息子が悪役令嬢だった件

騎士団長がパパ？ その７

　
　学園に帰る道のりは、地獄だった。

　アルの膝の上に乗せられたのは、行きと一緒だったけど、馬車のスピードが違う。

　半泣きになる私を抱っこしながら、ずーっと頭を撫でたり、キスしたり、手をぎゅっと握ったりして、おそらくは、慰めてるつもりかも知れないけど、私はそれどころじゃないいい。

　大体、馬車が、ジェットコースター並みの怖さって、おかしいだろ？

「マジ　フザケルナ」

　本当は、罵詈雑言、文句を言いたかったけど、私は結局のところ、帰りの道のりの半分は気絶してた。

　確かに、早く帰りたいっていったのは私だけど、猛スピードで帰りたいなんて言ってない。

　そもそも、記憶が正しければ、行きの道は私は二泊しましたよね？

　その道のりを、一日で帰ってきたということは・・・

　さてはレオンめ、一日で行けるんだってことを、聡に証明するつもりだな。

　本当に腹黒いな。

　まあ、帰りは暴走馬車だったんけど、馬車の運転手、従者って言うのかな？行きの馬車は、ずっと安全運転だったと思うんだけど。

　行きと一緒のあの、のんびりとした穏やかなおじいさんだったよね？？？

　人は見かけによらないって、本当だな。

　命からがら帰ってきたので、レオンの馬鹿野郎に一言言ってやろうかと思ってたんだけど、その前に事件が起こった。

　首中、虫刺され事件。

　私ったら、純粋な息子に何てものを見せてしまったんだ。

　最近、親としての自覚が緩んでしまった。

　ちょっと若返ったからって調子のってしまったあああ。

　慌てて自分の部屋に戻り、首が隠れる服を探す。

　確か、寒い日用に、いくつか揃えたんだっけ。

　一応、長袖とはいえ、薄手のメイド服だから多少、暑いけどなんとかなるかな？

　念のため、鏡の前でどれだけついているか見てみると・・・

　引くわ。

　ドン引きだ。

　首だけじゃなかったわ・・・

　それにしても、意外に、聡ってリアルだとわかんないのかな？でも、レオンがガン見したのが私でなく、聡だったのも、さすがに引いたからね。

　しかも、あのいつものクールな顔から、想像もつかないレアな顔したのに、聡は気がついてなかったけど。

　あの調子なら、聡の貞操はまだ、大丈夫そうだったけど、一応忠告はしよーっと。

　それにしても・・・イザベラってば、一ヶ月会わないうちに美貌が跳ねあがってた。

　人は恋をするときれいになるって言うけど、あれは違うな。

　ズバリ、メイク技術だ。

　まあ、私がメイク下手なだけかもしれないけれど、それでも素材がもともといいイザベラを、あそこまで変身させるなんて、おそらくレオンの侍女は腕が相当いいと思う。

　自慢の銀髪も、ドリルが全く見えないように編み込みされてた。

　私じゃせいぜい、ドリルは置いといて、三つ編みぐらいしかできないもん。

　だから、いつもは、あのドリルを三つ編みとまとめて、ひとくくりにしてたんだけど、　あのドリルを隠せるなんて、すごいわ。

　それにしても、ログハウスでは、何回もドレスを着る機会があったけれど、この虫刺されのようなキスマーク、誰にも指摘されなかったけど、そう言えば、途中から呼び名が、ベル様から、奥様になってたのはそのせいか・・・

　今考えると、めちゃくちゃ恥ずかしい。

　奥様は止めてって、何回も頼んだけど、道理で生暖かい目をされた訳だ。

　とりあえず、着替えて聡達のところに戻ったら・・・出た。

　諸悪の根源。

　アルが嬉しそうに、こっちに来る。

　イケメンだが、仔犬のようだ。

　さすがに、暴走馬車の従者が疲れはてたので、アルが馬車を置きにいってたのだ。

　でも、そのあと食堂のおばちゃん、おじちゃんに、ものすごい勢いで連行された私を呆然とした顔で見送ってる。

　あとはもうレオンに任そうっと。

　それにしても甘、甘に甘やかされた生活に慣れてしまった私は、あんなに学園に帰るといったのに、学園生活がなんだか物足りない生活に感じてしまうのだった。