスって、もう過ぎたよ？」

「違うよ、年齢だよ」

「へえ、そんなのがあるんだ、知らなかった・・・」

　年齢でいう、クリスマスイブ、クリスマス、大晦日を過ぎ、それらを越したとき、今度は、もう結婚の話題は、みんな腫れ物をさわるようになった。

「もうこうなったら、年上でも年下でも、おじさんでも、なんでもこいっ！」

　私はバイトの飲み会で、そう叫んだ。

　ちなみに、お酒は飲めなかったので素面だったし、みんなドン引きだったと思う。