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生死一如の生業に

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「無事に帰って来てよ? NさんがUNOやりたいって言ってんだから」

 詮索はせず、ヨウは軽い口調で言ってやる。今回仕事として手を組んだ友幸商事とはまた別に、遊び仲間であるNとレプリカの名を出した。気の合う四人はしばしば集まってくだらないことでいつまでも笑い合っている。無事に帰って来たらまたレプリカの家にでも押しかけて、一晩中遊んでやろう。

「またUNOかよぉ」

 銃を持つ緊張感が消え、佐々木は普段の柔さでけらけらと笑った。もういいよ、と言いながら佐々木は愉快そうだ。ヨウもつられて笑う。
 過酷な状況で生き延びるのに、次の約束は大切だ。数えきれない危機を切り抜けて来たヨウはそのことをよく知っていた。些細なやりとりに生かされた経験は数えきれない。
 帰って来たらなんて話をするせいでまるで帰ってこれないみたいじゃないかと佐々木は嫌がったが。縁起でもないことを言うなとヨウは一蹴する。これでも佐々木の実力はよく知っているつもりだ。ヨウと出会う前から佐々木はこうして生き延びてきた。そう簡単に失敗をして捕まるような男ならここには立っていないはずだ。

「でもサッキー下手だね。全然当たんないじゃん」

 六発撃って当たったのはせいぜい半分だ。それも中心ではなく、隅を掠めている程度だった。情報屋としての腕は確かでもこれでは殺し屋としてはやってはいけそうにない。うるせえ、と佐々木は口を尖らせる。
 引っ張り出してきたらしい銃も随分長いこと使っていなかったようで、ヨウが整備し直してやったものだ。試しにヨウが撃ってみればしっかりと中心に当たったので、銃のせいではなく持ち主の腕次第と言ったところか。

「肩の力抜いて、肘もうちょい曲げて」

 銃を構えた佐々木の後ろに立ち、ヨウは真剣みを帯びた声を出す。両肩に手を置いて促せば、固まっていた筋肉が意識的に脱力するのが感じられた。上がりすぎていた両肩が自然な形になる。銃を持つ手も軽く直してやれば、立ち姿は様になっているように見えた。
 いつの日かこうして自分も教えてもらったことを思い出して懐かしい気持ちになる。涼など初めて銃を触った時に射撃場の電球を割って暫く銃を持たせてもらえなかった。ひとつひとつ体を銃に合わせていく佐々木が過去の自分を思い出させる。
 佐々木は唇を真一文字に結び、真っ直ぐに的を見据えている。ゆったりとした呼吸は視線の先に集中しているのが感じられた。ヨウは静かに距離を取り、佐々木から離れていく。撃鉄が上がった。背中を見ているだけで次は当たるという確信があった。引き金にかけた指にゆっくりと力が込められていく。
 鋭い銃声が部屋に反響する。銃口は微かに跳ね上がり、煙を吐いていた。撃ち終えた腕がゆっくりと下りていく。細めた瞳が捉えた先、人型の的は中心にほど近く新たな穴を開けて佇んでいた。
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