攻略対象の件

王立学園 図書館司書 ヴィオ 1

　　
　最近、イザベラが図書館に来ない。

　館長代理の仕事と、司書の仕事に追われている俺にとっては、心のオアシスだったのに。

　美人で目立つ彼女が、図書館に住んでいるのかってほど、来てたのに、いきなり何故だ。

　それに、取り巻きの男子生徒、特別クラスの生徒二人も、彼女がいないからか、来なくなった。

　俺としては、そいつらなんかは、どうでもいいのだ。

　大体、あいつらに毎回、イザベラとの楽しい会話を邪魔されるから、こちらとしては、むしろ来て欲しくないのだが・・・

　イザベラとの会話はとても楽しい。

　かなりの博識で、もしかしたら、分野によっては、この国の研究者に匹敵するぐらいだと思っている。

　だが、国に目を付けられると、ますます届かない存在になりそうなので、一応、さり気なく、注意を促したり、イザベラが借りた本が、国のチエックに引っ掛かりそうな、ヤバめの本だった場合は、貸したことを、改竄かいざんしたりした。

　ついでに、邪魔者を排除しようと思ってたので、取り巻きの男子の一人である、レオンハルトが借りたように細工をした。

　それができるのは、定期的に、レオンハルトのお屋敷に本を貸し出しているからだ。

　ここのところ、レオンのお屋敷には、いろんなジャンルの本を頼まれていた。

　図書館の本を貸し出すといっても、決して、ただじゃないからな。

　レオンハルトは騎士団長の息子だから、大金持ちである。

　なので、毎回、図書館に、寄付金という形でお金を納めてもらっていた。

　だから、ヤバめの本を多少混ぜても、館長は特に問題視しないでいいといい、館長代理の俺が、本を適当に、チョイスできるのだ。

　そういえば、別の教師から、レオンハルトの父親が魔物退治で負傷して、屋敷で静養しているって聞いてたが、息子が学校に来てるのだから、父親が復帰したのだろうと思っていた。

　レオンハルトの噂話も聞いている。

　さすが、騎士団長の息子だけあって、父親が臥せっている間、騎士団に最年少で、花形と言われる父親と同じ第一騎士団に所属して、今の騎士団長の下で魔物を退治していたらしい。

　父親が、負傷を理由に騎士団を引退して、副団長が騎士団長になったらしいが、騎士団長がいなかった、ここ二年程、副団長の功績は鰻登りだったらしい。

　ただ、副団長が騎士団長にせっかくなったのに、周りには、俺は役職を預かっているだけだと、言い張っているらしいと噂になっている。

　どうやら噂話では、実は騎士団長の後継者は、すでにレオンに決まっていて、学園を卒業と同時に、騎士団長に抜擢するらしい。

　そのことについては、第一騎士団からは、誰からも文句がでてないそうだ。

　確かに、実力はあるんだろうなと思うのだが、所詮、噂話だし、ちょっと、決定打にかけていると思った。