息子が悪役令嬢だった件

知花虹花

文字の大きさ
上 下
15 / 295

次男坊はヒロイン? その2

しおりを挟む

「お母さんそれ、今言っちゃだめ」

 小声で聡にとめられて、とりあえずは黙る。

「なんで?」

「まだ決まった訳じゃない」

「でも・・・」

「とりあえず黙れ」

 えっ?珍しく温厚な聡が・・・怖いな。

 私は空気を読んで黙ることにした。

 それに言われてみたらヒロインて確かピンク色の髪で肩に小鳥の形した精霊を乗せてるけれど、ペットだと思ってる痛い奴って言ってたんじゃなかったっけ???

 こそっと聡に耳打ちで

「そっか、肩にはなにもいないから、ヒロインじゃないんだよね?」

 と言うと肩をすくめて

「それはお母さんが魔力0だから見えないんだよ。でも俺もお店では見えなかった。だけど、今はちゃんと亮の肩に乗っかってるよ」

「へえ、見たいな・・・」

「あっ、でも、小鳥じゃなく、カラス並み・・・いや、鸚鵡ぐらいにでかい鳥だな・・・それにしても、小鳥じゃないなんてなぜだ?」

 首をかしげて

「亮、お前の肩に乗ってる鳥だけど・・・」

 亮の顔が輝いた。

 さすがヒロイン、とっても可愛い。

 言ったら殺されるけど。

 亮はほっとした様子で、

「よかった、兄貴には見えるんだ。誰にも見えなくて幽霊か、俺の妄想のペットだと思ってた。フェニックスのこと・・・」

「ん?フェニックス?」

「うん、名前、かっこいいだろ?」

「うん、まあ名前はかっこいいけれど・・・」

「ん?」

 なぜか聡が鳥の方を向いたら、鳥が・・・口パクしてる。

「えっ?でも、お前のその鳥、自分で名前は極楽鳥っていってるが・・・」

「へえ、そうなんだ・・・って、兄貴はフェニックスの言ってることわかるんだ」

「見えるのにお前はわからないのか?意外だな・・・」

「ねえ、亮のペットって極楽鳥なの?不死鳥なの?小鳥じゃなかったの?」

 気になる。

「そうか、でかい鳥だから可愛い名前をやめたのか?しかもカラフルだしな」

「でかい?カラフル?」

 亮は、可愛く首をかしげて

「フェニックスは雀ぐらいの大きさで、赤い小鳥だよ」

「えっ、亮はあれが小鳥に見えてるのか?でも、小鳥にフェニックスって・・・」

「赤いから」

 聡が考え込む。

「まず、お母さんは全く見えない、亮は雀サイズで色が赤い鳥に見えてる、俺は鸚鵡並みにでかい鳥に見えてるし、おまけに南国の鳥みたいにカラフルだし、精霊の見え方は魔力によるのかな?でも俺が見たところ、亮の魔力は半端ないんだけれどな・・・」

 とぶつぶつ言ったかと思ったら

「まあ魔力なくてもお母さんも、もしかしたら俺と手を繋げば見えるかも?」

 聡が私の手を握ると

「本当だ。見えたよ。でかいカラフルな鳥だね」

 うん、どう見ても南国の鳥だわ。

 南国っぽい極楽鳥の名前がしっくりくる。

 亮ったら、びっくりした声で

「えっ本当?フェニックスって、大きくもなるんだ・・・」

「うーん、亮は魔力強いのに、なんで小鳥に見えるんだろう???」

 すると、突然、聡が極楽鳥の方を向いて 

「えっ擬態?」

「お前、ただの鳥じゃないな。ああ、ごめん、精霊か、それにしても・・・」

「わかった」

 独り言のように、おそらく、極楽鳥と会話をしているようだった。

「何がわかったんだよ?」

 亮が心配そうに言うと

「ああ、その極楽鳥、お前に可愛く思われたかったんだって」

 なんじゃ、その理由・・・と私は思ったけど

「へえ、でかくても、好きだといってよ」

 と言う亮に対して、

「俺と手を繋いでみる?とりあえず本物が見えるぞ」

「なんか嫌だけど仕方ない」

 しぶしぶ手を繋いでいるが、その姿は兄弟というより単に、美少女同士が手を握り合ってるので、とっても絵になる。

「うわっ、本当だ。フェニックスかっけー」

 亮が感動してる。

「だから極楽鳥・・・あっフェニックスって呼ばれるのも、気に入ってるからいいんだって」

「へえ、名前にこだわりないんだね、この鳥」

「お母さん、一応、そいつ、鳥じゃなくて、だいぶ怪しいけど・・・おそらく精霊?だからな」

「怪しい?」

「まあ、それはおいといて・・・」

「ところで亮、ついでに聞くけど、お前の今の名前は何?」

 聡ったらついでって言ってるけど、なんだか、唐突じゃない?

 もっとも亮は気にしていないようでさらっと

「そういえば自己紹介してなかった。オレの今の名前はエミリアだよ」

 あわわわ、やっぱりヒロインじゃん、と心の中で思った。

 怒られるから、声に出して言わないけど、でも

「よりによって、やっぱりお前かよ・・・」

 名前を聞いて、とどめさされたのか、聡は頭を抱え込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

寵愛の檻

枳 雨那
恋愛
《R18作品のため、18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。》 ――監禁、ヤンデレ、性的支配……バッドエンドは回避できる?  胡蝶(こちょう)、朧(おぼろ)、千里(せんり)の3人は幼い頃から仲の良い3人組。胡蝶は昔から千里に想いを寄せ、大学生になった今、思い切って告白しようとしていた。  しかし、そのことを朧に相談した矢先、突然監禁され、性的支配までされてしまう。優しくシャイだった朧の豹変に、翻弄されながらも彼を理解しようとする胡蝶。だんだんほだされていくようになる。  一方、胡蝶と朧の様子がおかしいと気付いた千里は、胡蝶を救うために動き出す。 *表紙イラストはまっする(仮)様よりお借りしております。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R18/TL】息子の結婚相手がいやらしくてかわいい~義父からの求愛種付け脱出不可避~

宵蜜しずく
恋愛
今日は三回目の結婚記念日。 愛する夫から渡されたいやらしい下着を身に着け、 ホテルで待っていた主人公。 だが部屋に現れたのは、愛する夫ではなく彼の父親だった。 初めは困惑していた主人公も、 義父の献身的な愛撫で身も心も開放的になる……。 あまあまいちゃラブHへと変わり果てた二人の行く末とは……。 ──────────── ※成人女性向けの小説です。 この物語はフィクションです。 実在の人物や団体などとは一切関係ありません。 拙い部分が多々ありますが、 フィクションとして楽しんでいただければ幸いです😊

ドS騎士団長のご奉仕メイドに任命されましたが、私××なんですけど!?

yori
恋愛
*ノーチェブックスさまより書籍化&コミカライズ連載7/5~startしました* コミカライズは最新話無料ですのでぜひ! 読み終わったらいいね♥もよろしくお願いします! ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ ふりふりのエプロンをつけたメイドになるのが夢だった男爵令嬢エミリア。 王城のメイド試験に受かったはいいけど、処女なのに、性のお世話をする、ご奉仕メイドになってしまった!?  担当する騎士団長は、ある事情があって、専任のご奉仕メイドがついていないらしい……。 だけど普通のメイドよりも、お給金が倍だったので、貧乏な実家のために、いっぱい稼ぎます!!

男友達の家で寝ていたら、初めてをぐちゃぐちゃに奪われました。

抹茶
恋愛
現代設定 ノーマルな処女喪失SEX

【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】

階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、 屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話 _________________________________ 【登場人物】 ・アオイ 昨日初彼氏ができた。 初デートの後、そのまま監禁される。 面食い。 ・ヒナタ アオイの彼氏。 お金持ちでイケメン。 アオイを自身の屋敷に監禁する。 ・カイト 泥棒。 ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。 アオイに協力する。 _________________________________ 【あらすじ】 彼氏との初デートを楽しんだアオイ。 彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。 目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。 色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。 だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。 ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。 果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!? _________________________________ 7話くらいで終わらせます。 短いです。 途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。

処理中です...