息子が悪役令嬢だった件

知花虹花

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騎士団長がパパ? その2

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 一ヶ月後、私はやっと学園に帰ってきた。

 長かったあ。

 もう、私は色んな意味でよれよれだった。

 まず、馬車はもう二度と乗りたくない。

 くそ暴走馬車め、今でも涙が出そうだ。

 若くなかったら本当に倒れてる。

 若さって括れより大事なんだな。

 聡は、私が帰ってきたと聞いたみたいで、レオンと出迎えてくれた。

「どうせ親父が悪いんだろうけど、それにしても遅い、2、3日が、何で1ヶ月になるんだよ?」

「聡ってば、家出娘を怒るみたいになってるよ」

 聡が親みたいだな。

 侍女がいなくて不便だったのかな?でも、そのわりには、ものすごい凝った髪型をしているし、メイクも変えてて、より美人に磨きがかかってる。

 結局、最初はかなり怒ってたけど、私のよれよれ具合いを見たら、かえってものすごく心配してくれた。

「そうね、あちこち筋肉痛だしね」

 聡は心配そうに

「お母さん、首のところに、あちこち虫に刺されてるよ、赤くなってたり、青くなってたりしてるよ」

 それを聞いて、いつもは超クールのレオンは信じられないものをみた・・・みたいな顔して、なぜか聡の方をガン見している。

 ひえええっ

 心の中で悲鳴をあげて、ものすごいスピードで私は自分の部屋に戻った。

 急いで着替えて。

 そして一応、涼しい顔で二人のところに戻った。

「あれ、着替えたの。でも、お母さんその服、暑くないの」

「暑くない」

 首まですっぽり隠れる、襟のついたシャツと、ロングスカートのメイド服に着替えた。

 前に、メイド服の露出が多かったので、クラシカルの上品なロングスカートのメイド服をいくつか、こっそり揃えてたのだ。

 それにしても、メイド服は久し振りだ。

 騎士団長のお屋敷では、メイド服を着るのをみんなに全力でとめられて、動きずらいドレスを着るしかなかった。

 しかも、なんだか豪華なドレスだ。

「まあ、無事に帰ってきてほっとしたよ。良かったよ。」

「心配かけたね」

「俺は毎回レオンに無事かどうかの確認はしてたんだけど」

 泣ける、ありがとう。

「レオンは無事だし、大丈夫だよ、としか言わないし」

 おいっ、レオンめ、本当は私のことほっといたよね。

「ありがとう、聡は待っててくれてると思ってたよ」

「俺と一緒にいるんだから、全く心配しなくてもいいのに」

 後ろからパパが声かけた。

 馬車、置き場においてきたんだな。

「へえ、親父もまた来たんだ、そもそも親父が一番信用できない。」

「そうだよ。まさかこんなに長くなるなんて思ってなかったから、部屋にあった私の食料品がおじゃんになったじゃん」

「俺は本当はここにまた連れてきたくなかったが、レオンがもういい加減にベルを連れてこいっていうし」

「なぜレオンのいうことを聞く?」

「レオンは俺の、この世界の先生だからな」

「へえ・・・」

「でもレオンだけじゃないぞ、一応ベルも、もう帰るってガチで怒るから・・・」

 当たり前だよ、全く

「親父、ベルって呼んでるのか?」

「まあな、屋敷で里子って呼ぶわけにもいかないから、二人ともこの世界の呼び方にしたよ」

「それにしても、一ヶ月も何話してたんだよ」

「俺のところに、嫁に来るように説得してた」

「ああそうですか、ってお母さんはこの世界ではまだ未成年だぞ」

「この世界では犯罪じゃないってレオンに言われたが」

「そうだった。それでもとりあえずは、俺が学校を卒業するまで侍女としていてもらうつもりだったけど」

「学園卒業したらお前、魔法使いになるんだろ」

「そうだけど、なんでそれを?」

「レオンから、聡は元の両親から独立するつもりだから、ベルはいつまでも、お前の侍女でいられないってきいたし、ベルからは、お前から自立しないといけないって聞いたから、俺のところに嫁にこいっていってる」

「まあ、自立しろとはいったけど・・・」
  
「本当は戻らないで、そのまま結婚したら、自立できてよかったのにな」

 いやいや結婚は自立ではないから・・・

 「ちょっと待ったあ」

 「あっ食堂のおじさん、おばちゃん達だ。」

 私は、がっちり捕まった。

 そのまま、ずるずるずる。

 おじちゃん、おばちゃんにひきずられる。

 騎士団長の方を見て

「文句は言わせない。ベルは連れていくからね」

「全く、新メニュー作るって言って1ヶ月も帰ってこないんだから。」

「騎士団長が離さなかったらしいよ」

 ひそひそ

「その辺の話も聞かないとね」

「惚気、聞く前に新メニューだからね」

 食堂に連行ですな。

 レオンがポツリと

「嫁にいかなくても、ここの食堂で自立して働けるんじゃないかな?」

 親父の顔色が、さあーっと悪くなって

「そんなの駄目だ、やっぱりまた連れて帰る」

 慌てて追いかけていった。
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