裏社会の何でも屋『友幸商事』に御用命を

水ノ灯(ともしび)

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中空を駆け抜けろ

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 一方その頃、最深部を探して走り回っていた幸介と友弥は二手に分かれていた。堂々と地を行く幸介とは違い、友弥は敵に囲まれてしまえば突破するだけの力が自分にはないと判断する。友弥は天井を張り巡らされているダクトに目をつけ、適当な蓋を外して内部に侵入した。比較的新しい飛行船なのか、ダクト内がそれほど汚れていなかったのは幸いだ。成人男性であっても這いずることが出来るほどの広い隙間があり、友弥は匍匐前進で進んでいく。
 時折ダクトの隙間から下の様子を見ることができた。敵は随分減らしたと言えど、まだ少なくはない。友弥達を探して駆けずり回っているようだった。何を話しているのか分からないのがもどかしい。何事か怒鳴りあうように指示を出しながら少数に分かれて見回っているようだった。その動きを観察すればボスの居場所が分かるかもしれないと思ったのだが、見える限りでは判断がつかなかった。とにかく虱潰しに侵入者を炙り出そうとしているように見える。ボスを守るために陣形を組んでいる様子も見られない。
 数人ごとに動いているようであれば、幸介が会敵しても問題はなさそうだ。友弥はそれだけ確認すると、再びダクトを進んでいった。入り組んだダクトを内部構造さえ知らないまま進むのは骨が折れるが、床を走っていたのでは気づかぬものが見つかるかもしれない。
 進むうち、薄暗くなっていく視界に友弥は深部に向かっているのだろうかと期待を高めていた。下を覗いても人の気配はなく、暗がりが続いている。何やら機械音がしており、明らかに重要な場所に感じられた。
 友弥は神経を研ぎ澄ませ、様子を探る。念入りに人間がいないことを確かめると、蓋を蹴り落として下に降りた。それなりの高さがあったが、友弥は音を殺して着地する。
 暗い空間はだだっ広く、あちらこちらで機械が駆動していた。どうやらこの飛行船のエンジンルームだったらしい。重要な場所であることは間違いないが、ボスがいるとは思えない。はずれか、と残念に思いながら戻る道を探して辺りを見回した。ダクトは位置が高く、戻るには難しい。他に出口がないかと見回したところで視界の端に違和感があってそちらを見た。
 何か、光ったような気がする。目を凝らせば微かな光が機械の影に隠れていた。それもひとつではない。まるで息を潜めるようにあちらこちらに点在している。

「なんだ、あれ……」

 友弥はそちらに向かってゆっくりと近づいていく。異物の正体を確かめようと、機械の隙間を注意深く覗き込んだ。
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