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雨上がりの朝

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 カーテンから漏れる明るい日差しで目が覚めた。季節が移り変わり、日が昇るのが随分早い。
 孝也はまだ重たい瞼をそっと押し上げて枕元の時計を見た。まだ起き出すには早い時間だ。普段たっぷりと朝寝を楽しむ二人にはまだ夜の中にいると言えた。
 昨夜雨が降ったからか、少々肌寒い。寝る前に薄い毛布をかけて寝たのだが、蹴りどかしてしまったようだ。力の入らない手で手繰り寄せると、隣で微かな呻き声がした。起こしてしまったかと身を固くするが、すぐに穏やかな寝息に戻った。
 薄明るい部屋の中で則之を窺うと、こちらに顔を向けたまま気持ち良さそうに眠っていた。孝也は毛布を優しく引っ張って則之に体を寄せる。寄り添って二人の体に毛布をかけると、則之の体温もあいまって居心地がよかった。そっと則之の腕を持ち上げて胸に入ると、その腕を自分の背に回させた。則之に抱きしめられているようで、ふふ、と笑ってしまう。ふいに背に回った則之の手に力が入り、軽く抱き寄せられた。んん、と耳元で漏れた声にドキリとしてしまう。

「……おはよ」

 目を覚ましたらしい則之が眠そうな掠れ声を出した。背中から則之の手の平の熱が伝わってくる。吐息混じりの声の色香に余計に体温が上がってしまった。

「ん……おはよ」

 柔らかな声は則之の胸に潰れて少しくぐもって聞こえた。則之の背に手を回し、甘えるように胸に額を擦り付ける。則之はおかしそうに笑って孝也の髪を指で梳いた。

「まだ寝てていいね」

 則之が時計を見てそう呟く。孝也は撫でられる心地よさに目を細めながら頷いた。冷えた体はすっかり温まり、うつらうつらとしてしまう。それが分かったのか則之がそっと背を叩く。とん、とん、と幼子にするような仕草に眠りを誘われて孝也はおとなしく目を閉じた。感覚が鈍り、体から力が抜けていく。体の輪郭がぼやけるような心地がして意識が霞んでいった。

「たか……」

 則之もまた眠たそうな声を出す。背を叩く手も、髪を撫でる手もいつしかゆったりとし、遂には止まってしまう。ほとんど寝息のような声に孝也の意識はほんの少しだけ引きとめられた。
 則之、と反射的に呼び返そうとしたが唇は動いてくれなかった。もはや自分が声を出せたのか出せなかったのかすら分からない。すう、と柔らかな寝息が頭上から降ってくる。おやすみ、と心中で呟いて孝也もとろりと眠りに落ちた。
 弛緩した体は折り重なり、二人は穏やかな表情で向かい合っている。太陽は完全に顔を出し、高いビル群を照らし出した。動き出す町の中で穏やかな朝寝は続く。
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