俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

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その42

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 確か薬は魔法の塔で作っているはず・・・

「まさか泥棒しに・・・」

 そんな子に育てた覚えはない・・・はず。

「そんなわけないだろ、師匠が記憶なら簡単に取り戻す薬の場所を知っているっていうから・・・」

 記憶を取り戻す薬があるだと?

「そんなのあるのか?」

「うん、師匠が場所知ってて、連れていってくれたんだけど思ったよりも遠くて結構時間かかってさ」

 どこまで行った、お前ら・・・

「で、肝心のお前の師匠はどこ行った?」

 あいつのことだから自慢そうに一緒に薬を持ってくると思ってたが、珍しく亮の傍にいないんだな。

「師匠なら、レオンのところだと思うよ」

「レオン?」

 意外な人物の名前を言われて少し驚く。

「なんかレオンが師匠に用事があるからって呼び出されてたから・・・」

 ああ、それなら納得、あの二人が一緒にいるとなかなか険悪だからな。

「そうか、じゃあとりあえずお説教はお前からだな」

「ええっ、怒らないって言ったのに・・・」

 亮は悲鳴をあげた。
 
 とりあえず俺は一通りお説教を済まして、聞いてみる。

「そういえば、肝心の薬はどこにある?」

「うん、これ」

 大事そうに小瓶を出してきた。

「これで、ベルの記憶取り戻せるって師匠と取りに行ったやつ」

 小瓶の中には何とも言えない色の液体が入っているようだ。

「危なくないんだろうな?副作用とか・・・」

 いかにもやばそうな色だし、こいつらどうも信用できない。

「当たり前だよ、一応、オレ飲んでみたし」

「飲んだのか?」

 ちょっと感心する。見た目やばそうなこれを???よく飲んだあ。

「うん、兄貴も飲んでみたら?黒歴史、きっと全部思い出せるよ」

 なんだそれ、かえって危険な代物だな。

「効能が心配だったし、俺、やらかしてるのが続いたからさ、やっぱり人体実験は必要だと思って自分で試したけど、でもこれがぶ飲みしちゃいけなかったみたいでさ、ほんの数滴でいいんだって」

「へえ」

「だからオレ、生まれる前の記憶も思い出してさ・・・」

 生まれる前って…気になる。

 それに、何にも考えてないような亮でさえ、一瞬、虚ろな目をしたのが、ますます気になる。

「へっ、へえ 聞いた方がいいのか?・・・」

 亮は慌てて首を振った。

「師匠がそういう記憶が他の人にばれるのは、とても危険だから、イザベラにも、人に絶対に言うなって言われた。」

 ちっ、先にくぎ刺されていやがったか、でも一体どんな記憶なんだよ・・・でも、やばそうだから聞かない。

「まあ、よくやった。とりあえずは助かるよ」

 ベルも記憶を思い出すなら、ちょっとでも早い方がいいもんな。
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